こちらの記事で「スウェーデンはコロナ対策を何もしていない」と他国から皮肉られるほどに、その対策が緩いとお伝えしたスウェーデンの新型コロナウィルス事情。日本でもニュースでやっていたそうですのでご存知の方も多いと思いますが、スウェーデンは集団免疫獲得を目指しています。
果たして、世界でも異例と言える「集団免疫の獲得」を目指したスウェーデンの対策。ロックダウンも無し。自宅待機も無し。外へ行けば普通にマスク無しで皆オープンテラスのカフェで例年と同じように距離をとる事も無く友人との時間を楽しんでいるここスウェーデンの人達。その後現状はどうなっているでしょうか?前回の記事からのアップデートとともに、リポートしたいと思います。
まず1枚目の写真。こちらは先日郵便受けに入っていた「私達を守って!」という大きな見出しの入った冊子。表紙の彼女、スティーナ・フォーシュベリさんは完全防備で病院でコロナ患者の対応に当たっていますがマスクや防護服が足りないと訴えています。街で自由を謳歌する人々の風景とは対照的に、医療施設では状況が緊迫している事が伝わってきます。
こちらは冊子の中の1ページ。看護するに辺り、どのレベルでどこまで防備するのかという明確なルールが絵付きで書かれているのですが、「コロナ陽性患者と会話」は2m離れていれば何も無しでOKと書いてあります。マスクもです。
そしてバイタルなどをとる時など、患者の身体を触る必要がある場合はシールドにマスク、そして腕無しのエプロンでOKとなっています。陽性患者の方は陰圧室で隔離され、完全防備で対応している国も少なくないでしょうから、この表をみると素人目線ですが「これで大丈夫なのかな?」と心配になります。
ちなみに記者会見では「まだ集中治療室に空きがある」と言われていますが、それはスウェーデンが集中治療室で治療する患者を絞っており、ガイドラインによると、60歳以上でリスクのある疾患が1つある人、70歳以上でリスクのある疾患が2つ以上ある人、そして80歳以上はたとえ重篤であっても、集中治療室での治療はしない、となっています。
スウェーデンで新型コロナウィルスにより死亡した人数には、多くのお年寄りが含まれており、こちらは老人のケアホームで広がったとされ問題になっています。ケアワーカーがマスクなど無しで介護にあたっているからです。また、ケアワーカー目線からすると、コロナに感染する、またお年寄りにうつしてしまう可能性があるというのに、上から必要な防備用品が支給されないと問題になっています。目下、これ以上お年寄りの間で感染を広めないようにすることが課題になっています。
しかし、70歳以上は出来るだけ外部と接触をしないようにという「お願い」は国から出されていますが、外を見るとたくさんのお年寄りが散歩をしたり、近所の友人と話をしているところを目にするのが現状です。
他にも、シリヤやソマリアなどからの移民も多いと聞いています。言葉等の問題で情報があまり伝わっていないからと言われています。
こちらは先日レストランのテラスで食事を楽しむ人々。マスクは誰もしていません。
まず、スウェーデンがこの「集団免疫を獲得する」対策を取った最大の理由が「経済を滞らせない」という事ではないでしょうか。経済を滞らせては、国にとっても国民にとっても大ダメージです。レストランやお店は引き続き通常通り営業し、初夏の陽気になってきたここ1週間ではかなり多くの人が、いつも通りの近い距離で、マスク無しで、まるでコロナなど無かったかのように食事かコーヒーを楽しんでいます。
ただ、デリバリーを利用している人もかなり増えている印象です。
こちらは公園で遊ぶ多くの子ども達。
日本で言う保育園、そして小中学生達は普通に授業がありますから、学校の皆で揃ってこうやって公園へ遊びにきています。多くの子ども達が触れ合っています。そして他国では感染を防ぐために「遊具の使用禁止」とされているところも多いと思いますが、どこでも、誰でもこのように使用出来るようになっています。
高校生以上はリモート教育となっているので、ランチを学校で提供する必要がありません。スウェーデンでは、通常学校がランチを生徒に提供する事になっているので、「ではその分フードチケットとして生徒にくばり、街のレストランで使用できるようにしよう」としている街もあります。個人でやっているレストランなど、街の生徒達が利用してくれれば助かりますよね。皆で経済を回していこうとう工夫です。
こちらは保育園。外で皆で輪になって歌を歌っているところ。自主的に休みにしている家庭も多いと聞きますが、パッと見た所では多くの園児が登園してきているようです。
そして驚くべきことは、スウェーデンのガイドラインでは「家族に新型コロナウィルス患者がいる場合、症状が無ければ残りの家族は自由に外出してOK」というものがある事です。
参照 Folkhälsomyndigheten(スウェーデンパブリックヘルスエージェンシー)
https://www.folkhalsomyndigheten.se/smittskydd-beredskap/utbrott/aktuella-utbrott/covid-19/
これはいくらなんでも……と、他国のニュースをよくチェックしている日本人の私は思うのですが、これがスウェーデンの方針なのでしょう。
そしてこちらの写真。私は講師の仕事をしているのですが、レッスンを行う校舎の入り口にはこちらのアルコール消毒ジェルが置いてあります。ご自由に使って下さい、という事ですね。
そしてレッスンは「ディスタンス(遠隔)で行う事を推奨」とされているのですが、普通に教室へ来て皆で授業をするクラスももちろんあります。私の受け持つクラスもその中の1つ。生徒達に意見を募ったら、普通に対面でレッスンしたいという事でした。
他のクラスが授業をしているのを外から覗いてみると、普通の距離で締めきってマスク無しで授業をしています。こちらも、ちょっと驚いてしまったのですが、他にも驚いたエピソードがあったのでご紹介したいと思います。
こちらグループで授業をするのに使用する部屋。生徒達が来る前に、窓を全部開けておきました。せめて密室にならぬよう、換気を常に行うためです。授業前に教室から出てもどってくると、全部の窓が生徒により閉められていました。寒かったのでしょう。
新型コロナウィルスが猛威を振るう中、誰1人マスクをしておらず、換気の為にあけておいた窓も全部閉められてしまうなんて、と、「スウェーデンにだけ新型コロナウィルスは存在していないのか?皆、コロナを知らない世界に生きているのか??」と思ってしまうほど、スウェーデン人のこの世界の現状に対する意識に大変驚いた出来事でした。
また、マンツーマンで行う授業もやっているのですが、普通に出席してきた生徒が実は病院の新型コロナウィルス陽性患者のいる病棟で、実際に患者さんの看護に当たっているという事がわかり、こちらも大変驚きました。
他国では、ホテルなどに寝泊りして家族との接触も念のためにしないような方も多い中、こちらも意識の持ち方が全然違うんだな……と思い、もちろんその生徒が感染しているとは限りませんが、感染リスクの高い中に身を置いている状況にある人ですので、大変ヒヤリとした出来事でした。
こちらは天気がよく、カフェのオープンテラスでコーヒーと太陽の日差しを楽しむ人々。何度も書きますが、マスクをする人は0です。お客さん同士の距離も、勿論普段通り。
さて、最後に今のスウェーデンの状況を見てみたいと思います。この記事を執筆している4/30現在で……
参照:https://experience.arcgis.com/experience/09f821667ce64bf7be6f9f87457ed9aa
陽性患者数 21,092人(女性11,765人 男性9,327人)
重篤患者数 1,476人 (女性373人 男性1,103人)
死亡者数 2,586人 (女性1,120人 男性1,466人)
右側マップの色の濃い所ほど多くの陽性患者がいるエリア。一番左のグラフは地域別の患者数。一番上のストックホルムがずば抜けて多いのがわかります。恐らく検査している数も一番多いからでしょう。
中央上は陽性患者数の1日当たりの数。その下は年齢別のグラフです。
陽性患者数もですが、死亡者数が他の北欧諸国に比べてずば抜けた多さです。
デンマーク 452人
ノルウェー 207人
フィンランド 206人
スウェーデン 2,586人
(4/30現在)
人口がそれぞれの国に比べてスウェーデンの方が倍あるとしても、多すぎますね。人々が普段通り生活をしていますから、当然とも言えます。ちなみにこちらはスウェーデンとしては「想定通り」とのこと。ちなみにスウェーデンでの致死率は日本と比べて70倍以上。患者数が多く、集中治療室へ行けない患者も多いのですから、仕方のない事なのでしょう。
先週の時点で、「スウェーデンは5月中にも集団免疫を獲得するだろう」と発表がありましたが、現時点でまだまだピークは越していません。しかし、このまま本当に集団免疫獲得し、感染が少なくなっていくのであれば経済を動かし続けているスウェーデンにとってはこの対策は成功だったと言えるでしょう。ちなみに現在「不要不急の国内移動は控えて」と言われているのですが、スマホのデータから解析した結果、先週は国内を移動する人々が10%増だったそう。
この先どうなってしまうのでしょうか?以上、スウェーデンの新型コロナウィルスの現状アップデートでした。