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夏はもちろん、一年中いつでも食べたくなるカレーライス。スパイスがたっぷり効いたカレーは、食欲を刺激し元気をチャージしてくれる気がします。
そんなスパイスカレーがいただけるカフェ「chikaku(チカク)」は、ビルの3階にある隠れ家のような場所ですが、リピーターが増え続けている人気店です。
あおなみ線「小本」駅から徒歩1分。市営地下鉄・近鉄・JR「八田」駅から徒歩10分ほどの場所です。
pennビルの3階。スパイスのいい香りが漂います。
カウンター席もあり、1人でも気軽に楽しめる雰囲気。
陽光が差し込む心地よい店内。カフェタイムも営業しているので、ゆっくり過ごすのもおすすめです。
きっかけは保育士時代の経験
カウンターの向こうから明るい笑顔で迎えてくれたのは、店主の原田一眞さん。お店が誕生するまでのストーリーから現在の思いまでたっぷりお話を伺いました。
もともとは保育士だったという原田さん。最初に原田さんの経歴からお伺いしました。
原田さん:「子どもの頃から、ピアノを弾いたり、年下の子どもたちと遊ぶのが好きだったんです。そういう仕事ができたら楽しそうだなと思って、保育士を目指すため、教育学部のある大学に進みました。
大学卒業後は、保育士として児童館で働きました。午前中は乳幼児の親子支援、午後からは小中高生の遊びの場、ときどき、高齢者のお宅訪問や地域づくりのイベントに携わることもあり、楽しかったですね。」
楽しさを感じる一方、気持ちに変化があらわれたそうです。
原田さん:「そこでは、0歳児から90歳代までの幅広い世代と関わるんですね。働いているうちに、世代によってこんなに考え方や価値観が違うのだなと思うようになりました。もっと仲良くなればいいのに……。どうしたら人と人が繋がるきっかけを生み出せるか、何か自分でしてみたい気持ちになり、退職を決意しました。それと正直いうと、保育士の将来性に不安があったのと、職場のストレスから逃げ出したい気持ちも大きかったと思います。」
ヒッチハイクに物々交換!?開業までの道のり
24歳で退職し、飲食店のアルバイトをしながら、さまざまな経験を積み重ね、開業につなげたそうです。
原田さん:「カフェかシェアハウスの事業をしたいと、ざっくりと考えていましたが、何をやっていいかわからなかったんですね。それまで、保育士の仕事をしていたから、お金を扱ったことはないし、経営やビジネスのこともわからなくて……。
そこで、さまざまな働き方、生き方、楽しく生きてる大人に出会ってみようと思い立ってヒッチハイクをしていました。
ヒッチハイクを約100台位しているなかで、「ありがとう」と言われる経験が何度もあったんですね。乗せてくれて、おいしい食事をご馳走してもらって、僕のほうが「ありがとうございます」なのに、何かを渡して受け取ることで感謝されるんだな、すごい感情の交換だと思いました。そのときの経験が大きな学びになって、僕は本当にその一年で受け取り上手になりました(笑)。」
同時に、自分でバナナジュースを作り、売り歩いたこと。ボードゲームのイベントをひらいたこと。思考錯誤を繰り返し、たくさんのことを学んでいきました。
ヒッチハイクで最長の旅は屋久島
開業前、テーブルをDIY
原田さん:「とはいえ、開業資金がないので、どうやって事業につなげればいいのかわからなくて、物々交換をしようと思いついたんです。なんか面白そうだなと思って。
最初は紙切れ1枚からはじめて、パンをもらった瞬間、「天啓が降りた!」って(笑)。これ3年続けたら物件になるなと思ったんです。童話のわらしべ長者みたいですけど。
ヒッチハイクを何度もやっているから、受け答えしてくれるかなって、なんとなく顔を見てわかるんですね。このまま路上で物々交換しても物件にはならないと思ったので、「今後カフェかシェアハウスをやりたくて、物件にしたいので、何かと交換してくれませんか?」って言うと、物の価値が上がって……。3ヵ月後には物件と交換してくださるという、ここのビルのオーナーさんと出会いました。」
chikaku誕生
こうして、2018年3月にカフェとしてオープンしました。
原田さん:「本当にご縁と運ですね。改装費用がなかったので、壁や床はそのとき出会った人達がDIYを手伝ってくれました。2021年4月、知り合いのSTORE IN FACTORYさんに改装を頼みました。前の雰囲気も残しながら、白だった壁を安心感あるグリーンに。お客さんにゆっくり過ごしてほしくて、遊び心・基地感をテーマにデザインにお願いしました。」
友人のデザイナーが作ってくれたロゴやキャラクター。お客様同士を繋ぐという意味を込めているそうです。
– 店名の由来やコンセプトを教えてください。
原田さん:「大切な人との距離感や縁が深く、近くなっていくようなきっかけづくりができたらいいなと考え「チカク」にしました。「おいしいたのしいを共にする」をコンセプトにしています。」
– 当初はカフェからはじまり、2020年「スパイスカレー」と「カフェ」としてリニューアルされたそうですね。なぜメニューをスパイスカレーに絞ったのでしょうか?
原田さん:「もともと、サンドイッチやホットドックなどを提供していたメニューの中にカレーもあったんです。一番求められてたというのもありますし、多くの人が家族で食べたことがあり、記憶に残る食べ物だからです。新しいつながりだったり、縁が少しでも深くなるきっかけづくり、思い出づくりになるツールになればうれしいです。」
原田さんと大学時代の同級生、通称ばんびさん。当初からお店に携わり、原田さんを支えています。最初は売上が少なく、初給料が〇〇円だったことも明かしてくれました。
chikakuのカレー
カレーメニューは3種類。チキンカレーと和キーマカレーの定番メニューと、月替わりのカレーを提供しています。
原田さん:「子どもも大人も一緒に食べて「おいしいね」と言い合えるカレーがテーマになっていますので、スパイスを全面に出しているわけではなく、基本的には辛さの少ないカレーです。辛さの調整はできますよ。
現在、チキンカレーは9種類のスパイスを使っていますが、レシピはこの一年で変わりましたね。より良いものに変化していくことを大事にしているから、常に変わり続けています。これはチカクのスタッフみんなの共通意識として掲げています。」
2種あいがけカレー 1,300円(+温泉たまご 100円)
定番のカレー2種あいがけを温泉たまごトッピングでいただきました。見た目もおいしそうで、気分が上がります。
チキンカレーは、スパイシーだけど、まろやかでコクのある味わい。柔らかくほろほろに煮込まれたチキンも◎
スパイスと味噌をブレンドした和キーマは、ピリリとした辛さの中に挽肉と野菜の旨味も感じます。
角切りピクルスと古代米のぷちぷちした食感も楽しく、スパイスカレー初心者の筆者ですが、どんどん食べ進めてしまうおいしさでした。
月替わりカレー 1,100円(税込)
取材で訪れた8月の月替わりカレーは、「マンゴーポークカレー」。マンゴーと豚バラ肉の甘味がぎゅっと詰まったフルーティーなカレーです。
原田さん:「月替わりのカレーは、お客様にどのような気分になってもらいたいか、イメージを膨らませて考案しています。今月のマンゴーポークカレーは、アチャールで食感に楽しさをプラスしました。パッションを呼び覚ますきっかけとなりますように!」
9月は「ナスと豚肉の台湾風カレー」を提供予定。詳細はお店で確認してくださいね。
カレーのテイクアウトも好評!事前に予約をするとスムーズですよ。
カフェメニューも充実!
チャイラテ 500円(税込)
カレーの後はもちろん、カフェタイムに楽しめるメニューも充実しています。
ドリンクのおすすめは、カルダモンをはじめ数種類のスパイスと紅茶の茶葉でつくる本格的なチャイラテ。きび砂糖のやさしい甘さも感じます。
ほかにも、注文を受けてから丁寧に淹れてくれるコーヒー、自家製バナナジュースも人気です。
チャイアイスクリーム 400円(税込)
こちらは、アイスクリームにティソースをかけたアフォガード風のチャイアイスクリーム。(期間限定)
カレーとの相性を考えられたスイーツは、不定期に登場するメニューもあるそう。お店のInstagramをチェックしてみてくださいね。
カレーと共に楽しい場所を
オープン当初は奥さまと二人で営まれていましたが、その後、同級生のばんびさんがジョイン。現在は、数名のスタッフさんがお店を盛り上げています。
原田さんとスタッフさんたち
最後に今後について伺いました。
原田さん:「スタッフが自分を活かして楽しく働いていけるような環境づくりを考えています。チカクという媒体を使って、外での出店やイベントなど、スタッフがやりたいことの後押しをしたいですね。」
スタッフさんのほか、毎月料理を撮影してくれたり、BGMを選定してくれたりと、色々な方がお店を支えているそうです。常連さん含め、出会った人たちに大事にされているのは全力で仕事と人生を楽しむ原田さんの人柄があってこそ。
原田さん:「僕自身はカレー専門店をやっているつもりはなくて、カフェでも、カレーでも何でもよくて。同じ志、ビジョンの方に出会いながら、自分たちが面白いことをする、そんな楽しい場所づくりをしていきたいです。」
気取らず自然体で話してくださった原田さん。その雰囲気がスタッフさんやお店にも反映され、アットホームな空間でした。