自然と共に再生・循環する衣服「とわでざいん商店」
目次
出会いを経て独立へ
tomiさんが初めてショップオーナーとなったのは23歳。大須にあったヘンプ麻に特化した衣服専門店「麻芽(まめ)」でのアルバイトをきっかけに、当時の同店オーナーから「独立してみないか」と話を持ち掛けられたそう。
-「麻芽」との出会いを教えてください。
tomiさん:「きっかけは、FUJI ROCK FESTIVAL(フジロックフェスティバル)でした。ゴミの分別支持のボランティアとして応募したのですが、宿泊もついているし、条件がいいなと思いながら参加しました。
FUJI ROCKは当時から環境問題について積極的に取り組んでいて「世界一きれいなフェス」と呼ばれていました。「エコ」というキーワードが世に広く出始めたころだったと思います。
ボランティアの先輩たちと話をする中で、環境問題に関する情報をたくさん得る機会が生まれました。当時は、ファッションの製作を行う際、生地を買って、使って、捨てていました。でも、FUJI ROCKを通し意識が変わっていきました。
FUJI ROCK後も、環境問題に関連するイベントには注目していて、愛知県で開催されたアースデー名古屋に参加しました。そこで「麻芽」に出会いました。」
-「麻芽」と、環境問題はどのようにリンクしていますか?
tomiさん:「麻芽」はヘンプ麻に特化したカジュアルブランドなどを取り扱うお店で、衣服の他にネパールヘンプなどの麻の糸を使った雑貨や食用ヘンプシードなども扱っていました。麻って、すごく優秀な植物って知ってますか?
害虫に強い植物で栽培に農薬や化学肥料が不要なうえ、100日間で採取できるまで成長し、収穫後は根から穂まで余すことなく活用できます。例えば、種は食品や化粧品として、茎は繊維や燃料として、根は土壌改良剤として浄化の作用があります。
環境に負担が少なく、私たち人間にとってメリットが多いということで、自分の興味関心と一致することもり「麻芽」でアルバイトをはじめました。」
-「麻芽」のアルバイトを経て、ショップオーナーとして23歳で独立されたんですね。
tomiさん:「当時のオーナーから独立の話を持ち掛けられ悩みました。思ってもみないことだったし、自分にできるのかって。でも、友人に相談するたびに「やったら」と口をそろえて言われました。こんな機会はそうそう巡ってくるものではないと。
確かに考えてみると、万が一上手く行かなくて借金まみれになっても、5年後で28歳。なんとかなるんじゃないかと思い、承諾するに至りました。
1階はショップとして自分がつくった服や仕入れた服を販売しながら、2階はギャラリー兼ライブハウスとして月12本ライブを開催しまいした。30歳でショップを終わりにするまで、幅広くいろいろな人と知り合うこともでき、わたしの財産になっています。」
-30歳で「麻芽」を閉めたのと同じタイミングでご自身の「toi designs」を立ち上げられたんですね。
tomiさん:「30歳の時、ひつじ年でした。元々ひつじに惹かれるところもあって、なんだかちょうどいい区切りだなと。ひつじも毛を活用出来たりと、ハイブリッドな動物なんですよね。そういうところもあって好きなのかも。
「toi designs」は、「旅する服屋」として店舗を持たない形で立ち上げました。海外でのファッションショーの予定も既に入っていたので、能動的に活動を行えるのも店舗がないメリットかなと思っていました。」
-その後、2017年に「とわでざいん商店」をオープンされたんですね。
tomiさん:「元々、東山公園の近くにアトリエがありました。たまたまいい物件があるという情報を入手したのがきっかけで、アトリエ兼店舗をオープンする流れになりました。」
一人でも多くの人に届け、つながる
-今後の展望を教えてください。
tomiさん:「どんなことも伝えなければ始まらないと考えています。お店に足を運んでくださった方と会話の中で商品に込めた想いをお伝えする。
大地から受けた恵みである作物(布)を、紡ぎ・大切に着て、最後は土に還す。すべてのモノが有限です。循環と再生の流れをつくる必要性を強く感じています。
きっとどこか頭の片隅にでも残っていれば、「toi designs」が発信するメッセージが広がっていくのではないかと。
また、「とわでざいん商店」としてセレクトする品々は、現地で育った自然な素材が活きる衣服や、フェアトレードなど、循環する仕組みが整った、人と環境にやさしいものばかりです。
例えば、ランチで食べる食材も、それを収穫し加工する人がいます。その人は、地球の裏側にいるかもしれない。自分が生きる社会と地球は全てつながっていると認識しながら生きていく意識を広げていきたい。」
今回の取材を通じて「循環する」意味を学びました。植物や動物など命あるものから布や毛糸をいただき、大切に身に着けた後、また土へ還る。そして再び、わたしたち人間が恵みを享受する。
なぜ農薬を使わないのか、なぜ化学繊維を使わないのか。それは、一度きりで使い捨てないために通らなくてはならない選択だからだと気付かされました。
大切に長く活用するほど、「消耗」から遠ざかり、人だけでなく地球に住むすべてのものと調和しながら優しい生活を送ることができるようになるということだと理解しました。
いきなり日常生活すべてを変化させることは難しいかもしれません。でも、頭にふと「循環」という言葉がよぎる時、「捨てない選択」「再利用する選択」をしていきたいと思いました。
tomiさん、ありがとうございました!