名古屋市北区の下町で昭和29年(1954)から営業を続ける、老舗の銭湯「長喜温泉」(ながきおんせん)。
110℃超えの高温サウナとおよそ10℃の水風呂がサウナーの間で話題となっていて、注目度急上昇中です。日々番台に立ち続ける、おかあさんの笑顔にも癒やされます。
※2022年9月取材時の情報です
目次
スーパー銭湯の走り!?
下町のエンタメ空間
「下町の銭湯」と聞いて訪れた「長喜温泉」ですが、意外や意外。コインランドリーにカラオケ喫茶、焼鳥店まである「複合レジャー施設」といった表構に驚かされます。
なにはともあれ、2階にある銭湯に行きましょう。階段昇降機があるので、足腰が悪いお年寄りでも上がれます。
満面の笑みで迎えてくれたのは、女将の安藤芙美さん。「番台のおかあさん」としてみんなに愛される存在です。
現在はご高齢になられた芙美さんを、孫の井上美菜さんがサポートしています。いろいろお話をうかがうと、やはりカラオケ喫茶や焼鳥店も自社で経営されているそう。
「長喜温泉」は娯楽の要素もたくさん詰め込んだ、「スーパー銭湯の走り」かも知れませんね。
とはいえ分類上「公衆浴場」にあたり、大人460円で入浴できるからありがたい。サウナに入る場合は+100円。玄関で黄色いタオルを受け取りましょう。
脱衣所には常連さんの私物がたくさん置かれており、地域に愛される銭湯であることがよく伝わってきます。
名古屋で一番熱い!?ウワサのサウナ室へ
いざ、浴室へ!シンプルですが、うたせ湯や電気風呂、超音波風呂など「アトラクション系」もたくさんあって、ウキウキさせられます。
身体を洗ったらひとまず、「下茹で※」のために「高温風呂」へ。いわゆる「白湯」的なものがないので、とりあえず入ってみたのですがこれがまた熱い!
※サウナに入る前、発汗しやすいように湯で身体を温めること
よくよく見ると「43.1°C」を指し示していました(!)。そりゃ熱いわけです。「下茹で」のつもりが、しっかり茹でられそうになったので早めに退出。「名古屋で一番熱い」とウワサされるサウナ室へといよいよ潜入します。
サウナ室は8人ほどは入れそうな大きさで、銭湯のサウナのなかではかなり広いと言えるのではないでしょうか。昔ながらの遠赤外線型サウナで、ストーブから届く風は強烈!
温度はほぼ110℃!コンディションによっては115℃以上になることもあるそう。ちなみに女性のサウナも男性とほぼ同じセッティング。“本格派昭和ストロングスタイル”を求める淑女は、今すぐ「長喜温泉」に行ったほうがいいです。
ちなみに、後で井上さんにお話をうかがったところ、「130℃だった時代もあって、これでも落ち着いた方」とのこと。ひえー、勘弁してくれ。
みんな大好き、水風呂へ。110℃超えのサウナに耐えた後の水風呂が気持ちいいのは、書くまでもないので省略。
ちらっと上を見ると、水温は10.5℃!推定18℃(諸説あり)の地下水を、チラー(冷却装置)でさらに冷やしているそう。これはサウナ好きの心を理解しまくっているとしか、言いようがありません。
地下水を使ったこちらの水風呂は、身体にまとわりつくような水質が特徴。いたずらに冷たいだけの水風呂とはワケが違います。
微量の放射線を含み、身体にいいとされるラドン温泉も「長喜温泉」の魅力のひとつ。温度は40℃ほどと決して低くないですが、43℃の高音風呂や110℃超えのサウナを体験した後は妙に落ち着きます(脳がバグっている)。
外気浴ができる休憩スペースはないですが、こちらでラドンを吸入しつつリラックスすることをおすすめします。
風呂上がりも充実したひとときを過ごせる
風呂上がりはロビーでくつろげます。オロナミンCとポカリスエットを配合した「オロポ」は、サウナー御用達ドリンクとしてすっかり定着しましたが、「オロヤク」は珍しい!カップ氷とオロナミンCとヤクルトがセットになって300円です。オロポよりもやさしい味わいに感じられ、後日自宅でもマネしてみました。
もちろん、「オロポ」(340円)もありますよ!そして、各社のビールがそろってるのがすごい。さすが、元祖エンタメ系銭湯。
オリジナルグッズもたくさん販売。パーカー(4,367円)には、番台のおかあさんとマスコット犬・モナカ(左)とルーク(右)がかわいらしく描かれています。
いかにも「銭湯」といったド直球なデザインが印象的な、「スタッフTシャツ」は4,090円。両面にプリントされています(写真は上から表と裏)。
スペースの都合で、現在はネット上での販売のみとのこと(詳細は下記参照)。銭湯のロビーには見本がたくさん置かれているので、気に入ったものがあればサイズ感などをその場で確かめてネットで購入するのがよいでしょう。
https://suzuri.jp/Nagaki-onsen
湯質の素晴らしさの秘密は「薪」!?
改めて井上さんにお話をうかがいます。ウワサのサウナや水風呂はもちろん、銭湯の本質である「湯」が素晴らしかったことを伝えると、「ウチには“釜爺”がいるんで」と意味ありげ。
いったん銭湯を出て、ある場所を案内してもらいました。
そう。長喜温泉はボイラーが現役で、薪で湯を焚いているのです。暑いなか、「長喜温泉の釜爺」こと「ヤナさん」が、次々に薪を投入していました。
そういえば「複合レジャー施設」的な外観に驚いて見逃していましたが、角度によっては立派な煙突を見ることができます。
湯の質が素晴らしいと感じたのは薪で焚いているからなのか、そもそも地下水の質がいいからなのか。正直なところよくわかりません。
しかし、昔ながらを貫いて、現在まで銭湯が営まれていることに感動を覚えました。14時の開店を待ちきれずに15分前には集まってくる常連さんたちも、きっと変わらぬ銭湯ライフを長年続けているんだろうな、とも。
「サウナブームもあり新規のお客様が増えていて、とてもありがたいです。どちらかというと施設や設備の老朽化のほうが心配ですね」と最後に井上さんは話してくれました。
現在の営業スタイルを維持したまま、できる限り長く、「長喜温泉」がこの地で愛され続けることを願うばかりです。
女将、薪焚きの風呂、熱すぎるサウナ、冷たい水風呂―キーワード満載の「長喜温泉」でした。「湯は熱く、サウナは熱く、水風呂は冷たく!」という、「中途半端を断じて許さない」感もサウナーに刺さるポイントではないでしょうか。