自由な発想で「見立てる」空間づくりをするリノベーション会社「mokumosi」|名古屋・名東区
2018.10.1
愛知県を中心に活動し、住宅、店舗のリノベーションやオーダ家具、店舗什器製作などを手がける「mokumosi(モクモシ)」。2018年6月には、「mokumosi store」として家具や生活道具を販売する実店舗兼オフィスをオープン。古くから形を変えず使われ続けているものから、現代の生活に合わせて手を加えた物まで、カテゴリーに捉われず、提案してくれるお店です。
今回は代表の神田さんにmokumosiが提案する空間づくりの特徴やmokumosi storeについてなど、さまざまなお話を伺ってきました。
代表の神田大資さん
職人を経て、デザイナーに転職された神田さん。まずは経歴についてお伺いしました。
−まずはじめに神田さんの経歴を教えてください。
神田さん:「僕はもともと、建築のリフォーム会社で職人として4年ほど働いていたんです。大工仕事をする中で、次第にインテリアに興味を持つようになっていきました。そこで、インテリアやデザイン設計が学べる専門学校に通うことにしたんです。学校では、絵を描いたり、図面を引いたりして基礎的なことを学びました。
専門学校2年のときのことです。友達が「m304」という会社を立ち上げるから一緒にやらないか?と誘ってくれたんです。その会社はIT会社なんですが、僕は建築部門として関わることになりました。」

神田さんが一番最初に手がけた物件「m304のオフィス」
神田さん:「最初に設計した仕事が、「m304」のオフィスでもあるんです。リノベーションをする前は、なんの変わり映えもしない事務所でした。そこで、まずは壁や床を剥がしすべてを解体しました。床は雰囲気がよかったので、そのまま剥がした状態を生かしています。壁は白く塗装をして、机は工房にあった作業台を塗装することで、雰囲気をだしました。シンプルなデザインですが、当時はこのくらいのデザインでもかなり苦労をしたので思い出に残っていますね。」
©︎朴の木写真室/移転前のオフィス兼自宅
−独立したのはいつ頃ですか?またどんなきっかけだったのでしょうか。
神田さん:「独立をしたのが、3年前です。最初は自宅兼オフィスとして、部屋を真ん中で区切って使っていました。店舗にしている今の場所は、工房として借りていたところで、什器や家具をつくっていたんです。次第に事務所が手狭になってきたこともあり、2018年6月にmokumosi store兼事務所として、自宅から現在の場所に移転をしました。事務所の移転を機に、スタッフも一人増やして、現場は僕が担当して店舗の運営はスタッフの子に任せています。」
©︎朴の木写真室
−mokumosiの由来について教えてください。
神田さん:「mokumosiという屋号の由来には実は深い意味はないんです。意味をつけると、その意味にデザインが引っ張られていく気がしたので、意味のない言葉を選びました。
お客様と接するときは常にフラットな気持ち、こういうデザインがいいですよっていうよりは、お客様のライフスタイルや要望を聞いて形にしていく。そこを大事にしています。」
©︎朴の木写真室/現在の店舗兼オフィス
−仕事をする上で意識していることがありますか?
神田さん:「リノベーションをする上で意識しているのは、残せる素材感は生かすようにしていることです。うちはリノベーションを中心にやっているので、使える素材はそのままデザインに落とし込むように意識しています。
例えば、ここの店舗の外壁は、もともとあったものを生かしています。タイルがかなり汚れていたので、きれいに磨いたら、濃淡が浮かび上がってきました。昔のタイルって焼き方がおもしろくて色がムラになっているものが多いんですが、そういうのも面白いポイントだなって思ってますね。
なので、このタイルを生かすことを前提に考えて、扉を合わせてつくっていきました。残された扉のデザインにはできるだけガラス部分を設け、足や物があたりやすい低い部分には装飾を施しています。」
©︎朴の木写真室/mokumosi storeの店内
神田さん:「他の特徴としては、梁の部分をむき出しにしているんですが、このモルタルはもともとの状態です。そこから梁を隔てて、半分は白で塗装をしています。店舗内を2つの色に分けることで、ニュートラルな白と、モルタルの灰色をバックに商品が見られるようになっています。」
ここからは、実際の施工事例をまじえながらご紹介をしていきます。
昭和区の家
©︎朴の木写真室
神田さん:「この物件は昭和区にある90平米くらいあるマンションをリノベーションさせていただきました。光と風を遮らない間取りにしたいとのことでしたので、寝室兼クローゼットと玄関をガラスで仕切っています。扉を開けると風が通るイメージを持たれていたので、話ながらつくっていきました。」
©︎朴の木写真室
神田さん:「リビングには、ハンモックを吊るせる場所を3箇所つけています。意外とハンモックって気持ちよくて、お施主様のおじいちゃんが遊びにきた際はここにずっと座っているそうです。ダイニングテーブルもオリジナルでつくらせていただきました。無垢の天板に鉄の脚をつけています。」
熱田区の家
神田さん:「こちらの物件は、アパレル関係に勤めている方からご依頼をいただきました。この部屋は2部屋を1部屋につなげています。すごくこだわりのある方で、どうしても天井まである、一枚一枚引き出せる棚が欲しいというご要望で、この棚をつくらせていただきました。服を引き出せることが大事なので、全部に溝を掘って薄い板を入れています。飾って、服をしまう。服好きが伝わるデザインです。」
神田さん:「奥さんがアクセサリーも製作されているので、作業スペースもつくりました。アクセサリーづくりをされる際にはさまざまな小物があるので、サイズ感をバラバラにしています。薄いところは細かいパーツを入れられるようになっています。」
mokumosiでは話題のお店も多く手がけています。その中からいくつかの店舗をご紹介します。
OHAGI3
©︎朴の木写真室
神田さん:「店舗デザインでは、今人気のおはぎ専門店「OHAGI3」の一号店をやらせていただきました。外観は一面を大きなモルタルの壁でシンプルに仕上げています。こうすることで、看板で宣伝するよりも目立ち、「なんの店だろう?」と関心を持っていただけるのではないかと考えました。」
©︎朴の木写真室
©︎朴の木写真室
神田さん:「内装は珪藻土のクロスに和のテイスト。一部に和紙を使ってます。店舗ディスプレイはうちがつくって、カウンターも雰囲気に合わせて造作しています。」
calm
©︎朴の木写真室
神田さん:「ここは、大須にある水たばこ(シーシャ)を提供するお店です。オーナーが水タバコの専門店に勤めていた経験から、こちらの店舗をオープンさせました。」
©︎朴の木写真室
神田さん:「従来の水タバコの店内は薄暗く、入りづらいイメージがあると思うんです。そのイメージを変えるために、開放的で明るいお店にしたいとご要望をいただきました。水タバコを一つのツールとして捉えて、カウンターから喋ることもできるし、座って交流することもできる。誰もが楽しく交流する場を意識してつくりました。
内装は極力シンプルにして、インテリアアイテムで色付けをしています。キリムのクッションが空間に彩を添えています。壁を明るくすることで、女性でも行きやすい空間に仕上がりました。」
mokumosi storeのオープン
2018年6月には、ECサイト限定だった「mokumosi store」の実店舗をオープンさせます。
−なぜ、実店舗をオープンさせたのですか?
神田さん:「mokumosi storeをオープンさせたきっかけは、建築の仕事をしていく中で、お客様からこういうパーツや家具ないかな?って相談を受けることが多かったことなんです。ECサイトですとどうしても現物に触れられないので、照明や雑貨、パーツ、ヴィンテージアイテムなどを集めて店で扱えたらなって想いがありました。
商品は、工業製品で、工場で使われていたものだけど、自宅でもかっこよく使えるもの。あとは什器やヴィンテージアイテムも買い付けをして、リペアして売っています。一見男性的なアイテムが多く感じますが、女性客の来店のが多いんですよ。奥には商談スペースもあるので、今後は、ここでお客様との打ち合わせをしながら、空間づくりの相談をしていきたいですね。」
ここからは、mokumosi storeで気になった商品をいくつかピックアップしてご紹介していきます。
ヴィンテージの木製チェア

25,000円(税抜)
店頭ではさまざまなヴィンテージチェアがそろっています。こちらは北欧デンマークのもので、フレームはチーク材を使用。mokumosi storeでは、年代やデザイナー、ブランドは意識せず、雰囲気がいいものを中心に選んでいるそう。座面のファブリックは張り替えをしています。
工場で使用されていたキャビネット

12,000円(税抜)
こちらはインダストリアルな雰囲気満点、工場で使われていたキャビネットです。最大の特徴はとても丈夫なこと。工場内のパーツを収納していただけに、1段、1段しっかりしています。
落ちないSフック

S 2コ:480円(税抜) / M 2コ:540円(税抜) / L 2コ:700円(税抜)
こちらはアルミ素材でできたSフックです。キッチンツール、クローゼット内のバッグ、
お風呂場にのタオルなどさまざまな生活シーンで活用できます。
店内では、このように照明を引っ掛けるアイテムとして使われていました。
丸形カプセルランプ A
23,000円(税抜)
こちらの照明はもともと船舶等で使われていたものです。基本は平置きですが、壁付けタイプに変更も可能。お部屋の雰囲気づくりにいい味を加えてくれそうです。
型吹きガラスの試薬瓶

3,000円(税抜)〜
こちらの商品は、中に入ってるドライフラワーがメインではなく、実はビンが主役なんです。国内の数社の製瓶(せいびん)工場に残る僅かな人の手仕事によったつくられたもの。
架空の生物学者が試薬瓶に植物を入れて標本にしたものという設定のプロダクトなので、ドライフラワーが入っています。こうして、ドライフラワーを従来とは違った形で提案することで美しさが増します。また、製瓶業界の活性化、そのどちらにも「再生」の意味を込め、この企画が立ち上げられたそう。お部屋のインテリアやプレゼントにもぴったりなアイテムです。
アルミ丸ケース

1,400円(税抜)
最後にご紹介するのが、こちらの丸型のケースです。これはなんだと思いますか?実は、アルミのバターケースなんです。1960年代に製造されたもので、ドイツ軍で使われていたとか。小物入れとして使ったり、お部屋のディスプレイとして活用してもいいですよね。
mokumosi storeでは、ご紹介した商品以外にも、日常使いできるアイテムから、使い方次第ですてきなインテリアアイテムに変わるものまでさまざまなアイテムを取りそろえています。ぜひ店頭で確認してみてくださいね。
※商品の在庫状況はウェブサイトをご確認ください。
©︎朴の木写真室
今回、代表の神田さんにお伺いして自由な発想で空間づくりをされているのが、とても印象的でした。「mokumosi 」という名前の由来の通り、言葉に意味を持たせない代わりに、フラットな気持ちでお客様と接していきたい。という想いがデザインにも商品にも表れている気がします。
茶の湯の世界で金属製品やガラス製品を茶道具として活用して「見立てる」ように、”ものを本来のあるべき姿ではなく、別のものとして見る”ことで、空間づくりがもっと楽しくなるのではないかと感じました。mokumosi storeでは、おもしろいアイテムがたくさんそろっていますので、ぜひ足を運んでみてくださいね。
【mokumosi store】
住所 :愛知県名古屋市名東区香南1丁目503 MAP
定休日 :水、木
営業時間:11:00~18:00