長年、喫茶店文化が根付いている名古屋。そんな名古屋の中心地、栄の広小路で60年以上営業を続けてきた「純喫茶ライオン」が、2019年6月に久屋大通駅から徒歩1分ほどの場所に「NEO純喫茶ライオン」として移転オープンしました。
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ホワイトメイツビルの3階に移転。隠れ家的な雰囲気に包まれた外観は、以前からお店にあったライオンが目印です。
店内に足を運ぶと、モダンな雰囲気に心癒されます。10席とカウンター6席のみの店内ですが、読書片手にホッと過ごすことができる純喫茶の雰囲気はそのまま。
移転オープンのきっかけやお店に対する想いなど、「NEO純喫茶ライオン」の3代目代表北林さんにお話を伺いました。
今までの歴史や伝統を守り続けるために。
– 60年以上栄で喫茶店を営んでいた「純喫茶ライオン」のリニューアルは、私自身とても驚きました。移転したきっかけを教えてください。
北林さん:「一番のきっかけは建物の老朽化です。もともと純喫茶ライオンは、1958(昭和33)年に祖母が開業しました。50年ほどは特に大きな修繕工事などはなく、壁紙を張り替えるくらいでした。しかし、今から10年ほど前に祖母から母に代替わりをしたときに、お手洗いなどの水回りなどが壊れてきて、何度も修繕を繰り返していました。」
– 代替わりをされてから、徐々に建物の老朽化が進んで行ったんですね。
北林さん:「そうですね。直して営業を続けての繰り返しでした。そして母が2年ほど代表を務め、2015年に私が3代目としてお店を引き継ぎました。そこでも、何度も何度も建物の老朽化には悩まされて、2018年になって1回だけ、1ヶ月ほどお店を休んで直すことを決意しました。無事に修繕も終わりお店を再びオープンしたのですが、やはりうまくはいかず……。このままではお店を営業することができない。今までの純喫茶ライオンの歴史を私の代で途絶えさせてしまうかもしれない……。そればかりが不安で、心も衰退していました。」
– そこから移転を考えるように?
北林さん:「実は、まだ2018年12月までは“移転”ということは一切考えていませんでした。先代が守ってきたこの場所を、ずっと守り続けなければいけない。ということしか頭になくて。しかし2019年の年明けに、離れた場所からお店を俯瞰的に見てみたんです。栄4丁目で生まれ育ち、この場所しか知らなかった私は、外から見たときに“もっと他に良い場所があるのではないか”と思いはじめたんです。思い立つと行動するタイプなので、まずは物件を見にいきました。」
- オープンの半年前に、移転を考えたとは驚きです。
北林さん:「自分でもびっくりするスピードで移転を考えはじめたんです。今までは、あの場所に固執してしまっていましたが、祖母や母が亡くなり先代がいなくなった中で、自分でなんとか決めないといけないという責任感もあって。色々と物件を探している中で、直感でここを決めました。」
– この場所は直感だったんですね。
北林さん:「はじめてここを訪れたとき、3Fという立地だからこそ店内から見える外の素晴らしい景色、お客様とのほどよい距離感や空気感がいいなと感じて。この箱が一目で気にって、ここでなら移転をしても良いなと思ったんです。ここは馴染みのあるエリアでもあるし、安心感もあります。ご縁もあり、移転を決意しました。」
– 常連客の方々に移転すると伝えた時は、どんな反応でしたか?
北林さん:「純喫茶ライオンは、祖母からのお客様がとても多く、昔からコミュニケーションをうまくとることができていました。移転することを自分の言葉で伝えると、自分たちにとっても貴重な喫茶店だからこそうれしいと言っていただくことも多くて。移転後も、足を運んでいただくお客様も多くとてもうれしいです。
栄4丁目は再開発のエリアで、昔は商店街で賑わいがあり、いろんな個人商店がありました。純喫茶ライオンが、個人商店兼住居としても暮らしていたのが私たちが最後でした。すべての歴史はあの場所からはじまり、思入れもたくさんありますが、今となってはとても良い形で移転することができたと思っています。」
– 店内にある家具などは以前のお店から持ってきたものですか?
北林さん:「持ってきてここに飾っているのは、古時計・テレビ・ステレオ・浮世絵だけ。ソファはほとんど処分して、ここにある椅子やテーブルなどは新しく購入したものです。昔のインテリアとも馴染んでいるのでお気に入りです。」
– 今後の展望について教えてください。
北林さん:「純喫茶は、歴史や人とのつながりがたくさん詰まっています。60年以上前にお店を開業、移転し、ここからが新しいスタートだと思っています。店名に“NEO”とつけたのも、昔からの伝統を守りたかったのと同時に、新たな純喫茶のスタートをするために店名に入れました。今後は、3代目としてNEO純喫茶ライオンを大切にしながらも、次世代に私が先代に教えてもらった喫茶の素晴らしさ、コーヒーの魅力を伝え続けたいです。」