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イギリスのヴィンテージ家具を扱う愛知県一宮市にある「ブリティッシュビンテージ+」。同店では、ミッドセンチュリー期(1950~80年代)のイギリスヴィンテージ家具をオーナー自らが1点ずつ現地で買い付けて販売しています。
販売はオンライン限定で、国内在庫は常時200点以上。北は北海道、南は沖縄と、全国から多くの方に支持されています。
今回は、イギリス人&日本人のご夫婦ポールさんとみさきさんに、お店をはじめたきっかけやヴィンテージ家具の魅力などたっぷりとお話を伺ってきました。
イギリスヴィンテージ家具とは?
まずはじめに、イギリスのヴィンテージ家具についてご説明します!
1945年に終戦した第2次世界大戦後、デンマークを中心とした北欧家具の黄金期には、デザイン史に名を残す数多くの名作が生み出されました。北欧家具ブームはイギリスにも広がり、それまでトラディショナルなスタイルが特徴だったイギリスでも、1950年代〜70年代にかけてデンマークから影響を受けた家具がつくられるようになります。
そのため、イギリスのヴィンテージ家具は北欧家具と近しい雰囲気を持つ、スタイリッシュでモダンな家具と多く出会うことができます。
イギリスでの暮らしの中で
オーナーのポールさんとみさきさんご夫婦。
2012年のオープン以来、多くの方に支持されている「ブリティッシュビンテージ+」。なぜイギリスのヴィンテージ家具専門店をはじめたのでしょうか。お二人の出会いから、お店の誕生秘話をお聞きしまいた。
みさきさん:「私がポールに出会ったのは20歳のときです。当時私は大学を休学し、ワーキングホリデーでオーストラリアへ行っていました。ポールも同じようにイギリスから来ていたんです。
オーストラリアを離れてからは、遠距離恋愛を経て26歳のときに結婚しました。結婚を機にイギリスへ渡り、6年ほど生活をしていました。そのときに、いろいろな人たちのライフスタイルを見たんです。若い人でもマイホーム持ち、家に情熱を注いで、かわいく、すてきに暮らしているんですよね。こだわりを持ってる姿をみるうちに、マイホームへの憧れを抱きました。
もちろん日本と同じようにマイホームは高いので、すぐに持てるわけではありません。そこで、私たちはボートに住むことにしたんです。」
実際にお二人が住んでいたボートハウス
− ボ、ボートですか?
みさきさん:「日本では見かけませんが、イギリスのオルタナティブな人や若い人たちは、ボートハウスで暮らしている人たちも多くいるんです。運河ポートに停泊して、電気は近くの電線から引っ張ります。郵便物もちゃんと届くんですよ。
私たちはボートハウスの外側だけつくってもらって、その他は自分たちですべてをDIYしました。キッチンをつくったり、内装のデザインをしたり、とても楽しかったですね。」
キッチンの様子。
リビングには暖炉まで設置されています。
みさきさん:「ボートハウスに住むようになって、インテリアがますます好きになったんです。イギリスでは、カーブーツセール(車のトランクに不用品を並べて売るフリーマーケット)が毎週あるので、休みのたびに訪れては1点ものとの出会いを楽しんでいました。」
ポールさん:「僕自身は若い頃から古いものに惹かれていました。ボートハウスに住むまでは、いつも見るだけでしたが、家を持ったことでより一層、好きになっていきましたね。」
旅を経て、日本へ
ボートハウス時代のお二人、
みさきさん:「3年くらいボートハウスに住んだあとに、もっと広い世界をみたくて旅にでることにしたんです。お互いの仕事を一度リセットして、ボートを売ったお金で旅をしました。4カ月ほどかけて、インドやネパールなどアジアを周っていたんですが、20代の頃のような、ワクワクが感じられなかったんです……。
30代ってもっと根をはって、暮らし方整えることや、家族をつくることが喜びじゃないかな?と気づいたんですね。そこで、旅の途中で日本に戻って来ました。
それからは、お互いに日本で就職をして働いていました。生活は落ち着いてきましたが、ポールは言葉や日本の働き方に戸惑いもあり大変そうでした。そんなときに子どもを授かったことが分かったんです。」
好きを仕事に。毎日をワクワク自由に生きていくために選んだこと。
日本の職場で家具を収納している様子
買い付けた商品をコンテナに詰め込む様子
ポールさん:「一度きりの人生、好きなことを仕事にしたい。僕が僕らしくいられるイギリスと、日本を架け橋に何かできることはないかと日々模索していました。そんなときに、今の仕事「ブリティッシュビンテージ+」を考えついたんです。
イギリスには、もともと古いものを大切にする文化があります。好きなことを仕事にしながら、そんなイギリスの文化も日本の皆さんに紹介できたら最高だと思いました。これって、いいんじゃないかな?って。」
みさきさん:「ちょうど、知り合いに名古屋で日本の骨董品をアメリカに輸出する仕事をしている人がいたんです。その人の手伝いをする中で、仕事のノウハウを得ることができ、自分たちにもできるんじゃないかって自信がつきました。さまざまなタイミングが重なって、2012年に「ブリティッシュビンテージ+」をスタートさせました。」
世界で一つだけ、一点物との出会い
現地での買い付け
年に2、3回、イギリスへ行って買い付けをされているのだそう。買い付けのポイントをお聞きしました。
みさきさん:「買い付けをする際は蚤の市をいくつか回っています。欲しい商品が見つからない可能性もあるので、倉庫を直接見させてもらったりして、商品の確保をしています。
商品の買い付けやメンテナンス、向こうの人とのやりとりはポールが動いてくれています。現地の人は、人との繋がりを大切にするので、電話でやりとりをしながら、うまく商品確保をしてくれているんですが、これはイギリス人である彼だからこそ、できることですね。」
買い付けた商品はポールさんが一つずつメンテナンスをして販売しています。
ポールさん:「人気の高いアイテム、日本の住空間に調和するデザイン、使いやすいサイズを意識しています。そのなかで、コンディション・価格に見合うものを見極めて選んでいます。
買付けた家具はコンテナ船で約2カ月の船旅を経て日本へ到着します。その後、入念なメンテナンスを終えてから、順次オンラインショップに掲載しています。店舗がないからこそ、ホームページの写真や文章で家具の魅力をしっかり伝えるようにしています。
本当に納得でき、メンテナスしっかりできるものでなければ買い付けはしません。僕にできること、みさきにできること。お互い足りないものを補いながら仕事をしています。」
みさきさん:「ヴィンテージ家具は基本的にすべて一点物。仕入れ時も、タイミングと縁がすべてで思うようにいかないこともあるけれど、物が溢れている現代において、いつでも、どこでも、誰でも買えるものではないというのは、逆に探す楽しみがありワクワクしますし、やりがいを感じます。」