1939年(昭和39年)の開業以来、地域の人々に愛され続けている「比良温泉」。創業当時から薪焚きにこだわっており、3代目の神谷和之さんもその伝統を受け継いでいます。
さらに、湯水はラジウム鉱石を通水したミネラル温泉(ラドン温泉)となっていて、「湯冷めしにくい」と評判。銭湯好きなら絶対に素通りできません!
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肌触りが一味違うミネラル温泉
名古屋の最北部、西区・比良地区にある「比良温泉」。煙突がそびえる、昔ながらの佇まいが印象的です。
気泡湯や寝風呂など6種類の浴槽と遠赤外線サウナがあり、湯は創業当時から薪で焚いています。
さらに、使用するすべての湯水はラジウム鉱石を通水したミネラル温泉(ラドン温泉)となっており、「湯冷めしにくい」と評判。
もうひとつ気になるサウナは、2022年にリニューアル完了!総檜というなんとも贅沢な造りです。
のちのちにお話をうかがうと、元宮大工さんが手掛けたとのこと。全国にサウナは数多あれど、宮大工さんが手掛けた総檜造りのサウナはそう多くないでしょう。
サウナ室の温度は利用者数によって多少の変動があるようですが、108度に設定。ストロング系のドライサウナながら、檜による自然の調湿効果のためか乾燥による不快感とはまったくの無縁。グッドジョブ、檜。
水風呂は15度前後の設定。もちろん、ラジウム鉱石を通水しており、肌触りのよさを感じます。筆者にとっては冷たすぎず、温すぎずのちょうどいい水温で、かなり長く入ってしまいました。
石鹸、リンスインシャンプー、貸タオル2枚が付いた「手ぶらセット」が+100円で借りられるのもポイント!思い立ったらふらっと立ち寄ることができ、銭湯を訪れる機会が増えそう。
さらに、サウナ利用者には大判のバスタオルとサウナマットが貸し出されます。個々にサウナマットを貸してくれるのは、珍しいサービスかも。
女性ならではの特権も!女性の脱衣場にはイオンスチーマーが設置されており、自由に使えます。さらに、女性のサウナ利用者にはパールエッセンシャルマスク(通常100円)が付いてくる!女性サウナーは、サービス満点の比良温泉へ直行するしかない!!
薪焚きに対する3代目のこだわり
湯上り後、3代目の神谷和之さんにお話を聞くことができました。湯の肌触りがよく、気持ちよさが群を抜いていたことを伝えると……。
神谷さん:「やっぱり、薪で焚いているのが湯のまろやかさの秘訣ですね。いろんな銭湯へ行かれてるお客さんは、『薪で沸かした風呂』っていうのがすぐ分かるみたいですよ。『湯冷めしにくい』というのも特長で、冬場はとくに実感してもらえるんじゃないかなと思います」
この銭湯を受け継ぐまでは、ボイラー整備士としてメンテナンス会社で働いていたという神谷さん。ボイラーで沸かすのと比べ、薪で沸かすのは大変そう。
それでも、「経営者の高齢化で、薪を焚ける銭湯が減ってきているんです。僕は体力的にもまだまだできるので、できる限りは続けていこうかと」と語ります。
これぞ銭湯のあるべき姿!
実の意味でのコミュニティスペース
ジュースやビールがたくさん販売されており、湯上り後、リラックスして過ごせるのも比良温泉の素敵なところ。とくに九州出身者(実は愛知県に多い)にはおなじみの「ヨーグルッペ」や、レトロな瓶ジュースからはノスタルジーを感じます。
くじ引きや菓子のサービスがあり、子どもたちにとっても楽しい場所である比良温泉。
「お子さんの数は多いです。ジュースを飲んだりアイスを食べたり、子ども同士のコミュニティの場にもなっていますね。親御さんたちも『比良温泉なら安心して遊ばせられる』と思ってくれているよう。なにより、現代の子どもたちって親以外の大人と接する機会が少ないじゃないですか?銭湯は子どもたちにとって、社交を学ぶ場にもなっているんじゃないかなと思います」と神谷さん。
「最近はサウナブームがきっかけで、若い世代にも“お風呂屋さん”の魅力が伝わってきたように思います」 と続ける神谷さん。古くから営み続ける銭湯の3代目として、客層の広がりを肌で感じているようです。
「銭湯=地域のコミュニティの場」とはよく聞きますが、比良温泉はそんなイメージを体現しているような銭湯。どの世代にとっても、欠かすことができない場所となっています。