本格派サウナと地下水100%の水風呂、外気浴スペースを備えた銭湯として、サウナ好きからも注目を集めている「白山温泉」。
イベントを多数開催するなど地域のコミュニティも大切にし、着々と「銭湯LOVER」を増やし続けています。
目次
店主のサウナ愛を感じられる浴室
名古屋市西区の枇杷島公園のすぐ西にある「白山温泉」。天然地下水100%使用した水風呂と風呂が評判で、近年サウナ好きからも熱視線を浴びている銭湯です。
1911年(明治44年)創業の「白山温泉」。その4代目として、老舗銭湯を切り盛りしているのが、飯田宗一郎さんです。愛知県公衆浴場業生活衛生同業組合の理事なども務められるお方。
「曾祖父は染物工場を営んでいたのですが、時代の変化に合わせて銭湯に転換したようです。工場だったときから、地下水をたくさん使っていたのかもしれませんね。そして、曾祖父は石川県の白山温泉が好きだったそうで、当時はそちらから湯の花を持ってきていたと聞いています」と、「白山温泉」の歴史や名前の由来を教えてくれました。
さっそく、浴室を案内していただきます。脱衣場は広々としていて、清潔感も満点。「設備云々よりも、清潔感はもっとも肝心だと考えています」と飯田さんは話します。
大きめのコインロッカーも用意されており、仕事帰りなど荷物が多いときも気軽に立ち寄れそう。
内風呂はシンプルながら、ジェットバス、寝風呂、泡風呂など浴槽の種類が豊富。地下数百メートルから汲み上げた地下水を贅沢に使っており、湯質はまろやかそのものです。さらにその地下水の中にミネラル原鉱石を浸して沸かしているため、ラドン・ラジューム・トリウム・タンタルなど、多種類な成分が含まれる湯となっているそう。
忘れてはいけない名物が、「名古屋最凶レベル」とまことしやかに囁かれている電気風呂。筆者も電撃を浴びましたが、心中で静かに悶絶して早々後にしました。
条件によっては100度を超える本格派サウナも、大きな魅力のひとつ。ちなみに、女性用のサウナは92~93度とのことで、ややマイルドです。
厚めの木を使うことで湿度を保ちやすくし、排気を工夫して新鮮な空気を取り入れやすい構造になっているそう。長時間入っても息苦しさを感じにくく、じっくり汗をかくことができます。
「白山温泉」にある、もうひとつサウナ室が「薬草サウナ」。植物中に含まれているさまざまな芳香油の効能により、新陳代謝を高めてくれるのだとか。
一般的にスチームサウナは、「高温サウナと比べて温まりにくい」とサウナ好きに敬遠されがちですがこちらは別格!下から強烈なスチームが噴出し、体感温度を一気に高めてくれます。
「熱い蒸気が上にたまっているので、ビート板やタオルで軽くセルフアウフグース※すると、気持ちいいですよ」と飯田さんは教えてくれました。
※アウフグースとは、熱気を帯びた蒸気をタオルなどを用いて撹拌すること。
サウナのあとは、ウワサの水風呂へ!天然水100%の水風呂は、説明いらずの心地よさ。最近では、この良質な水風呂を求めて全国からサウナーが訪れるのだとか。
「水風呂は12から13度くらいにセッティングしているんですが、出入りが多いとどうしても16から17度くらいの温度になります。冷たい水風呂がお好みでしたら、早い時間にお越しいただいて“一番水風呂”を狙うのがいいかも!?」と飯田さん。
そして、極めつけが半露天状になった「くすり風呂」。公園がすぐそばにあるため鳥が入ってきてしまうとのことで、現状は屋根に覆われていますが開放感や風の心地よさは抜群です。まさか、銭湯でサウナ後の外気浴まで楽しめるとは恐るべし……。
いずれは対策を施した上で、この半露天スペースを拡張することも考えているそう。期待が膨らみます。
理想的なセッティングのサウナ(しかも2種類!)→天然水の水風呂→外気浴と、サウナーにとって都合がよすぎる「白山温泉」。薄々気づいていましたが飯田さん自身もサウナ好きだそうで、2022年5月のリニューアルでよりサウナーに好まれるセッティングにしたのだとか。やっぱり店主の「愛」を感じられる施設が一番!
コミュニティを大切にして銭湯を活性化
さて、すっかりととのったところで、改めて飯田さんにお話をうかがいました。
「最近は若い方が多くなりました。『飲みに行く』ような感覚で、会社帰りの時間帯に2~3人組で来ていただくことが多いです。コロナ禍を経て、『友人と“リアル”に楽しい時間を共有することの大切さ』を、改めて感じているというのもあるかもしれませんね」と飯田さん。
白山温泉に若い人々もたくさん訪れるようになったのは、飯田さんの努力の賜物にほかなりません。さきほど紹介した「くすり風呂」をかけ流しの水風呂にするサウナイベントを行うなど、アイデアはすぐ実行に移しています。
とくに学生たちと一緒に開催する「夏祭り」は恒例になりつつある、大盛況のイベント。模擬店の出店や花火の配布などが行われ、地域の住民を中心に500人以上(!)を集めたのだとか。このように、たくさんのコミュニティを作ることで地道に「銭湯ファン」を増やし続けているのです。
幅広い世代の「ファン」で賑わいを見せている、“元気な銭湯”「白山温泉」。
「いずれは白山と名古屋城のペンキ絵を、絵師さんに描いてもらいたい」と、最後に飯田さんが語ってくれました。銭湯のルーツを感じさせる北陸の白山と、名古屋城が一緒に描かれたペンキ絵は想像しただけでも素敵なものになりそう。
実現したあかつきには真っ先に取材に行きます!