名古屋市のビジネス街を代表する伏見エリアの一角で、2022年6月にオープンした「喫茶七番」。マンション・テナント・クリニックからなる「オリマチ錦」の1階にあり、広場を眺めながらゆったりと過ごせる都会のオアシスです。
「喫茶七番」は、地域のひとたちでつくった会社「錦二丁目エリアマネジメント」が運営しています。カフェでありながら、街の情報発信をおこなう拠点としての役割もあるとか。
今回は、錦二丁目エリアマネジメントの白石さんに、「喫茶七番」のコンセプトやこだわりについて詳しく伺いました。
目次
かつての会所をカフェで実現!
喫茶七番がオープンした背景は?
– 喫茶七番をオープンした経緯を教えてください。
白石さん:「ここの土地はもともと再開発の対象エリアで、プロジェクトとして20年くらいの歳月を費やして実現したエリアマネジメント(まちづくり)拠点です。
この場所を含む錦2丁目エリアはかつては城下町で、会話や寄り合いなどをする『会所』と呼ばれる場所がいくつもありました。しかし、現在は都心でビジネス街にもなって、道路や駐車場など自動車が使う空間が街の43%を占めています。私たちは『住める街・暮らしやすい街づくり』をテーマに掲げているまちづくり会社でもあるので、誰もがふらりと立ち寄れる会所のような場所を作りたくて、喫茶七番をオープンしました。」
– 「喫茶七番」の名前はどのように付けたのでしょうか?
白石さん:「七番というのは、この土地が錦二丁目七番地だからです。私たちがまちづくりをする錦二丁目エリアは、1番から16番まで碁盤の目のように区画が分けられています。地元の方々も、このプロジェクトを進めるにあたり『七番はどうなってる?』と愛称としても使われていた言葉だったので、馴染み深い『七番』を名前にしました。」
白石さん:「カフェではなく『喫茶』にしたのも理由があります。街に昔からある喫茶店は、わざわざくる場所だなと思っていて。例えば喫茶店の常連さんたちは喫茶店で何をして過ごしているかと言うと、新聞や雑誌を読んだり、テレビを見たり、家でもできることですよね。でも喫茶店でそれをするのって、店に行きたい理由があるからだと思うんです。
また、常連さんが初めてきたお客さんにお店のおいしいメニューを教えてくれるような交流が生まれるのも、喫茶店ならではの魅力かなと。近年はコロナの影響もあり特に顕著になりましたが、都心は人間関係が希薄なところがあるので、名古屋の喫茶文化でもある店のつながり、人と人とのつながりが大事だなと思って『喫茶』にしました。」
誰もが気軽に来れる身近な存在に。
交流・情報発信の拠点となる場所
– 喫茶七番のコンセプトを教えてください。
白石さん:「かつてこのまちに点在していた会所のように、情報交換や交流の場、憩いの場のようなお店でありたいと思っています。常連さんも初めての人も、コーヒーや食事とともにゆっくりと休憩できたり、ときには交流が生まれたり。この街に暮らす人や働く人、またこの街に遊びに来る人、すべての人が気軽に利用できる店にしたいですね。そのためには人と人、人と街を『つなぐ』ことが大きなテーマでもあります。喫茶七番はまちづくり会社が運営しているので、普通の喫茶店にとどまらず、錦二丁目地区全体の窓口を目指していきたいです。」
錦のまちにあるものが溶け込んだ店舗デザイン!
注目ポイントは?
明るい白色と可愛らしいピンク色のツートンカラーで彩られた店内は、とてもオシャレ。広々とした店内は清潔感があり、木材の家具は柔らかい印象を与えます。
店内のデザインには、お店のコンセプトや錦のまちにあるものが溶け込んでいるとのこと。喫茶七番を訪れる際には、ぜひ注目してみてください!
入り口のすぐ近くには、バス停をモチーフにした案内板が。ここにはメニュー表やお知らせなどが掲示されています。入店後はカウンターでオーダーし、代金は先払い。コーヒーや料理は自分で受け取るシステムです。
イスとして利用できるスツールは、16番街区の碁盤の目がイメージされています。一箇所だけメタルになっているのが「7番街区」です。
壁際の奥行きがあるシートは、実は縁側。「まちに縁側があったらいいな」という声から生まれたデザインです。日本家屋の縁側は高さが40cmという決まりがありますが、ここも40cmに合わせて作られているのだとか。
子どもが遊んだりくつろいだりできるので、ファミリーで過ごすのもおすすめです。
店内のあちこちには、生き物のような不思議なキャラクターが描かれています。これは道路標識の人間をイメージしたものですが、性別も年代もわからないよう抽象化されていてかわいらしいイラストになっています。
店の中心にある円形カウンターの天板は、ちょっと変わった模様。これは、以前この地区にあった「アートラボあいち」が入っていたビルの壁面に描かれていたフレスコ画を再利用したものです。
長者町を抽象化したデザインのフレスコ画は、ビルが取り壊された後も保管されていたのだそう。中にはこのフレスコ画を見るためにお店に足を運ぶ人もいるそうで、もともとまちにあったものが、時を経て生まれ変わって帰ってきたというのは素敵ですね。
円形のカウンターは1/3の部分が外に出ていて、「中」と「外」をつなぐ象徴になっています。中と外は、このお店の中と外、錦二丁目の中と外という意味も含まれていて、「つなぐ」をテーマとする喫茶七番の最大の特徴とも言える部分です。
喫茶といえば定番のメニューも!
コーヒーや料理へのこだわり
喫茶七番は、食べごたえのあるランチセットメニューや甘味メニューもあります。コーヒーのサイズもSMLの3つから選べるので、さまざまなシーンに合わせて利用できるのが魅力です。
– 喫茶七番のコーヒーや料理へのこだわりを教えてください
白石さん:「私と同じく喫茶七番の運営に携わっている阿部は、すぐ近くにあったMITTS COFFEE STAND(ミッツコーヒースタンド)でオーナーをしていたので、コーヒーの選定や味に関してはおいしいものを確実に提供できていると思います。
コーヒーのサイズは、喫茶店では1サイズしかないお店が多いのですが、どうしてもいろいろなニーズに合わせたくてSMLの3サイズを用意するようにしました。カップはデザインで気に入ったものを揃えたら、たまたますべて岐阜のメーカーさんや作家さんの作品になりました。それぞれ2色展開ですが、どれも素材や味わいが違うので気に入っています。」
– 料理のメニューや素材についてはどうでしょう?
白石さん:「ランチメニューは定期的に変えていきたいなと思っています。先日まではレギュラーメニューに大人のお子様ランチがあったんですが、これからは季節限定のものやちょっと変わったものなどにも挑戦してもいいかなと思っています。大人のお子様ランチは、若い方からご年配の方まで好評でした。特に長いことこのまちで商売をされてきた方は『昔は食べられなかったから今食べられて嬉しい』という声をいただいたこともあります。また、プリンアラモードも自分が好きだったのもありますが、喫茶店にあって肩肘張らないメニューがいいなと思って採用しました。
素材については、今後他のプロジェクトで作った野菜やハーブなども使えればと思っています。例えば、私たちの会社が行っている都市の隙間を使った菜園プロジェクト「ゑびす菜園」があるのですが、バケツの鉢でサツマイモを育てたり、ビルの屋上でハーブを育てたりしています。サツマイモは福岡の酒蔵で焼酎に加工してもらう予定で、ハーブは錦のカフェなどで使ってもらっています。喫茶七番でも、錦二丁目で採れた素材を錦二丁目で使う『THE・地産地消』的なことをしていきたいですね。」
喫茶七番のイチオシメニュー
季節のフルーツにバニラアイス、プリンが一つになった定番のプリンアラモード。子どものときに食べた幸福感がよみがえります。数種類のフルーツと濃厚でしっかりとした味わいのプリンは満足感も十分です!
色鮮やかなミニサラダとドリンクがセットになったサンドイッチメニュー。サンドイッチはタマゴ、キャロットラペ、コロッケ、ハンバーグの中から好きなものが選べます。
写真はキャロットラペサンド。ニンジンはほどよいシャキシャキ感があり、ビネガーで爽やかな風味とクリームチーズの濃厚さがよく合います。ヘルシーながらもボリューム満点な一品。
パンにはバターが染み込んでいて、噛むたびにジュワ~っと香りが口いっぱいに広がります。
錦二丁目の歴史・カルチャーに触れられる憩いの場
喫茶七番へ行こう!
喫茶七番では、1階のオープンスペース「オリマチ広場」を利用し、平日はキッチンカー、休日はイベントを行うなどの催しをしています。今後は2階のレンタルスペース「スペース七番」なども活用し、さまざまなイベントを考案中だそう。
イベントのスケジュールや内容は公式サイトやInstagramなどで発信するそうなので、気になる方はチェックしてみてくださいね。
また、オリマチ錦のテナントにはこれから新しいお店が入ったり、10月には錦二丁目の通りにいろいろなお店が集まる「みちにわマルシェ」も開催される予定です。
喫茶七番を中心に、これからますます活気にあふれそうな錦二丁目エリアに期待が高まります。仕事帰りや休日に、足を運んでみてはいかがでしょうか。