【舞台挨拶レポ】映画『サイド バイ サイド 隣にいる人』。伊藤ちひろ監督×主演 坂口健太郎さんが語る、“あえて言語化しなかった時間”で楽しむ十人十色の面白さ。

掲載日:2023.04.12
【舞台挨拶レポ】映画『サイド バイ サイド 隣にいる人』。伊藤ちひろ監督×主演 坂口健太郎さんが語る、“あえて言語化しなかった時間”で楽しむ十人十色の面白さ。

4月14日公開の映画『サイド バイ サイド 隣にいる人』の舞台挨拶が、『ミッドランドスクエアシネマ』にて開催!会場には、伊藤ちひろ監督・主演 坂口健太郎さんが登壇しました。

『サイド バイ サイド』=隣同士で/一緒に という題名を冠された本作は、リアルとファンタジーが混在する「マジックリアリズム」が息づく物語。坂口さんを「あてがき」して生まれた主人公・未山の魅力から撮影中の裏話まで、たっぷりお届けします!

■あらすじ■
目の前に存在しない“誰かの想い”が見える青年・未山。その不思議な力で身体の不調に悩む人や、トラウマを抱えた人を癒やし、周囲と寄り添いながら、恋人で看護師の詩織とその娘・美々と静かに暮らしていた。 そんな彼はある日、自らの”隣”に謎の男が見え始める。これまで体感してきたものとは異質なその想いをたどり、遠く離れた東京に行きついた未山。ミュージシャンとして活躍していたその男は、未山に対して抱えていた特別な感情を明かし、更には元恋人・莉子との間に起きた”ある事件”の顛末を語る。 未山は彼を介し、その事件以来一度も会うことがなかった莉子と再会。自らが“置き去りにしてきた過去”と向き合うことになる・・・。やがて紐解かれていく、未山の秘密。彼は一体、どこから来た何者なのかー?

伊藤ちひろ監督・坂口健太郎さんが
「ミッドランドスクエアシネマ」に登場!

「名古屋駅に到着した時、すごく天気が良くて。こういう気持ちの良い日に、この映画を観ていただけて嬉しいです」と、観客に挨拶をした坂口さん。新緑など大自然が織り成す美しい風景も印象的な今作。その挨拶に映画を見終えたばかりの観客の皆さんも、思わずうなずいていました。

何度か名古屋を訪れたことのある、伊藤監督と坂口さん。味噌カツなど名古屋グルメもお気に入りで、本日は天むすを食べたそう。そんな“名古屋めし”トークからスタートした、和やかな舞台挨拶の模様をご紹介します!

脚本は最初から主人公・未山に
坂口さんを“あてがき”して製作

物語の構成時から、今作の主人公・未山役を坂口さんに演じてもらいたいと考えていた伊藤監督。題名や役名を構想中だった時期から、伊藤監督と坂口さんの間で未山像について話をする機会があったそう。坂口さんで「あてがき」した脚本が完成した、当時の感想を振り返りました。

坂口:「台本をいただく前から、監督と未山像についてお話する機会があったので、台本が出来上がった時点ですでに未山に親近感がありました。監督が今作に対して、あえて言語化せずに観る人にゆだねる部分をなるべく多くつくろうとしていた気持ちを知っていたので、“目に見えない想いの強さ”をホラーとして受け取ることもなかったです」

監督:「坂口さんには、映画『ナラタージュ』の時に小野役を演じていただいていて、未山役は坂口さんに演じていただきたいと最初から決めていました。未山と坂口さんって、似ている部分がいくつかあって、未山は坂口さんから生まれたようなものです」

坂口:「未山を通して、“監督には僕のことがこういう風に見えているんだ”と色々発見や驚きもありました。現場でロケ場所や共演者さんに囲まれた時、頭の中で想定していたものと少しずつ変わってくることもあったので、劇中の未山は現場で生まれていったという印象もあります。あと、未山が寝ているシーンを撮影する時、監督から“生と死の狭間にいるように寝てください”と、少し難しい指示をいただくこともあって……(笑)演じることが難しいシーンもありました(笑)」

監督:「ありましたね(笑)未山って、半分どこか、生と死の間をゆらゆらしている存在。“もしかしたら、目覚めないかもしれない”という寝顔をしてほしかったんです」

“人の想い”が見えてしまっても、
見えなくても、どちらでも大丈夫。

– 本作では、未山は“目に見えない想いの強さ”を見ることができます。

坂口:「想いが見えることに対して、どこまでリアクションをとるべきか監督に相談したとき、“未山は、見えていても、見えていなくても、どっちでもいい人だと思うんだよね”という答えをいただいた時がありました。僕自身もそういうタイプで、そういう存在が見えてしまっても、どちらでもいい。あ!実際、見えたことはないですよ!(笑)でも、もしそういう存在がいたら、いるならいる、いないならそれでいい、と受け止めるタイプです」

監督:「そうだと思います。坂口さんはその状況を普通に受け止めていそう(笑)」

– 美々ちゃんと未山のシーンもすごく自然で、素敵でした。

伊藤:「美々ちゃん役の磯村アメリちゃんは、共演者・スタッフ全員の子供のような存在でした。あのシーンはすごく可愛く撮れていて、私自身も癒やされました」

坂口:「自然な演技を撮影できるように、あえて当日に台詞を渡したりしていましたよね」

伊藤:「練習熱心な子なので、事前に台詞を渡すとすごく練習しちゃうんです。なので、芝居をしすぎないように見守っていました」

坂口:「静かにカメラを回していましたよね。僕も彼女のテンションを上げる時は坂口健太郎として、カメラが回り始めたなと感じたら未山に切り替えたり。すごく可愛くて、感受性も強い子だったので、のびのびとお芝居ができる雰囲気作りを心がけていました」

– まるで自然の写真集を見ているかのような、美しい景色も印象的でした。

坂口:「空気も澄んでいて、とても気持ちが良かったです。キャラクターのお芝居も見所ですが、ロケーションもひとつの主役になってくれたと思います」

伊藤:「自然の力と共存しているような雰囲気を感じて、すごく神秘的な場所でしたね。ただ、撮影中はすごく寒くて(笑)撮影前日に雨が降って、標高も高くて、スタッフ全員コートを着て撮影していました」

坂口:「すごく寒かったですね。未山の衣装がとても薄くて、もはや素肌のような服だったんですよね(笑)」

伊藤:「坂口さんは寒さで震えることもなく、鳥肌も立っていなくて……」

坂口:「鳥肌は立ってたよ!(笑)寒くない顔を一生懸命していた記憶があります」

詩織は陽、莉子は陰の部分を
物語のなかで請け負っている

– 莉子役の齋藤飛鳥さん、詩織役の市川実日子さんとの撮影はいかがでしたか?

坂口:「今作のなかで、詩織は陽の部分、莉子が陰の部分を請け負ってくれていると思います。未山、詩織、莉子はお互いが居て成立する。未山にはない部分を彼女達が埋めてくれた感覚です。監督から“未山は変化があっていい子だから”とお話をいただいていたこともあって、自分のなかの未山像を一度手放して、現場の空気感を大事にしながら演技することを意識していました。なので、実日子さんと芝居をしている時は詩織といる未山になるし、飛鳥ちゃんとお芝居をしている時は莉子といる未山になる。僕自身、未山の捉え方としては、彼の語られていない人生を、色々なキャラクターと接することで清算していくような感覚がありました。未山は、詩織と莉子に出会ったことで、ひとつの落とし所を見つけたのだと思います」

監督:「未山はすごく周りの雰囲気を感じ取る力があるので、自然と相手に合わせたコミュニケーションをとることができる。でも、詩織からは受け取るものが多い。なので、普段白い服を着ている未山が、家で着ているパーカーの色だけ黄色と薄紫に変化しているのは、詩織の家のカーテンの色に染まっているという意味があったりします」

登場人物達の心境の変化が服で表れるシーンもあるなど、細かい部分にまで監督のこだわりが詰まった今作。

そんな今作の魅力について坂口さんは、「この作品は観る人や観る日によって捉え方が変わります。今回監督が挑戦している、“あえて説明を省いて、観ている人に委ねる”という部分から、皆さんだけの『サイド バイ サイド』に出来たらいいなと思います。そういう楽しみ方ができる映画ってなかなか無いですし、今の映画界の作品づくりにとても大切なことだと感じています。皆さんのなかで観た感覚を大事にしていただいて、今作の奇妙さ、面白さを周りの人に伝えていただけたら嬉しいです」と語りました。

監督が「未山と坂口さんって、似ている部分がいくつかあって、未山は坂口さんから生まれたようなものです」とお話していました。舞台挨拶中も、坂口さんの繊細で朗らかな人柄に、今作の世界観が垣間見えたように感じました。

映画『サイド バイ サイド 隣にいる人』は、4月14日よりミッドランドスクエアシネマほかにて公開!

 

Photography by Haruka Chubachi(※一部を除く)

スポット詳細

『サイド バイ サイド 隣にいる人』
https://happinet-phantom.com/sidebyside/

1989年生まれ。名古屋発女性情報誌の編集長を経て、フリーランスに転向。グルメを中心とした店舗取材をはじめ、沖縄やバリ島、ハワイなど国内外の旅ロケ、アーティスト・俳優のインタビューなど幅広い業務を経験。現在はファッションWEBマガジン・雑誌の編集ディレクターを務めるほか、ライターとしてWEBメディアで取材記事を作成、ライター講師などを担当。猫と旅とビールが好き。

https://www.instagram.com/merrymerry399/

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