森のアトリエで生み出される、作陶家・吉田直嗣さんの 黒と白の器。
目次
森との距離感に惹かれて。
今回は、アトリエ兼ご自宅についてもお話を伺いました。
– なぜこの場所にアトリエを構えたのでしょうか?
吉田さん:「実はもともとは妻の祖母の別荘があった場所なんです。築60年ほどの小さな平屋でした。僕が独立するタイミングで譲り受け、2年ほど前に建て替えをしたんです。
建て替えのタイミングで、伊豆・山梨・長野など周辺も探してみたのですが、なかなか気にいる場所が見つからず、やっぱりこの場所がよいのだと気がつきました。森との距離感が好きなんですよね。方角はあまり気にせず、森が正面になるような家にしました。なので、富士山に向かっての窓がひとつもないんですよ(笑)。」
ここからは、実際にレポートしていきたいと思います。
まずは器の制作を行っているアトリエ。一般的な陶芸の工房というと、作品を並べる棚がずらっと並んでいて閉鎖的なことが多いです。ですが、吉田さんのアトリエは日がたっぷりと入り、とても開放的。
アトリエからもお気に入りの森がしっかりと見えます。鹿やタヌキが遊びに来ることもあるのだとか。冬には銀世界が広がります。
自転車がお好きな吉田さん。吹き抜け部分には、愛車たちがディスプレイされていました。
庭にある小屋は、器を焼き上げる「焼き場」。建具や窓のガラスは、廃校になった小学校のものをリサイクルされてつくられました。よいアクセントになっています。
ご自宅にもお邪魔させていただいました。床から天井まで一面ガラス張りのリビング。まさに森を正面にした設計です。リビングの一角では、ドローイング作家である奥様の吉田薫さんが制作中でした。
自宅では、ご自身の器を使われている吉田さん。一番右のものは、奥様との共作シリーズ「cheren-bel(チェレンベル)」のもの。
中でも筆者が驚いたのが、こちらの照明スイッチとドアの取手。なんと吉田さんご自身がつくられたのだそう。ものづくりへのこだわりは、こうした細部にまで。
陶芸家の方というと、とても寡黙なイメージを抱いていましたが、とても穏やかな空気で出迎えてくださった吉田さん。最後は笑顔で最寄りの駅まで、私たちを送ってくださいました。さまざまな人々を惹きつける器には、こうした吉田さんの空気感がまとっているのだと感じました。
吉田さんの器は、都内を中心に年10回ほど開催される個展にて出会うことができます。ぜひ実際に手にとって、器のうつくしさを体感してみてくださいね。