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地下鉄東山線「本山」駅から徒歩10分、猫洞通を北へ歩いたところにある「とわでざいん商店」は、「100年着たい服」を創作・デザインする「toi designs(とわでざいん)」の四角衣服を中心に取り扱うショップです。
「toi designs」は2015年に誕生した衣服のブランドで、当時は東山公園の近くにアトリエを設け「旅する服屋」としてクラフトマーケットへの出店が中心でした。
その後、2017年に物件との巡り合わせもあり、ショップ兼アトリエとして猫洞センタービルにオープン。「とわでざいん商店」は、9割が「toi designs」で製作した衣服、その他はオーガニック商品を中心にセレクトした商品が並んでいます。
とわでざいん商店とは?
店内は天井が高い開放的な空間。植物から生まれた衣服と、コンクリートの質感がマッチし、温かみのある居心地のいい空間になっています。
以前は青果市場として使われていたこともある猫洞センタービル。床を見ると、水路を埋めた跡も見られます。
toi designsの衣服
今回はショップオーナーで商品企画や開発をされている加藤友美さんに、「toi designs」の特徴や魅力について伺いました。
– 「toi designs」がつくる四角衣服とはどのようなものですか?
加藤友美さん(以下tomiさん):「布の曲線裁断を少なくして、折り紙のようにつくる衣服のことです。簡単に言うと、和服に近い衣服です。
従来の洋服をイメージすると分かりやすいのですが、首回りや肩をはじめ曲線が多いですよね。曲線が多いということは、使えない部分はゴミとなって捨てられてしまうということです。
四角い洋服を創作することで、余すところなく生地を活用でます。デザインを着想するときは、実際に紙を切り貼りしながら考えます。」
tomiさん:「例えば、人気商品のもじり袖Tシャツを見ると分かりやすいかもしれません。もじり袖とは、着物の袖の種類のひとつで法被や半纏に使も使われています。
洋服のTシャツに比較すると、袖付がたっぷりしています。生地を無駄にしない発想から生まれたTシャツですが、お客様にはデザインのひとつとしても親しんでいただいています。」
– 衣服の製作段階からムダな生地を出さない配慮があるんですね。
tomiさん:「ファッション業界の廃棄について危機感も持っていて。年間100万トン、およそ33億着廃棄されていると言われています。トレンドを追いかけるあまり、使い道のなくなった服が大量に捨てられるルーティンが常習化しています。
元をさかのぼれば、洋服をつくる際に出るムダになった生地もたくさんあるはず。ファッションに対する根本的な考え方を見直す必要があると考えています。
四角衣服は生地をムダにしない効率的な方法の一つとして製作に取り入れています。」
– 四角衣服でムダが出ないというのはすごいですね。
tomiさん:「でも、製作の中で全くムダがでないというわけではないんです。ムダを最小限に抑えても、やむを得なず出てしまった端切れは、別の形で活用しています。
切れ端を縫いつなぎ合わせて一枚に布にし、別の商品へ生まれ変わります。」
– 四角衣服の他にも、取り組まれていることを教えてください。
tomiさん:「四角衣服の製作はもちろんですが、その後の再生・循環させる部分が大切です。たとえば、写真にあるサルマタハカマをはじめ、私たちが扱っている衣服は、染め替えや染め直し、繕いなどのメンテナンスを行っています。」
tomiさん:「長く愛用していると生地がやわらかくなり、色が落ちて風合いが出ますが、同時にくたびれた雰囲気が出ることもあります。せっかくのお気に入りを長く楽しんでもらえるよう、染め替えや染め直しをおすすめしています。
染め替えや染め直しを行うことで、衣服が色づき、植物を原料とする布と、天然染料の組み合わせで布が強くなります。そして愛着のあるものを染め替えすることで、さらに衣服を楽しむことができます。」
tomiさん:「染料は渋柿やべんがらなど天然の素材を利用し、職人が一点一点丁寧に染めます。化学薬品を使用しないことで、最終的には土に還る循環する衣服でありたいと考えています。」
店内には世界各地からセレクトしたモノも販売されています。