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今回ご紹介するのは、清須市で活躍されている「ttyokzk ceramic design(タツヤオカザキ セラミックデザイン)」のセラミックデザイナー岡崎達也さん。ちょっとした遊び心と、使う楽しみがあり、普段使いの道具として普通に使えるプロダクトをモットーに活動されています。
写真の、ころんとしたリンゴと洋なし。一体なんだと思いますか?今年の春に清須市はるひ美術館にて個展をされていたので、見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。こちらは、シュガーポット。ニューヨークのMoMA Design STOREでも取り扱われている岡崎さんの代表作です。
デザインをはじめられたきっかけや、各商品のこだわりなど、たっぷりとご紹介していきます。
偶然訪れた、陶芸との出会い
まずは、デザインをはじめられたきっかけについてお話を伺いました。
岡崎さん:「実は陶芸をはじめたのは偶然なんです。小さい頃から、絵を描いたり工作が好きだったので、漠然とデザインをやりたいと思っていました。本当はデザイン系の専攻を目指していたのですが、第一志望の大学に受かることができず、たまたま合格したのが愛知県立芸術大学の陶磁専攻でした。
ですが、いざ陶芸をやってみると、とてもおもしろくて夢中になっていきました。大学では、ろくろの使い方・絵付け・素材のことや窯のことなど、陶磁器に関する基本的なことを学びました。この頃は今のようなプロダクトデザインというよりも、自分の作品をつくりたい!という気持ちが強かったですね。」
こうして、陶芸の道に進みはじめた岡崎さん。「ttyokzk ceramic design」を立ち上げるまでには、さまざまな困難がありました。
岡崎さん:「大学卒業後は、土岐市の陶器メーカーに就職しました。デザイン職として就いたのですが、デザインを考えるのではなく、依頼を受けてのサンプルづくりがメインでしたね。ですが、素材のこと、釉薬のことなど工場でしか接することのできない、さまざまな企業さんを知れたのは、良い経験だったと思います。
その後は、岐阜市の駅ビルにある、陶芸教室に工房が併設している施設で働きました。本格的に自分の作品をつくりはじめたのは、この頃から。当時は作家志望が強かったので、給料が低くなっても、生活が苦しくなっても、自分の作品をつくりたいという一心でした。」
そんな岡崎さんですが、少しずつ気持ちに変化があらわれはじめます。
岡崎さん:「勤めていた施設が、工房でつくったものをすぐに店頭で販売できるという環境だったんです。”つくって売る”ということを体験した瞬間でした。それまでは、”自分がつくりたいものをつくる”という作家の意識が強かったのですが、お客さんに買って使ってもらえる商品を提案したいという意識に変わっていました。僕が、作陶家ではなくセラミックデザイナーとしてものづくりをはじめた原点ですね。」
2004年に岩倉市にて工房を立ち上げ、作品づくりを続けた岡崎さん。
岡崎さん:「でも実は、30歳のときに一度辞めようと思ったこともあるんです。結婚したいという気持ちもあり、派遣に登録して就職活動をしました。けど、どこに行っても「何もできないじゃん」と言われてしまって……。それに、陶芸をしているとやっぱり楽しいんですよね。自分は他のことは何もできない。やっぱり陶芸が好きだなと痛感しましたね。」
こうして2007年には高校や大学での非常勤講師もはじめられ、2011年に清須市に工房を移転されました。