12月1日(金)公開の映画『隣人X -疑惑の彼女-』の舞台挨拶が、名古屋の『ミッドランドスクエアシネマ』にて開催!
舞台挨拶では、熊澤尚人監督、柏木良子役の上野樹里さん、笹憲太郎役の林遣都さんが登壇。熊澤監督との共演に関する感想や撮影中のエピソードなどたっぷりお話いただきました。今作について、「“自分がどう在りたいか?”ということを大切にしてほしい」と話した上野さんと林さん。最後の挨拶で二人が語った、今作への想いはとても深く、言葉のひとつひとつに、思わず心が震えました。
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■あらすじ
ある日、日本は故郷を追われた「惑星難民X」の受け入れを発表した。 人間の姿をそっくりコピーして日常に紛れ込んだXがどこで暮らしているのか、誰も知らない。Xは誰なのか?彼らの目的は何なのか? 人々は言葉にならない不安や恐怖を抱き、隣にいるかもしれないXを見つけ出そうと躍起になっていた。週刊誌記者の笹は、スクープのため正体を隠してX疑惑のある良子へ近づく。 ふたりは少しずつ距離を縮めていき、やがて笹の中に本当の恋心が芽生える。しかし、良子がXかもしれないという疑いを払拭できずにいた。 良子への想いと本音を打ち明けられない罪悪感、記者としての矜持に引き裂かれる笹が、最後に見つけた真実とは。
目次
“穏やかな空気感で撮影できた”
初共演を通して学んだこと
名古屋の『ミッドランドスクエア』で行われた、映画『隣人X -疑惑の彼女-』の舞台挨拶。会場内は多くの観客で埋め尽くされ、熊澤尚人監督、上野樹里さん、林遣都さんが登場した瞬間、会場は大きな歓声に包まれました。
名古屋生まれ、名古屋育ちの熊澤監督。冒頭の挨拶では、「名古屋の皆さんに観ていただけることがすごく嬉しい!」と“地元”での舞台挨拶に笑顔でコメント。また、上野さんと林さんからは、「ひつまぶし」「味仙」のワードが飛び出し、“なごやめし”トークで盛り上がりました。
– 今作が初共演となる上野さんと林さん。撮影はいかがでしたか?
上野さん:「撮影の合間に、遣都くん(林遣都さん)に、俳優になる前の想いなど色々なお話を聞かせていただきました。パーソナルな部分で接することができたので、そういった部分をお芝居にも反映できたと思います。物語の立ち位置として、良子からすると笹の存在は、“なんでこの人が私の近くにきているんだろう?”と違和感のある異質の存在。笹からすると、良子は“Xなんじゃないか?”という疑惑が拭いきれない関係です。でも、撮影の裏では、遣都くんとプライベートな話などをしっかりできていたので、自然と良い空気感で穏やかに撮影をすることができました」
林さん:「上野さんは本当に素敵な人。撮影が終わってからも、こうした舞台挨拶や取材を通して、樹里さんから色々学ばせていただいています。樹里さんは、心で人と仕事と向き合う方。インタビューでも、インタビューする人ときちんと向き合って、その人に伝えたいことを伝える。生き方も全部そう。僕はインタビューのときには事前に答えを準備して臨むことが多いので、“その人”の“心”と向き合って答える、ということを大事にしたいと思いました。今日の舞台挨拶も、今目の前にいる観客の皆さま、この空気感と向き合った状態から生まれた感情や言葉を大切に話していきたいと思いました」
上野さん:「監督は私と遣都くん(林遣都さん)のコンビネーションはどうなると思っていましたか?」
熊澤監督:「お芝居については上手いお二人なので、安心していました。二人が役に合ったセリフでアドリブを交えながら、演技をしてくれるのが見ていて楽しかったですね」
昔は熊澤監督のことが怖かった!?
10代の頃、林さんがつけた“あだ名”とは?
– 熊澤監督と上野さんは、映画『虹の女神 Rainbow Song』以来、17年ぶりの共演ですね。
上野さん:「今作は脚本・監督・編集すべてを熊澤監督が手掛けた、“生粋”の熊澤監督の作品です。17年ぶりに監督と濃い映画づくりができるといいなと思いました。私自身も36歳になって、劇中でも“36歳の良子さん”を演じていますし、監督と一緒に今作をつくることが出来て楽しかったです。」
上野さん:「あと、私と監督の熱量が同じだったんです。監督との打ち合わせで私が手書きで脚本に書き込んだ内容が、次の打ち合わせで反映されていて、またさらにその脚本に手書きで書き込んだことが、また次の打ち合わせで反映されていて。現場でもモニターを見ている監督の隣にいって、パッと監督の台本を見ると、バーッといっぱいメモが書き込んでいて、ものすごい安心しながらお芝居をすることが出来ました。打ち合わせからずっと、監督と時間を積み重ねさせていただいている感覚がします」
– 林さんも熊澤監督との共演は15年ぶりくらいでしょうか。当時は監督のことが怖かったと伺いましたが……(笑)
林さん:「『ダイブ!!』という映画でご一緒させていただきました。今も仲良くしている池松壮亮と一緒に出演させていただいた作品なんですが、その時の熊澤監督がすごく厳しくて……(笑)合宿所での過ごし方に対しても厳しくて、裏で監督のことを“鬼澤監督”と呼んでいました(笑)でも、その厳しさのなかに愛情があることを実感していたので、みんな監督のことが大好きでした」
熊澤監督:「同世代の男子がたくさん集まっている撮影現場だったから、どうしても修学旅行のような雰囲気になっちゃうんだよね(笑)だから、大人の役割として、“これ以上やったらダメだよ”って厳しく接しないといけない部分はありました(笑)」
林さん:「当時、監督は全員のお芝居と向き合ってくださいました。それから10年以上経って、監督に今の自分を見てほしいなと思っていたときに今回のオファーをいただいたので、すごく嬉しかったです」
– 撮影で印象に残っていることはありますか?
上野さん:「実は名古屋の食べ物が出てくるシーンがあるんですよ。監督が名古屋出身だから……(笑)」
熊澤監督:「“なごやめし”がさりげなく、意味のある形で登場しています(笑)」
林さん:「今作のロケ地が、僕の出身地の滋賀県なんです。自分の出身地で、しかも監督の作品の撮影をすることが出来て嬉しかったです。笹と良子のシーンを、僕が学生時代に過ごしていた場所で撮影したことがあったんですが、その場所が、当時、僕が学ランを着てよく歩いていた場所だったんですよね(笑)そんな場所で、今の僕は、撮影をしていて、上野樹里さんと休憩時間に並んでいる。この様子を、あの頃の自分に教えてあげたいなと感慨深さはありました(笑)」
偏見というフィルターを体感し、
一人ひとりの“心の在り方”を考える
– 最後にメッセージをお願いいたします!
熊澤監督:「今作は、笹憲太郎が“X探し”をするところから始まります。“Xは誰か?”となった瞬間に、無意識の偏見が生まれてしまう。それは皆さんのなかにも、生まれるものでもあります。この映画を観て、そういうときに生まれてしまう“無意識の偏見”と、皆さんだったらどう向かい合っていくのか?ということを、考えていただけたら嬉しいですし、それを描きたくて今作をつくりました。エンタメとしても面白い映画だけど、観たあとにも色々考えることができる映画だと思います。もう一回観てみると、違う角度で楽しめる映画だったりするので、観て、考えて、友人達と“私はこう思った”と話していただけたら嬉しいです」
林さん:「僕も観るたびに、色々考えさせられる映画です。最近、SNSが発達して、自分と人と比べたり、自分自身が“これでいいのかな?”と考えてしまう世界だと思っています。今作について取材を受けていたとき、樹里さんが「人に自分が“どう見られているか?という「自分の見え方」を、すごく気にしやすくなってしまう世の中。だけど、大切なのは、「自分がどう在りたいか?」というところを大事にしてほしい」と話していたのですが、その言葉に僕自身も勇気をいただきました。」
林さん:「僕自身、色んなことを気にしてしまう部分があります。自分らしくいた方が、心で人と会話できる。その方が楽だし、呼吸がしやすくなる。息苦しい世の中ですけど、自分のことを信じて、愛してあげて、自分らしくいるほうがすごく良いことがいっぱいあると思うんです。この映画には、そういう気持ちで生きている姿を見せてくれる登場人物たちがいます。そんなことを想いながら、観ていただけたら嬉しいです」
上野さん:「今日は本当に舞台挨拶に来てくださって本当に感謝しています。コロナ禍に今作のお話をいただきました。隣を見れば、周りを見渡せば、マスクで顔が見えなかったり、学生の子達は、入学して卒業するまでマスク。アルバムを見ても、本当の素顔が見えにくい世の中でした。色んな情報が素早く飛び交うことは便利になったと思うけど、本当に今自分が何を感じているかということを見逃しがちだったり、見失いがちになったりします。それと同時に、色んなことを考えることにも慣れてきてしまっています。でも、心の静寂を保つ時間も大事だと思うんです。自分の心に耳を澄ます時間とか、何にもなさそうで、すごく大事な時間だと思います。」
上野さん:「今作に登場する良子さんは、“なんでヒロインなの?”って感じがする人物ですが、笹は彼女を追っていくうちに、少しずつ心に変化が表れていきます。皆さんもこの劇場で、笹と一緒に良子さんを追っていきながら、自分の心のなかにある“偏見”という“フィルター”を体感して、楽しんでいただきたいと思っています。
そして、“この映画が伝えたいことはなんだろう?”、“あのシーンから私はこんなことを感じた”など話していただきたいです。引っかかるポイントは人によって違うと思います。偏見だけでなく、概念とか常識もそうだけど、“多数の人が同じ意見だから、それが正解”だということが、まかりとおっている世の中です。“本当にそれでいいのだろうか?”とか、“世の中は誰が動かしているのだろうか?”とか、一人ひとりの“心の在り方”というのを考えていただけたら嬉しいです。この世界を作っているのは自分自身、そして、隣にいる大切な人だということを、映画を通して体感していただきたいと思います」
熊澤監督、上野さん、林さんの3人が楽しげに撮影を振り返る姿が印象的だった舞台挨拶。笑顔に溢れた会話の節々には、お互いに対する“信頼”を垣間見ることができました、
最後の挨拶中、「自分で話していて、泣きそうになっちゃった……」とやや言葉を詰まらせた上野さん。私も同じく、上野さんの言葉に強く心を打たれ、思わず涙ぐんでしまいました。
上野さん曰く「多数の人が同じ意見だから、それが正解”だということが、まかりとおっている世の中”では、その意識をもつことが難しいときもあります。そんなとき、林さんと上野さんが口にしていた、“自分がどう在りたいか?”と考えることが、熊澤監督が述べていた、“「無意識の偏見」と、どう向かい合っていくのか?”という問いの答えに繋がっていくように思いました。
映画『隣人X -疑惑の彼女-』は、12月1日(金)より、ミッドランドスクエアシネマほかにて公開です。
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