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名古屋市営地下鉄「伏見駅」から徒歩5分、オフィス街に佇むビアバー・BRICKLANE(ブリックレーン)。バンズもパティも店内で手作りするこだわりのハンバーガーと、海外の樽生クラフトビールが楽しめる人気のお店です。
アメリカから直接輸入しているクラフトビールは、入荷情報をSNSで発信すると数日中に売り切れてしまうほど人気の銘柄も。季節によって仕入れるビールも違うため、何回訪れても飽きることはないお店です。
ブリックレーンのオーナー・森田純矢さんは、ほかにもUsed like new beerの店舗運営、オンラインショップでクラフトビールの販売を行うほか、名古屋のクラフトビアマップを毎月発行するなど幅広く活躍しています。そして今は自社のブルワリーを立ち上げるために奔走中だとか。
今回はブリックレーンの魅力や今後の展望について、森田さんに詳しくお話を伺いました。
常時8〜9種類の樽生クラフトビールが味わえる
BRICK LANE
-ブリックレーンをオープンした経緯を教えてください。
森田さん:「ブリックレーンは2014年7月に開店しました。私はもともと東京のブリティッシュパブで働いていたのですが、結婚して妻と友人とお店をやりたいなと話していて。そして、自分が愛知県出身ということもあり、名古屋でお店を出したいなと思ったことがきっかけですね。
これまでずっとビールに携わっていたので、クラフトビールのお店がいいなと考えていたのですが、当時の名古屋には海外のクラフトビールが飲めるお店が少なかったことに衝撃を受けました。でも、少ないからこそ伸びしろがあると感じ、開店を決意しました。」
-開店から7年が経ち、現在はクラフトビールのお店が増えたと感じますか?
森田さん:「そうですね。私たちは毎月『名古屋クラフトビアマップ』を作成しているのですが、2015年の発行当初は8店舗だったのが今では28店舗まで増えています。」
アメリカへ渡り直接交渉!
クラフトビールへのこだわり
-ブリックレーンで提供するクラフトビールにはどのようなこだわりがありますか?
森田さん:「ブリックレーンでは海外のクラフトビールを主に扱っていて、鮮度がよくて品質にも信頼のおけるものを厳選しています。時期によって入荷する銘柄も違うので、人気のあるビールだと1日で売り切れてしまうこともありますね。
直接輸入しているビールはアメリカの西海岸と東海岸のブルワリー2社で、実際にアメリカへ行って自分で交渉しました。」
-直接交渉!?すごいですね。
森田さん:「2016年くらいにニューイングランドIPA・ヘイジーIPAというスタイルがアメリカの東海岸で生まれたのですが、私たちはその情報をSNSでしか知ることができなくて。ずっと興味があったので、実際にアメリカへ渡りニューイングランドIPAを作っている会社へ連絡しました。しかし、当時は現地でも新しいスタイルのビールとして人気が上がり始めていたところだったので、地元で消費するだけでなくなってしまうことが多かったのです。それでもいろんな会社に連絡し、なんとか取引まで持っていくことができました。」
-ニューイングランドIPA、ヘイジーIPAはどのような特徴があるのでしょうか。
森田さん:「もともとIPAはアメリカの西海岸で造られていました。ホップをたくさん使って苦味と柑橘系の香りを出し、クリアな色合いが特徴です。これに対し、オリジナルのIPAを作ろうとして東海岸で生まれたのがニューイングランドIPA・ヘイジーIPA。従来のIPAではご法度とされる『濁り』がかなり強いため見た目にインパクトがあります。また、ホップを多く使うIPAよりもさらに大量のホップを使って性質を調整し、苦味をかなり抑えてジュースに近いような味わいやフレッシュさが特徴です。そのためニューイングランドIPAは賞味期限が短く、取り扱いも慎重に行わなければなりません。
ビールは冷蔵状態で空輸で運送し、中部国際空港に到着したものは自分たちで取りに行き、店(冷蔵庫)まで運んでいます。」
ブリックレーンでは常時8〜9種類のクラフトビールがあり、サイズはHlaf(ハーフ:270ml)、Medium(ミディアム:350ml)、Pint(パイント:473ml)から選べます(※)。また、いろんなビールを少しずつ楽しみたい方は好きなビールが4種類選べる「テイスティングセット」(1,550円・税込)がおすすめです。
※ビールにより選べるサイズが異なります。
写真のビールは左から順に以下のラインナップです。(2021年7月末撮影)
① Nectarous/Four Winds(スタイル:ドライホップドサワーエール)
ピーチやパイナップル、パッションフルーツなどを思わせるさわやかで華やかなビール。サワービールでありながら飽きずに飲み続けられてホップを感じる絶妙なバランスが特徴です。
② TOPCUTTER IPA/BALE BREAKER(スタイル:IPA)
パインやレモンのようなさわやかな香りと透明感がありシャープな味わいが魅力のビール。ほのかな酸味と松のようなねっとりとしたうまみ、ほどよい麦芽の香ばしさがあります。苦味は鋭く、全体的にキレがあるIPA。
③ TOP ROPE/2SP BREWING COMPANY(スタイル:ヘイジーIPA)
ニュージーランドホップのラカウ、モツエカを使ったヘイジーIPA。力強くもフルーティ、スムーズな飲み心地が特徴です。
④ RISE UP STOUT/EVOLUTION CRAFT(スタイル:カリビアンスタイルスタウト)
ブルワリーの地元メリーランド州にあるライズアップコーヒーで煎られたコーヒー豆をビールに浸し、コーヒーの風味を加えたスタウトビール。しっかりとしたボディとリッチでフルーティな香りが特徴です。
バンズもパティも自家製。
食べごたえ抜群の絶品ハンバーガー
-ブリックレーンはハンバーガーも好評ですが、どんなこだわりがありますか?
森田さん:「ハンバーガーのバンズはすべて自家製で、店内で仕込みから焼き上げまで行っています。発酵具合に気をつけながら、パティの歯ごたえと相性がいい固さに仕上げていることがこだわりですね。牛肉100%のパティも自家製で、ほんのり甘めのバンズと肉本来のうまみを楽しんでもらうためにソースもあえて使っていません。」
ハンバーガーはアボカドやチリミート、サルサソース、ベーコン、チーズなどさまざまなトッピングも可能。オリジナルのお気に入りバーガーを見つけてみては。
また、ハンバーガー以外にも野菜を使ったあっさり系おつまみからチキンやソーセージなどのガッツリ系おつまみまで豊富なフードメニューもあります。一人でもグループでも、利用しやすいお店ですよ。
気軽に立ち寄れるボトルショップ
USED LIKE NEW BEER
−亀島駅(名古屋市営地下鉄東山線)の近くの「ユーズドライクニュービア」はどのようなお店ですか?
森田さん:「こちらのお店は2017年にオープンしました。ビールの輸入を始めると倉庫が必要になり、同時に以前からボトルショップも開きたいと思っていたので、両方の役割を兼ねるこの店舗を作りました。ブリックレーンのような飲食店でクラフトビールを飲むことって、なかなか日々のルーティーンにはしづらいですよね。私はなるべく日常に沿ったビールの提案をしたいなと感じていたので、こういうスタイルがちょうどいいかなと思いました。
ユーズドライクニュービアでは、主に国内のクラフトビールと手作りサンドイッチを販売しています。持ち帰りだけでなく、イートインも可能です。」
−ビールは何種類くらい販売していますか?
森田さん:「だいたい80種類くらいのビールを並べています。国内のブルワリーで応援したいところや、まだまだ知られていないところも多いです。なのでクラフトビールが好きな人はもちろん、詳しくない人でもラベルのデザインで選ぶ楽しさもあると思います。」
−わくわくする見た目のサンドイッチや話題のマリトッツォもおいしそうです。
森田さん:「サンドイッチのパンはブリックレーンと同じレシピで、少し甘めなパンに仕上げているのが特徴です。具材も店内で調理していますよ。サンドイッチは時期によって種類が変わるため、新作はインスタグラムでチェックしてもらえればと思います。」
これまでのノウハウを生かし、
クラフトビールの醸造に挑戦!
-今後、新しい取り組みや挑戦していきたいことなどありますか?
森田さん:「実は、2年半くらい前から自社ブルワリーを立ち上げるプロジェクトが動いているんです。これまでいろいろな問題が発生して後戻したり行き詰まったりしましたが、やっと軌道に乗せられそうなところまできました。」
−造ったビールはブリックレーンでも飲めるようになりますか?
森田さん:「もちろんその予定です。ビールを造る醸造長は現在アメリカのブルワリーで勉強をしていて、早ければ今年の冬から醸造を開始し、来年からビールを提供できるかもしれません。自分たちのビールができたら、まずは恩返しイベントを開こうと思っています。」
−恩返しイベントとはどういうものでしょうか。
森田さん:「新型コロナウイルスの影響で、私たちのお店も大きなダメージを受けたときにサポートしてくれた人たちへの恩返しです。去年、最初の緊急事態宣言が出たころは保証金や協力金とかの話もなく、ビールの輸入もできなかったので売上が大きく減ってしまいました。そのときに、サイトで半永久的に使えるお食事券を販売すると、全国から多くの人が購入してくれて、とても助けれました。お食事券と一緒に『自分たちのブルワリーができたらイベントを開催します。このステッカーを持っていれば誰でも招待できます。』というメッセージとステッカーも送ったので、その約束を果たしたいですね。」
−多くの人に支えられてきたのですね。ブルワリーで造るビールはどのような種類を想定していますか?
森田さん:「これまで私たちが輸入していたようなビールを考えています。ニューイングランドIPA・ヘイジーIPA系のビールと、フルーツをたくさん使ったサワー系のビール、ウイスキーやワインの樽に寝かせて熟成させるビールの3つです。」
−最後に、自社醸造のビールのコンセプトや思いを教えてください。
森田さん:「クラフトビールではよく地元の食材を使ったり、地域ならではの特色を生かしたビールを造ることが多いのですが、私たちはそうではなく、世界で戦えるブルワリーを目指しています。ブルワリーは長久手市(IKEAの後ろあたり)に設立しますが、ローカル色を全面に出すというよりは、世界で人気のあるブルワリーが自分たちの地元にあるというプライドが持てるような、ブルワリーのブランドをしっかり築いていきたいなと思っています。ビールに関しては輸入から販売・店舗運営まで行ってきたので、ビールのマーケットやどんなラベルが売れるかなど多くのことを学んできました。これまで積み重ねてきた経験や知見を生かしながら品質にこだわり、集大成となるビールを造っていきたいと思います。」
−森田さん、貴重なお話ありがとうございました!