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みなさんこんにちは。ライフデザインズ編集部が独自の目線でおすすめしたい「本」をピックアップしてご紹介するこのコーナー。今月は”夏休みに読みたくなる本”をテーマに選書しました。
ドキドキするほど眩しい小説「サマータイム」
夏に読みたい小説でまっさきに思い浮かぶのが「サマータイム」です。
佳奈が十二で、ぼくが十一だった夏。どしゃ降りの雨のプール、じたばたもがくような、不思議な泳ぎをする彼に、ぼくは出会った。左腕と父親を失った代わりに、大人びた雰囲気を身につけた彼。そして、ぼくと佳奈は彼に感電した。89年度「月刊MOE童話大賞」受賞作。
この小説は心優しい弟と気の強い姉、事故で片腕を失った少年の交流をそれぞれの視点からピアノを通じて描いた作品です。 子どもから大人へ成長してく、心の移り変わりをうまく描いていて、読んでいると切なくて、ちょっと懐かし気持ちになります。
色褪せることのない名作「夏への扉」
言わずと知れたSF小説の傑作「夏への扉」。タイトルだけ聞くと恋愛小説のようですし、夏の物語かと思えば、はじまりは12月。
1970年12月、ロサンゼルスに住むダンは親友と恋人に手ひどく裏切られて自暴自棄になっていました。彼に残されたのは愛猫のピートと、親友の継娘(ままむすめ)でピートの面倒をよく見てくれていたリッキイのみ。
彼はこの現実から逃れるため、流行りの「冷凍睡眠」で30年間眠りにつくことを決意。その前に一矢報いてやろうと思い、親友の家を訪れるのだが……。
この作品のすごいところは、1956年に書かれた作品にもかかわらず2001年の世界をリアルに予想しているところ。SFが苦手な方にも読みやすい作品なので、ぜひ挑戦してみてくださいね。
時代小説の金字塔「蝉しぐれ」
藤沢周平作。海坂藩を舞台に、政変に巻きこまれて父を失い、家禄を減らされた少年牧文四郎の成長や、彼を慕う武家の娘との淡い恋を描く物語。
主人公の文四郎を中心とした3人の成長・心の葛藤・色や匂い・空気感、読んでいるとすべての情景が映像のように頭に浮かびます。小説っておもしろい!そう思わせてくれる一冊です。そして、読み終えたあとの余韻からしばらく抜け出せなくなります。映画化もされているので、合わせて観てもまた違う視点から物語を感じることができます。
高飛び込みをテーマにしたスポーツ小説「DIVE!!」
オリンピック出場をかけて、少年たちの熱く長いアツい闘いがはじまる!
高さ10メートルから時速60キロで飛び込み、技の正確さと美しさを競うダイビング。赤字経営のクラブ存続の条件はなんとオリンピック出場だった。少年たちの長く熱い夏がはじまる。小学館児童出版文化賞受賞作。
高飛び込みというマイナーなスポーツをテーマにした小説ですが、読みはじめると高飛び込みの世界に惹きこまれてしまいます。この本を読んで以来、オリンピックでは高飛び込みを観るのも楽しみに一つになっています。
小説を通して、知らなかった競技について知るのもおもしろいですよ。
少女小説の聖典「悲しみよこんにちは」
「悲しみよこんにちは」は、1954年に発表されたフランスの作家フランソワーズ・サガンが当時18歳で生んだ小説です。17歳の少女セシルがコート・ダジュールの別荘で過ごす一夏の物語。
大学生のシリルとの恋も芽生えるが、父のもうひとりのガールフレンドであるアンヌが合流。父が彼女との再婚に走りはじめたことを察知したセシルは、葛藤の末にある計画を思い立つ……。人間の悲しみ・物憂さ・優しさ・孤独といった繊細な感情が、とても素直に描かれており、少女小説の聖典とも言われています。
毎年、夏が来るたびについ読み返したくなってしまう小説です。
今回はこの5冊をピックアップしてご紹介しました。夏といえばワクワクすることがいっぱいですが、同時にどこか切ない気持ちになることも多いもの。どの小説もそんな夏の切なさが詰まっています。