”映画の魅力をもっと多くの人へ” 俳優・佐津川愛美さんが立ち上げた『filty(フィルティ)』への想い

掲載日:2025.06.06
”映画の魅力をもっと多くの人へ” 俳優・佐津川愛美さんが立ち上げた『filty(フィルティ)』への想い

俳優デビューから20周年を迎えた佐津川愛美さん。デビュー20周年記念として全国4か所で開催した「佐津川愛美映画祭」をきっかけに、子ども向けワークショップやトークイベント、映画の世界をより多くの人に届けるためのプロジェクト「filty(フィルティ)」の立ち上げなど、新たな挑戦を次々にスタートさせています。

今回は、専門学校 名古屋ビジュアルアーツ・アカデミーでの特別授業を終えたばかりの佐津川さんに、ワークショップへの想いや、昨年開催された映画祭や書籍の出版、そして新たに立ち上げた映画と仲間「filty(フィルティ)」の活動についてうかがいました。

映画祭をきっかけに、もっと深く映画の世界へ──
佐津川愛美さんが手がける映画と仲間「filty」

―今回、名古屋ビジュアルアーツ・アカデミーで特別授業を行うことになったきっかけを教えてください。

佐津川さん:きっかけは、「filty(フィルティ)」というプロジェクトを新たに立ち上げたことです。この前身となったのが、私の俳優生活20周年を記念して昨年開催した「佐津川愛美映画祭」です。全国4か所にて、過去の出演作や監督作品などを上映、ゲストを交えてのトークショー、ワークショップを開催しました。

ワークショップを企画したきっかけは、静岡での映画祭開催時に予定作品が上映できなくなったことでした。「この空き枠で何ができるだろう」と考えたとき、ずっとやりたかった“子ども向け映画ワークショップ”が浮かびました。大好きな映画を「観る」だけでなく「つくる」ことから体験し、その作品を「届ける」ところまでを味わえる、そんな経験をプレゼントしたいと思ったんです。」

静岡でのワークショップ「arigato2000」撮影の様子

佐津川さん:「東京から、映画監督や撮影、照明、録音、メイク、俳優など、現役で活躍している映画のプロフェッショナルたちにお越しいただき、小学1年生から高校3年生までの子どもたち、総勢約60人と一緒に、2日間かけて1本の短編映画をつくり上げました。

ロケ地には匠宿や静岡市役所など、本物の現場さながらの環境を使用させていただき、子どもたちはそれぞれ各部署に分かれて、本物の映画現場のように短編作品を撮影しました。

子どもたち一人ひとりの真剣なまなざしや、映画を“つくる”ことへの純粋なワクワクに触れて、「ああ、これが私のやりたかったことなんだ」と心から思ったんです。静岡でのワークショップをきっかけにご縁が広がり、名古屋ビジュアルアーツ・アカデミーさんで特別授業を行うことになりました。」

専門学校 名古屋ビジュアルアーツ・アカデミーでの授業風景

―実際に学生さんたちと接してみて、どんな印象を持たれましたか?

佐津川さん:「今年の秋には、名古屋ビジュアルアーツ・アカデミーの学生さんたちと一緒に、短編映画をつくるのですが、今回はその第一歩として、初回の授業を担当させていただきました。

初めての顔合わせということもあり、映画づくりの基本や、映画の世界にはどんなお仕事があるのか…そんなお話を1時間ほどさせていただきました。学生の皆さんが本当に前向きで、たくさん質問もいただき、「映画に携わりたい」という熱意がひしひしと伝わってきました。

完成した作品は、12月にミッドランドスクエアシネマで開催される「おいしい映画祭」での上映も予定しています。たくさんの方に観ていただけたら嬉しいです。」

専門学校 名古屋ビジュアルアーツ・アカデミーの学生さんたちと。

―今回のワークショップで佐津川さんが期待していることはありますか?

佐津川さん:「この授業を通して私が伝えたいのは、「映画は、つくって終わりではない」ということ。企画・撮影から上映、プロモーションまで、作品が“観客に届く”までのすべてを経験してほしいと考えています。

そして、映画づくりは、仲間と力を合わせてはじめて形になるものです。現場では、たくさん話し合ったり、ときにはぶつかったり、でもその中で素敵なアイデアが生まれたりもします。そんなみんなの空気が、ちゃんと作品にも映ってくるんですよね。

だからこそ、自分の担当だけじゃなくて、照明や録音、編集など、いろんな役割のことにも目を向けて、映画がどうやってできあがっていくのかを、まるごと感じてほしいなと思っています。」

映画づくりの舞台裏を伝えたい。映画祭から生まれた書籍『みんなで映画をつくってます』

―昨年は映画祭をきっかけに本を出版されましたが書籍についての経緯を教えてください。

佐津川さん:「佐津川愛美映画祭を開催した際にパンフレットの話があがったのですが、自分の過去を振り返るだけの冊子にはあまり興味が持てませんでした。それなら、前からずっとやりたかった、“映画の仕事をもっと多くの人に知ってもらえるような本”を作ろうと思ったんです。

映画って、俳優だけじゃなく、撮影や照明、美術、編集、配給、宣伝……本当にたくさんの人の手によってつくられています。そういった一連の流れをわかりやすく紹介することで、映画業界に興味を持ってもらうきっかけのひとつになればと思いました。

せっかくの「俳優生活20周年」という節目だったので、20人にお話を聞くという企画にしたのですが、実際に登場するのは19人。20人目は、“俳優としての私自身”という気持ちを、本の中に込めました。」

―取材を通して、特に印象に残っているエピソードはありますか?

佐津川さん:「特に印象に残っているのが、「ロケ地を探すときには、不動産屋さんに直接飛び込むこともある」というエピソードです。

私たち俳優は、用意された現場に行って演じることが多いので、「その現場がどうやって用意されているのか」を知る機会はあまりありません。でも、ロケハンって、実はすごく地道で体力のいるお仕事なんだと気づかされました。足で探して、人に会って、交渉して……ようやくひとつの場所が決まる。まさに“熱量と粘り強さ”の仕事なんですよね。

「ネットでは出てこないから、自分の足で歩いて、いい雰囲気の場所があったら近くの不動産屋に入って聞いてみることもある」とお話されていて、本当に驚きました。

映画って、カメラの外側でもこんなにたくさんの努力が重ねられている。そんな“見えない部分”の積み重ねがあるからこそ、スクリーンの中の物語が、人の心に届くんだなと感じた出来事でした。」

filty(フィルティ)のロゴ

— そこから「filty(フィルティ)」という映画プロジェクトの立ち上げにつながったんですね。

佐津川さん:「はい。映画祭を通して、映画に関わるたくさんの人たちの想いや、その仕事の奥深さにあらためて感動したんです。ワークショップのお問い合わせもいくつか頂き、必然的にまたこんな場を作りたいと思いました。

そんな想いから立ち上げたのが、映画と仲間「filty(フィルティ)」です。団体名は、“Film”と“Party”を合わせた造語で、パーティには、仲間そして楽しく集うという2つの意味を込めています。filtyでは、今のところ映画のプロから直接お話を聞けるトークイベント『filty expert』と、子どもたちが撮影現場を体験できるワークショップ『filty friends』の2つの柱で活動しています。

記念すべき第1回のfiltyイベントでは、2025年5月25日にfilty expertとして『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』のプロデューサー・須藤孝太郎さんをお迎えし、上映後に作品の「企画」にフォーカスして裏側をじっくりと深掘りするトークイベントを開催しました。

この『filty expert』は、昨年出版した本『みんなで映画をつくってます』の“オフライン版”のようなもので、映画がどうやって生まれ、どんな人たちがどんな想いで関わっているのかを、もっと多くの方に伝えていきたいと考えています。

まずはこの2つの軸を中心に、いろんな可能性を広げて活動をしていきますので、あたたかく見守っていただけると、とても嬉しいです。応援よろしくお願いします。」

−最後に、映画業界を目指すみなさんへメッセージをお願いします。

佐津川さん:「映画業界は「遠い世界」と思われがちですが、実は身近なところにもたくさんのチャンスがあります。たとえば、飲食店で隣に座った人が映画関係者だったり、ワークショップに参加したことがきっかけで業界につながったりと、思いがけないところから道が開けることも多いんです。だから、まずはとにかく行動して、自分のやりたいことを声に出してみてほしいと思います。

私自身も、昨年の映画祭をきっかけに、ずっとやりたかったワークショップの開催や書籍の製作につながり、「filty」の立ち上げ、トークショーの主催など、少しずつ活動の幅が広がっていきました。やりたいことは口に出して伝えることで、形になっていくものです。「自分には無理かも」と諦めず、勇気を持ってチャレンジしてほしいです。

そして、映画の魅力をもっと知っていただくためにも、映画館という素敵な場所にぜひたくさん足を運んでほしいと思っています。」

▼映画と仲間「filty」(フィルティ)

公式サイト

Instagram

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佐津川愛美 プロフィール

1988年生まれ、静岡県出身。
2005年『蝉しぐれ』(監督:黒土三男)で映画デビュー。
主な出演作に映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(2007)、『横道世之介』(2013)、『ヒメアノ〜ル』(2016)、『毒娘』(2024)など。
ドラマでは「最後から二番目の恋」(2012,2014,2025)、「おっさんずラブ-in the sky-」(2019)、NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』、「大奥 Season2」(2022)ほか、多数の作品に出演。

近年はエッセイの執筆や監督業などにも取り組み、表現の幅を広げて活動中。
2024年にはデビュー20周年を記念して、「佐津川愛美映画祭」を東京・高崎・名古屋・静岡で開催。また、映画ができあがるまでに欠かせない、さまざまな職種の人々の声を集めた書籍『みんなで映画をつくってます』を出版。

さらに、映画の魅力や、映画づくりの楽しさをもっと多くの人に届けたいという思いから、映画と仲間「filty(フィルティ)」を立ち上げ、トークイベントや子ども向けワークショップなどを通して、精力的に活動を広げている。

 

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