みなさんは薬膳鍋を食べたことがありますか？

薬膳料理と聞くと、独特の香りがあってちょっと苦そうというイメージがありますが、そんな想像をくつがえす、体に良くてとってもおいしい薬膳鍋をご紹介します。

地下鉄東山線・名城線「本山駅」より西へ徒歩３分。ビルの２階にある、隠れ家のようなお店「薬膳ノザーク（Noah’s Ark ）」。以前同じ本山で営まれていた薬膳カフェが、2019年7月に薬膳鍋のお店としてリオープンされました。漢方スープに、薬膳と旬の食材がたっぷり入った薬膳鍋のお店です。

薬膳で痛みが和らいだという体験

とても気さくな印象の、オーナーであり薬膳コンシェルジュの小野功美子さん。薬膳との出会いや、ここに至るまでのお店のストーリーをお伺いしました。

– 薬膳との出会いを聞かせてください。

小野さん：「20代の頃から錦で飲食店を営んできました。ちょっと珍しいものに興味をそそられるところがあって。ある時、ふと漢方に興味が湧いて調べていたところに薬膳に出会い、これだ！と勉強をはじめたんです。」

小野さん：「症状によって服用する漢方とは違って、日々の生活に取り入れていきましょうというのが基本の薬膳。まずは薬膳茶から取り入れてみました。持病の痛みが緩和されてとても楽になったんですね。同じ持病の姉も痛みが緩和されたということもあって、これはいい！と実感、はまりました。そうして2018年5月に薬膳カフェをオープンしたんです。」

– 薬膳がライフワークとなったのですね。

小野さん：「そうですね。以前営んでいた薬膳カフェでは、薬膳ランチやかき氷、スイーツやドリンクなど、色々なメニューでお客さまに薬膳をお伝えしてきました。ご好評をいただき、朝から晩までよく働きました。そうしてある時身体をこわしてしまったんです。ドクターストップに近い状況ですよと言われ、辞めることも考えました。」

小野さん：「ただ、この薬膳鍋は本当にいいものだと自信を持っていて、ありがたいことにとても好調でした。残していきたいという思いが強く、悩みに悩んだ末にメニューを厳選して再出発しようと、2019年7月に、今の場所にリオープンしました。」

「ノザーク」とは、ノアの方舟のこと。信じるものに従い、大洪水にも沈まない舟をつくり、生命をつないでいくお話です。小野さんが20代の頃に「どんなことがあってもつぶさないように頑張る！」とつけた名前。形態を変えながらも、お店を大切にされている小野さんの信念を感じます。

いちばん身近な薬膳は、季節のものを食べること

– 薬膳とはどういったものなのでしょうか？

小野さん：「文字から、みなさん薬をイメージされやすいんですが、食事なんですよ。季節のものを食べるのがいちばん身近な薬膳。春は山菜・たけのこ・キャベツなどの食材が、冬にためこんだ不要なものの排出を促します。夏には利尿作用のあるウリ科の食材などがおすすめ、熱を冷まして不要な水分の排出を助けてくれますよ。」小野さん：「五行陰陽の思想を取り入れているので難しく感じられるかもしれないんですが、全く特殊なものではなく、旬のものを食べたりするのも薬膳なんですよ。」

※五行陰陽とは、中国で昔から大切にされてきた自然界の思想。風水や医学、占いなどでも用いられる。あらゆるものの性質を知ってバランスを図っていく、というような考え。

– ノザークのコンセプトを教えてください。

小野さん：「身体にいいものを取り入れてもらうことです。薬膳は、どうしてもお薬のようなイメージがあるので、実はそんなにハードルは高くないんですよということをお伝えしています。それと、ノザークの薬膳鍋は、ほかでは食べられないものなので、ぜひ食べてもらいたいです。」

身体にいいものをおいしくいただく

– こだわりを聞かせてください。

小野さん：「おいしいものを提供することです。スープに漢方を取り入れているので、苦いとか食べにくいものであってはならないと思っています。薬膳はいいものだと身をもって感じていて、勉強もしてきました。本当にいいものですよと、すごく伝えたい。初めての方には、必ず薬膳食材の詳しい説明をすることにもこだわっています。

ただ、おいしくなければ、たとえ身体にいいものであっても受けつけにくい。つくっている自分だけで、身体にいいんだと自己満足になってはいけないと思っています。「身体にいい」も大事だけど、「おいしい」も同じくらい大事。」

– 薬膳鍋をおいしくするのは難しくなかったですか？

小野さん：「難しかったです。いろんな人に食べてもらって、ダメ出しもありました。ありがたく受け止めて、その都度試行錯誤しながら改良し、自信をもっておいしい！と言えるものができ上がりました。」

病みつきになるリピーターさんも多くて、口コミで来られる方もいらっしゃるんだとか。

– 薬膳の効果とは

小野さん：「薬膳には、季節によって身体をあたためる食材や逆に冷やす食材を使いわけたりして、バランスのいい食事をとって、病気や不調を防いでいこうという考え方があります。冷え性・風邪・疲労・便秘などの改善も期待できます。

個人差はありますが、ノザークの薬膳スープ鍋・四物湯（しもつとう）は、期待できる効果に、女性にはとってもうれしい生理痛・生理緩和、更年期障害・冷え性・貧血改善、体に溜まっている毒素が排出されるなどがあります。人にもよりますが、便通がとても良くなる方もいれば、食べている最中からどっと汗が出る方もいらっしゃいます。

薬膳スープ鍋・十全大補湯（じゅうぜんたいほとう）は、免疫力アップが期待できます。病中・病後の体力が落ちている方、花粉症や新型コロナなどの風邪予防にもおすすめしたいですね。」