いなべ市の「上木食堂」。食材に真摯に向き合う姿勢はこれからも!
目次
生産者とコミュニケーションの中で決まる
日替わりのメニュー
「今どんな野菜があるの?」からはじまるメニュー
上木食堂で使われている素材は、同じ会社である八風農園の野菜はもちろん、同市の農家さんからのお取り寄せや、肉や魚もできるだけ三重県産を使用しています。
日替わりのメニューは、「今どんな野菜があるの?」「何がもうそろそろ収穫できそう?」と、コミュニケーションをとりながらメニューを決めているのだとか。一般的には、料理ありきの食材選択という流れですが、上木食堂の場合は野菜ありきでメニューを決めます。
「実際、野菜の種類が少ない時期は年間を通してあります。けど、実は今収穫できる野菜で作れちゃいますよ。」と、サラリっとおっしゃる松本さん。スタッフの方によると、「松本さんは野菜を無駄なくきれいに使う人。食材を大切にしているからこそ、即興で料理を作ってしまう人なのです!」とおっしゃっていました。今ある食材をもとに創作していくので、作り手にとっては腕を磨く糧であり、腕の見せ所でもあるのです。
何でも自分たちの手で作り上げる、こだわりのメニュー
本日筆者が食べたのはAランチの「三重県産 さくらポークすね肉の生姜煮込み」。 さくらポークは三重県産の柔らかさが特徴の豚肉です。前日から煮込まれていることで、箸でほぐれるほど柔らかい食感に。付け合わせの玉ねぎがとろとろしていて、食べると甘さが引き立ちます!
つるむらさきはお吸い物と、冷奴にかかっている自家製の醤油にも漬け込まれていました。
お吸い物は、つるむらさきのネバネバした食感がシンプルなおだしにからんでいて、飽きがこない美味しさ。冷奴にかかっている醤油にも少しとろみがあり、見えないところにつるむらさきが活かされています。素材を無駄にしない心意気を感じました。
今の旬がつまったサラダ。ドレッシングは玉ねぎをすりおろした自家製。
ポテトサラダには「アンデスレッド」という、栗のようなホクホク感のあるじゃがいもを使用。さらに粒マスタード、玉ねぎ、さくらポークジャーキーを細かく切ったものが入っています。マヨネーズはいっちゃん卵を使用した自家製なのだとか。食べた瞬間は、「玉ねぎの甘さなのかな?」と感じましたが、ポテトサラダの材料を聞いて、素材の全てが合わさってできた甘みだと知り驚きです!
実は、今回食べたランチのサラダとポテトサラダに使われているじゃがいもは、それぞれ別の品種。サラダには「デストロイヤー」という紫色の皮のじゃがいもを使用していました。じゃがいもごとに性格が違うため、素材からメニューを考える上木食堂ならではの発想だと感じます。
生落花生は今が旬で、ちょうど収穫したてのものが塩茹でされてランチの小鉢に。生で食べたのは人生初!ホクホクとした食感に加えて皮のほどよい苦味も感じ、旬の素材をしっかり味わっていると感じる一品です。
上にかかっているのは、和紅茶の茶葉。口の中がさっぱりして食後のデザートにピッタリ。
酸味・苦み・コクすべてのバランスがちょうどよく飲みやすいブレンドコーヒー「上木ブレンド」。カップの手触りも、手に吸い付くような質感でホッと落ち着きます。
第一線で走り続けることが今後の役目
– オープンして6年目。今や上木食堂はいなべ市の認知度に貢献しているお店だと感じます。オープン当初よりも役割に変化がある気がしますが、今後の目標を聞かせてください。
松本さん:「実はオープン当初からやっている事は変わりません。なので今のまま、想いを大切にしながら第一線で走り続けることが目標であり、役目だと思っています。 もともといなべ市には移住者もいて、行政としては町おこしなどのベースもありました。その中でいなべ市のプレイヤーとして松風カンパニーがある、というのがもう6年続いています。いなべ市に訪れる人が増えることで、市と一緒に大きくなっている感覚ですね。だからこそ、オープン当初から大切にしている想いを引き続き崩さないようにすることが、ある意味で挑戦かなと感じています。」
あるものの魅力を最大限に引き出す料理。あるものを活かして、自分の好きを混ぜ入れた空間作り。上木食堂の人気の秘密は、作れるものはなんでも自分たちで作り、真摯に食材と向き合い、ごまかすことのない旬を切り取った料理の数々に出会えるからなのだと感じます。いなべ市に立ち寄る際は、ぜひ足を運んでみてください。