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家のづくりの際によく耳にする「長期優良住宅」。税金控除、補助金、住宅ローンの優遇など、なんとなくメリットがあるのかな?というイメージですよね。しかし、実際にはどのようなものか具体的にはわからない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、全シリーズ認定長期優良住宅として提案している岐阜の設計事務所「ヴィンテージハウス」の小牧さんにお話を伺ってきました。
はじめに。「長期優良住宅」とは?!
はじめに、長期優良住宅について少しだけご説明します。
長期優良住宅とは「つくっては壊す住宅」から「いいものをつくって、きちんと手入れして、長く大切に使う住宅」への転換を目指し、国が定めた制度です。
長期優良住宅に認定された家は耐久性・耐震性・メンテナンス性・省エネルギー性能等において一定の基準を満たした住宅をいいます。この認定を受けた住宅で、定期補修が計画通りに行われている場合、築25年時点での認定長期優良住宅の転売価格は定期補修が計画通りに行われている場合、新築時の35%程度で評価されます。
住宅の耐用年数は、標準的な住宅で25年~30年。長期優良住宅は75年~100年と、標準的な住宅の3倍は長持ちします。
<長期優良住宅の9つの認定基準>
①劣化対策
通常考えられる維持管理下で、建物を使い続ける期間が100年以上になるような処置がされることが必要。マンションなどの鉄筋コンクリート造や一戸建てなどの木造などの場合ごとに決められています。②耐震性
大規模地震などが起きた場合でも、建物の変形の度合いを一定以下にする措置をとることが必要。③維持管理・更新の容易性
建物本体に影響を与えることなく、配管などの維持管理がしやすいこと。給排水管などの点検・補修・更新がしやすい。④可変性
居住者のライフスタイルの変化等に応じて間取りの変更が可能な措置を取ることが必要。⑤バリアフリー性
将来のバリアフリー改修に対応できるよう共用廊下等に必要なスペースが確保されていること。⑥省エネルギー性
必要な断熱性能等の省エネルギー性能が確保されていること⑦居住環境
例えば地域の地区計画に配慮した景観を損なわないようなデザインになっている必要があります。⑧住戸面積
おおむね一戸建て住宅では75㎡以上、マンションなどの共同住宅においては55㎡の床面積があること、維持保全計画としては定期的な点検を実施する計画があるなどが必要。⑨維持保全計画
建築時から将来を見据えて、定期的な点検・補修等に関する計画が策定されていること。
日本で長期優良住宅が生まれた背景
ヴィンテージハウス代表取締役の小牧新平さん
そもそも、なぜ「長期優良住宅」が日本ではじまったのでしょうか。
小牧さん:「戦後は住宅が不足していたので、質よりも量を重視していました。つくっては壊しを繰り返し、日本の経済も上向きになりました。ですが、現在は「家余り」と言われるほど、住宅の数は充足しています。さらに、これまでの日本の住宅は築25年で価値がほとんどなくなる、使い捨ての価値基準で住宅を建てていたのです。イギリスでは、家の寿命は平均で75年。いいものをつくってきちんと手入れして長く大切に使うという考え方が、世界では常識です。
そこで、従来の「つくっては壊す」スクラップ&ビルド型の社会から、「良いものをきちんと手入れして長く大切に使う」ストック活用型の社会への転換を目的として、2006年(平成18年)に「住生活基本法」という国の法律が変わりました。さらに、3年後の2009年(平成21年)には、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が施工されました。「長期優良住宅」は、国全体として住宅を長く大切に使っていこうという取り組みなんです。」
家の資産価値が高い=いつでもお金に変えられる
長期優良住宅のメリットは、税金控除・補助金・住宅ローンの優遇などだけではないのだといいます。
小牧さん:「税金の控除やローンの優遇を受けるだけが、長期優良住宅のメリットではありません。先ほどお話したように、本来の目的は「良いものをきちんと手入れして長く大切に使う」です。資産価値が高く、子ども、孫の世代まで受け継いでいける住まいだということがポイントです。資産価値が高いということは、いつでも売ったり、貸し出して、住宅をお金に変えることができるということです。
これまでは家の価値を守るための明確な決まりがありませんでした。ですが、長期優良住宅によって、家の資産価値が「見える化」されました。国から認められた基準をクリアしている住宅なので、築25年でも、築50年でも、転売・貸借が可能なんです。
今までは、築25〜30年で価値がほぼゼロでした。なので、相続も難しかったですよね。でも、しっかりとお金に換算できるものを持っていて嫌という人はいないと思います。土地と建物だけ残ってボロボロになってしまうといった空き家問題を解決してくれる可能性もあります。」