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京都で国際的な写真展「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2021」が開催されました。
コロナによるパンデミックで世界中で人々の生活が一変して2年目になる今年は、東日本大震災から10年目の節目にあたります。
人間、自然、災害などあらゆるものが過去から未来へと響き合う「ECHO」というテーマを掲げて約1ヶ月開催された「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2021」。
閉会前に訪れる機会を得たのでレポートしていきたいと思います。
まずはじめに「KYOTOGRAPHIE」のおすすめポイントとして挙がるのが、地図を片手に京都の街を散策しながら、さまざまなアーティストの作品を見て回れること。
京都市内数ヶ所に展示場所があり、わたしもまず地図を手にとってどうやって回ればより多くの作品を見て回れるか考えました。
「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2021」
現地レポート
1. アーウィン・ オラフ / 京都文化博物館 別館
国の重要文化財にも指定されている京都文化博物館 別館。ここでは「アーウィン・ オラフ -驚異の年-」を展示。世界的なファッションフォトグラファーであるアーウィン・ オラフさんの日本初発表となる作品が展示されていました。
会場は、「April fool」と「In Wald」で区切られて展示されていました。
「April fool」は、コロナウイルス感染が拡大しはじめた頃の自らの隔離生活を嘲笑的に描いている作品で、作家自身が白い三角帽をかぶって人気のない街をさまよっている様子などを写しています。
二階へ上がると映像作品が流れており、写真の見せ方と動画が上手く合わさっていて個人的にとても勉強になりました。
オラフさんが19世紀頃の絵画を参考に撮影した作品もあり、どの作品がそうなのか考えながらもう1度見て回りたくなる展示でした。
2. MEP Studioによる5人の女性アーティスト展――フランスにおける写真と映像の新たな見地 / HOSOO GALLERY
ヨーロッパ写真美術館(MEP)のキュレーションによる4組5名の女性若手写真家・アーティストによるグループ展。タイトルにもあるように、写真と映像を分けて考えるのではなく、自分たちが表現としてどう展示するかを考えられた会場でした。
暗い会場で一際目をひくマルグリット・ボーンハウザーさんの作品は、鮮やかでとても印象的。暗闇で見る色の強さを感じました。
3. MIROIRS – Manga meets CHANEL / Collaboration with 白井カイウ&出水ぽすか / 誉田屋源兵衛 竹院の間、黒蔵
「シャネル」と人気マンガ「約束のネバーランド」の原作者、白井カイウと作画家の出水ぽすかとコラボした展覧会。
ガブリエル・シャネルの人生やクリエイティビティに感銘を受け描きおろされたコミック『miroirs』をもとに、築100年を超える町家で京都らしい見せ方の工夫がある展示でした。
会場には、ガブリエル・シャネルの生き方と、その魅力に触れた先生たちのコメントがちりばめられ、それに共感したり、考えさせられたり、焦がれたり……言葉と絵でわかりやすく、ガブリエル・シャネルを身近に感じられる展示でした。
4. ECHO of 2011─2011年から今へエコーする5つの展示 / 二条城
歴史ある二条城で開催された展示は、2011年3月に起きた東日本大震災で大きな被害を出した沿岸地域や、津波によっておきた原子力事故をどのように受け止め、今まで進んできたのか、ジャンルの異なる5組のアーティストの作品が集められ展示されていました。その中から3名の作品を紹介します。
リシャール・コラス / 二条城 東南隅櫓
東日本大震災の1か月後に現地を訪れ、写真を撮り、証言を集め、小説『波』を刊行したリシャール・コラスさんの文章と写真が光を遮断した空間に展示されていました。
入場前に懐中電灯を渡され、各自で照らしながら、暗闇で転んだりぶつかったりしないよう注意しながら見る展示は、震災後の風景を視覚以外で感じれるような空間でした。
片桐功敦 / 二条城 二の丸御殿 台所
大阪の生花流派である「花道みささぎ流」の家元である片桐さんは、福島県に一年間滞在して津波の被害に衝撃を受けました。それと同時に自然の生命力の強さに心打たれ、生けていった花たちを写真に収めた作品が展示されていました。
小原一真 / 二条城 二の丸御殿 台所・御清所
写真家でジャーナリストの小原さんは、東日本大震災が起きてすぐ会社を辞めて福島第一原子力発電所の廃炉作業員を撮影しに向かいました。10年間撮影し続けた作品と、コロナウイルスと闘う医療・介護従事者を撮影した二つの作品を展示していました。
放射線とウイルスという目に見えなものと闘う人々を撮影した作品からなかなか目を話すことはできませんでした。
5. 榮榮&映里 / 琵琶湖疎水記念館
少し足をのばして琵琶湖疏水記念館へ。
琵琶湖から京都へ水を運び、京都市民の暮らしを支え続けている人工の運河、琵琶湖疏水。その琵琶湖疏水記念館を会場にしたのは、展示されていた作品にも関係されていました。
屋外展示では、ほとんどが印象的な水や、水によって生まれた光の影や動きのある写真です。
屋内展示では、外で見た写真が光に照らされ違った形で展示してありました。
写真を紙に印刷して見るだけではなく、印刷の仕方や展示の仕方で表現の幅がうんと広がるんだということを感じで、自分が見せたい印象に持っていくにはどの方法がいいのか考えて展示するという難しさと面白さを知りました。
6. KG+SELECT / 三条 両替町ビル
KYOTOGRAPHIEと同時開催される公募型アートフェスティバルKG+。
KYOTOGRAPHIEのインフォメーションがある三条両替町ビルの建物内でも開催していたので、今回一番初めに見た展示です。
その中でも、わたしが心奪われたのは山本郁さんの作品です。
亡くなるまでの2年間をかけて祖母を撮影した作品「DO NOT GO GENTLE INTO THAT GOOD NIGHT」は、単に祖母の日常を撮るのではなく、山本郁さんの友人である山懸良和氏が手掛けるブランド「writtenafterwards」の着せて撮る、というプロジェクトでした。
赤やピンクや白の斬新な素材で作られた不思議な造形の服たちに祖母は興味津々で、撮影になると自らおしろいと紅を塗って髪をなおし、カメラの前で照れ臭そうにポーズをとった。
と作品紹介の文に書いてある通り、写真に映る山本さんのお祖母さんはどれも紅を塗りポーズを決め写っています。そんな中ポートレートに混ざって、寝たままになってしまったベッドや手元のみの写真もあり、それがやけに生々しくも感じました。
ただ、どれを見ても私自身ができなかった祖母を写真で残す、ということを亡くなるまで続けてきた山本さんに尊敬の念を示します。
1日かけて見て回った『京都国際写真祭』
コロナ禍での開催は、目に見えない努力や苦労があってこそなのだろうと思います。
それでも開催してくれることに感謝の気持ちでいっぱいです。
普段から写真を撮ることをしている私ですが、テーマを決めて作品を作ることはまだしたことがありません。何を訴えて、それをどう表現するのか、たくさんの作品を見ることで本当に色々と勉強になりました。
KYOTOGRAPHIEで感じた感動を忘れることなく、いつか自分の残したいものを写真や映像を使って表現できるようにまた頑張ろう。と思います。