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お寺と聞くと、葬式や法事など特別なときに訪れるというイメージがありますよね。
ですが、ほんのひと昔前まで「寺子屋」と呼ばれていたように、お寺は誰もが気軽に出入りできる場所でした。お寺は、葬祭や布教の場であるだけでなく、地域における教育・福祉・文化の拠点としての役割も担ってきたんです。
名古屋市中村区にある「荒井山 円福寺」には、そんなひと昔前のような光景が広がっています。円福寺では、「地域に開かれたお寺」を目指し、ミニマルシェ・本堂での寺ヨガや健康体操教室・精進料理ランチ会など、さまざまな行事を開催。最近では、マスクがなく困っている方のために「手づくり布マスク」を配布され、これまでに400枚以上の布マスクが届けられました。
今回は、副住職の小玉さんに、円福寺の歴史から布マスクのお渡しに込められた想いまで、たっぷりとお話を伺いました。
※オンラインにて取材
円福寺があるのは、名古屋市中村区下米野町。近年開発が進んでいる、ささしまライブのほど近くです。
宗派は浄土真宗大谷派。本尊は阿弥陀如来(あみだにょらい)。天台宗のお寺として米野の地にありましたが、今から500年ほど前に蓮如上人(れんにょしょうにん)に帰依(きえ)して浄土真宗のお寺となりました。現住職は第20代の住職なのだそう。
2017年に宗祖親鸞聖人(しんらんしょうにん)750回御遠忌法要の記念事業として、本堂と書院を木造にて新築。この法要がきっかけとなり、行事活動をお寺と共につくりあげる門徒さん中心のグループ「寺院活性化プロジェクト委員会(通称・寺活)」を発足。副住職の小玉さんが中心となり、寺活メンバーと協力して行事の企画や運営を行っています。
「わたしのお寺」と感じていただける場を目指して
– 円福寺では、ミニマルシェや本堂での寺ヨガや健康体操教室、精進料理ランチ会など、さまざまなイベントや行事が開催されているのですね。どのようなコンセプトや想いではじめられたのですか?
小玉さん:「円福寺にはこのような活動理念があります。
【円福寺活動理念】
念仏の教えと出あい受け継ぐ場として、常に集う人々に寄り添い、一人ひとりの人生に広がりや深まりを生む機会の提供に努め、末永く多くの方々から親しまれるお寺となることを目指す
活動理念の実現が最終目標ではありますが、まずはお寺は敷居が高いという印象を払拭し、多くの方にお寺に足を運んでいただく入り口として行事を開いています。
行事を開催している根底には、「お寺は誰のもの?」という問いがいつも存在しています。運営の中心は、住職をはじめとした寺族(じぞく)が担っていますが、お寺の主人公はお寺に集ってくださるお一人おひとりだと思っています。「わたしのお寺、わたしの居場所」そう感じていただける場所にしていきたいですね。」
ビアガーデンにコンサート
固定概念にとらわれない行事の数々
さまざまな行事が開催されている円福寺ですが、その中でも特に印象に残っているという、ビアガーデンとコンサートについてお話を伺いました。
寺子屋SUNDAY「ビアガーデンwith大治太鼓」(2018年8月、2019年7月開催)
2018年8月に第一回目が開催され、昨年の夏にもお寺の境内で開催された、寺子屋SUNDAY「ビアガーデンwith大治太鼓」。敷地内の駐車場には、どて煮・フランクフルト・かき氷などのお店が並び、駄菓子と野菜の詰め放題・大福引き会・プチクラフトマルシェなど、さまざまな催しも行われました。
小玉さん:「お店やイベントでにぎわった会場には、小さなお子さんから、おじいちゃんおばあちゃんまで、たくさんの方が来てくださいました。ビアガーデンのフィナーレは、日が暮れてきた午後7時半からスタートする「大治太鼓演奏会」です。約130名ほどの方が集まり、熱のこもった太鼓の演奏を楽しみました。聞くというより全身で感じるという表現がピッタリなほど大迫力なんですよ!
小玉さん:「この行事を通じて感じたのは、地域とのつながりです。地元の菓子店や八百屋さんが出店依頼をしてくださり、地域の中のお寺のあり方を模索する機会となりました。また、寺活メンバーそれぞれが自分の得意分野を存分に活かしてつくりあげた行事なので、とても印象に残っていますね。」
報恩講コンサートと報恩講(2018年11月、2019年11月開催)
報恩講(ほうおんこう)とは、親鸞聖人(しんらんしょうにん)のご恩をしのびおつとめする法要のこと。親鸞聖人の祥月命日の前後に行われます。真宗門徒にとって一番大切な御仏事である「報恩講」を知ってもらいたいという想いから、円福寺では報恩講コンサートを開催しています。
小玉さん:「音楽をご縁に、小学生から80代までの幅広い年代の方が親鸞聖人を知り、教えにふれていただくきっかけとなりましした。今の時代に合った法要のあり方が少し見えてきたかなと思います。お父さんの後ろで、一生懸命おつとめをする息子さんの光景には、後の代へつなげていく大切さを感じましたね。」
2017年に建設された新本堂は、こうしたイベント空間としても活用できるよう、堂内の柱を無くすように設計されたそう。今後どんなイベントが開催されるのか、楽しみですね。