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愛知県犬山市にある「野外民族博物館リトルワールド」は、世界23カ国と地域の建物が立ち並ぶテーマパークです。世界各国の衣・食・住をはじめとした民族文化が紹介されています。
グルメイベントや民族衣装体験のイメージが強いかと思いますが、それだけではありません。リトルワールドの魅力は、何と言っても建物のクオリティの高さです。どの建物も現地から柱や石垣などを運んで移築したり、現地の材料、現地での取材を重ねて忠実に再現しています。
今回はパークを一周しながら、各国の建物の魅力をたっぷりとご紹介していきます。
2時間で世界一周?!
リトルワールド館内マップ(引用元:http://www.littleworld.jp/doc/kannaimap.pdf)
敷地面積は123万㎡と、日本のテーマパークの敷地面積としては2位の広さをほこります。
リトルワールドは、一周約2.5km、歩いてまわるには最短2時間ほどです。8つのエリアに分かれ、その場所ならではの生活文化を知ることができる民家や施設が展示されています。乗り放題の園内バス(1日500円)もあるので、小さいお子さまがいらっしゃる方や、気になる施設だけ回りたいという方はぜひ活用してみてくださいね。
今回は33施設ある中でも、家づくりやインテリアの参考になりそうな建物をピックアップしてご紹介していきます。では、さっそく世界の建物ツアースタートです!
台風対策は万全!「沖縄県 石垣島の家」
まずは、沖縄県石垣島の建物からスタートです。
こちらは、今から130年以上前の1871年(明治4年)ごろに建てられた琉球時代の士族の住まいを、石垣市より移築復元した建物です。漆喰で固められた屋根瓦や、サンゴ石でつくられた石垣など、毎年7月〜10月の間台風に備えて、随所に防風対策がされています。
母屋の柱が多く、軒が低いのも防風対策の一つ。軒が低いことで、風は家の壁ではなく屋根の上を吹き飛んでいきます。
屋根瓦には屋根が風で吹き飛ばされないための重しの役割もあります。この家では、平瓦と丸瓦を組み合わせ、およそ1万7千枚、25tもの瓦が使われています。
沖縄では、昔からおうちの守り神として親しまれているシーサー。
自然の断熱材で寒さ対策
「北海道 アイヌの家」
敷地の奥にあるのが両親の家、手前の2棟が分家した子供たちの家。
続いては、日本の最北端にある北海道の建物です。
北海道の先住民族であるアイヌが、19世紀末ごろまで暮らしていたコタン(村)を、アイヌの人々の協力で再現しています。屋根や壁に使われているのはイネ科の植物(アイヌ名:ラペンペ)で、1本1本がストローのような中空構造になっています。これからを束ねると、断熱材と同じ役割を果たします。煙によっていぶすことで、雨雪にさらに強くなるそう。寒い地方ならではの家づくりの工夫ですね。
暑さと台風対策「台湾 農家」
こちらは台湾の福建系漢族の農家をモデルとして復元したものです。台湾の漢族は、中国大陸から移住してきた人びとを指します。
石垣島から200kmほどのところにある台湾は、沖縄同様に毎年いくつもの台風に襲われます。暴風雨の侵入を防ぎ、熱帯の強い日差しを避けるため、壁を厚くし、柱廊(ちゅうろう)で家屋の前面をとりまく間取りになっています。
沖縄同様、屋根瓦は漆喰で塗り固められています。
中国南方の建築様式の流れをくみながら、台湾の風土に合わせたつくりになっています。
「福徳正神土地公」と呼ばれる神をまつる廟「福徳宮」。
とんがり屋根のティピ
「北アメリカ 平原インディアンのテント」
ティピは女性が所有し、組み立ても解体も女性の仕事だったそう。
最近では、インテリアや、キャンプシーンで人気の「ティピテント」。もともとは、ロッキー山脈東部の大草原に住むインディアン(先住民)の移動式テントです。美しい外観と機能性を兼ね備えたティピは、獲物を求めて移動を続ける生活には大変便利だったようですが、生活様式の変化に伴い、現在は住居として使われることはなくなりました。
アラブの香りがする南米の家
「ペルー 大農園領主の家」
この家は、「アシエンダ」と呼ばれた大農園の領主の邸宅を復元したものです。領主がスペイン系のため、本国スペインの建築様式を取り入れて、中庭を囲んで回廊・居室が配置されています。
アシエンダとは、アメリカ大陸の旧スペイン植民地において、先住民らを小作人とし、大規模な経営を行った農場のこと。1969年の農地改革で解体されるまで、莫大な収益をあげていました。
雨がほとんど降らない地域のため、内開きで雨戸もないなど、雨対策のない住まいとなっています。
イスラムの影響を受けたスペイン様式建築のため、回廊にはイスラム風の美しいタイルが。
部屋の中は、ヨーロッパから輸入した豪華な家具で飾られています。こうした調度品の数々も現地にて同年代のものが調達されています。
カトリックの礼拝堂が付属しています。壁画は「卵テンペラ」という卵を使用して描かれている方法のため、色鮮やかな仕上がりになっています。
壁絵が美しい「ドイツ バイエルン州の村」
ここから一気にヨーロッパへと移動します。
こちらは、芸術の都ミュンヘンの南方90km、ガルミッシュ・パルテンキルヘン周辺をモデルとして、バイエルン州の村の雰囲気を復元しています。夏の避暑地として多くの観光客が訪れるリゾート地として有名です。
このあたりの家並みの特徴は、街路にそってならぶ商店や民家の外壁に美しい壁絵が描かれていることです。この壁絵は250年の歴史を持ち、「風の絵」と呼ばれ、またその壁絵を描く画家は「風の画家」と呼ばれています。
「メルヘンバルト」街道沿いの商家をモデルとした民家。
メルヘンバルト建物裏側。窓の周りの装飾はすべて描かれたものです。とても細かく描かれているので、近くまで絵とは気がつきませんでした。
「ガストホフバイエルン」昔の駅馬車の旅籠(はたご)をモデルとした家屋。
天井に風の絵が描かれた「聖ゲオルグ礼拝堂」
風の絵が描かれている「聖ゲオルグ礼拝堂」をご紹介します。
バロック初期の建築様式で建てられた、聖ゲオルグをまつる礼拝堂。内部は祭壇のある内陣と礼拝席、天井画のある身廊から構成されています。優しくみずみずしい色合いがすてきな建物です。
「聖母の戴冠」父なる神、その子イエス・キリストとハトの姿の聖霊から黄金の冠を授かり祝福を受けるマリアが描かれています。
「風の絵」という名前は、そよ風のような手早さで描きあげなければならないフラスコ画特有の描き方に由来しています。みずみずしい美しい色調が特徴。
フレンチカントリーのインテリアが可愛い
「フランス アルザス地方の家」
続いてはフランスの建物です。
フランス東北部、ドイツと国境を接するアルザス地方の農家を復元しています。母屋は1985年まで9代にわたって実際に住まわれていました。比較的規模の大きな家で、創建当時は裕福な家であったと思われます。母屋は、3階建ての建物で、白い漆喰壁に柱や筋交いなどが浮き出ている木骨構造「コロンバージュ」という建築様式です。
アルザス地方は、夏暑く、冬寒い土地柄。積雪を避けるため急勾配の屋根になっています。
窓の扉にはさりげなくハートマークが。
窓際にコーナーベンチを配置するのは、お部屋を広く使うインテリアのポイントです。
カントリースタイルの家具がとても可愛らしいです。インテリアの参考にもなりそう。
2つの部屋を同時に温めることのできる暖炉。たき口は台所にあります。