名古屋でまた一つ、本格的な南インド料理が味わえるお店「南インド食堂チェケレ」が、2023年3月、新栄にオープンしました。店主の中島さんは、あの人気南インドレストラン「エリックサウス名古屋店」のオープン時から店長を務めてきた経歴の持ち主です。
エリックサウスで店長を務める前から抱いてきた「自分の店を持つ」夢を叶えた中島さんに、料理のこだわりやおすすめメニューを伺いました。
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お店は地下鉄東山線「新栄町駅」から南に徒歩3分ほどの、広小路通りに面した場所にあります。喫茶店と餃子の王将の間にある、水色の扉が目印です。
店前の看板には「NO NAN」の文字が。「カレー=ナン」と思っている方も多いので、お店に入る前にしっかり掲示しています。南インドはお米が主食で、ナンは一部のレストランでしか見かけません。
階段を上がって2階が店舗です。
「チェケレ(Chekele)」という店名は、音楽好きな中島さんが、南インド出身のロックバンドの曲名から取ったそうです。チェケレはケララ州の古い言葉で「夕焼け」という意味で、店内の壁は東が青空の青、西が夕日のオレンジを表しているんだとか。
テーブル4つとカウンター6席の店内は、インドの小物で飾られています。
サラリーマンから飲食の世界へ
一歩踏み出せたのは妻の後押しがあったから
もともと料理好きだった中島さんですが、最初からインド料理が好きだったわけではなかったと言います。
中島さん:「むしろ妻の方がエスニック料理が好きでしたね(笑)けれど、次第にスパイスを使った料理に興味を持つようになっていき、スパイスといえばという感じで自然とカレー作りの方に向かっていきました。」
料理への熱が高まり、中島さんはサラリーマンを辞めて飲食店でアルバイトをはじめました。最初はさまざまなアジア系のお店で働きつつも、インド料理店で働くチャンスをうかがっていたそうです。
中島さん:「インド系のお店は、ホールは日本人でもキッチンは現地の人だけというスタイルが多くて、なかなか働けなかったんです。でも、そんなとき『名古屋にエリックサウスが進出する』という情報が入り、バイト募集もはじまっていないのに『働かせてください』と直接会社に連絡したんです。」
こうして、エリックサウス名古屋店のオープン時から店長として勤務。約7年間店長や責任者を勤め、店舗運営のノウハウを学びました。
中島さんは、サラリーマンを辞めて飲食の道に進めたのは妻の応援があったからこそだと言います。
中島さん:「ずっと飲食をやりたい思いはあったのですが、やっぱり生活や給料の面を考えるとなかなか踏ん切りがつきませんでした。そんなときに、妻が『そんなこと言ってたら、いつまでたってもできないよ』と言って後押ししてくれたんです。」
こうして、いくつかの飲食店でのアルバイトからエリックサウスでの経験を経て、夢だったお店を夫婦で作りました。
「自分の店を持つときは、パロタを出したい」
チェケレは、南インドで食べられる「パロタ」というデニッシュのようなパンを出す名古屋でも珍しいお店です。中島さんは「いつか自分の店を持つなら、パロタを出したい」と思っていたと言います。
中島さん:「当時、頻繁に通っていたスリランカ料理のお店でパロタを食べたのがはじまりです(「パロタ」という名称は地域によって違うものの、南インドやスリランカで食べられているもの)。名古屋で食べられるところは全然なくて、いつかこれをやりたいと思っていたんです。」
中島さんは、インド現地でもパロタの作り方を学びました。
中島さん:「パロタは生地を作って、折りたたんで層を作って、焼いて……と、とても手間がかかります。最初は『これ本当にお店で出せるの?』と思うくらい、1個作るのに時間がかかっていました。インドでも地域や店によってさまざまな作り方があります。私も今ではよりサクサク感を出すために、現地の製法にならいながらも、少しオリジナルな方法も取り入れて作っています。」
チェケレおすすめメニュー
個人が経営するお店としては、メニュー数が豊富なチェケレ。そこには、中島さんの「選ぶ楽しさを提供したい」という思いがつまっています。
その中でも、特におすすめしたいメニューを中島さんに伺いました!
工夫を加えてサクサク食感にこだわった「パロタプレート」
中島さんイチオシは、やはりパロタプレート。パロタ2枚か、パロタ1枚&ハーフライスが選べますが、ライスとのセットが人気です。ライスは、インドのバスマティライスと日本米をブレンドしています。
選べる「お好きなカレー2種」と「本日の菜食料理」のセットです。
この日は、左からゴアプロウンカレー・マドラスチキンコランブを選び、菜食料理はオクラの料理でした。
エビカレー「ゴアプロウンカレー」はココナッツミルクの甘みとトマトの酸味がきいていて、さらにエビのうまみが感じられる一品。チキンカレー「マドラスチキンコランブ」は、フェンネルシードが入っているので、爽やかさも感じつつ「ザ・定番!」といったパンチのある味わいです。
これらのカレーと、サクサク・もちもちのパロタを一緒に食べるのがたまりません!パロタは食べた瞬間はサクサク、その後はもちもちとした食感で、食べていて楽しいものでもあります。パロタはインド現地だと油たっぷりですが、チェケレは油控えめなのもうれしいポイントです。
選べるカレーは2~3週間ごとに変わります。気に入ったカレー目当てに来る常連さんもいるそうですよ。
名古屋でパロタが食べられるお店は本当に珍しいので、チェケレでぜひ食べてみてください!
クリスピー感のある生地が決め手!「マサラドーサ」
ドーサとは、米・豆を発酵させた生地をクレープ状に焼いたもので、南インドでは朝食の定番メニューです。発酵した生地はやや酸味があり、暑い時期にぴったりです。
くるっと巻かれた生地の中には、ポテトマサラ(スパイスで味付けされたじゃがいも)が入っています。
ドーサと一緒に、野菜と豆が入った酸味のあるスープ「サンバル」と、トマト・ココナッツチャトニをつけながら食べます。
ドーサのポイントは、なんといっても生地!チェケレでは、クリスピー感を出すためにウラド豆とチャナ豆(ひよこ豆)をブレンドしています。サクサクの生地とサンバルやチャトニとのコンビネーションで、最後まで飽きずにぺろっと食べられますよ。
スパイスの香りが爽やか!「自家製クラフトコーラ」
シナモン・クローブ・スターアニスなどのスパイスを使った自家製クラフトコーラ。この色は、砂糖を煮詰めてカラメル状にしたもので、自然の色合いです。さらに、チェケレではインドの「ジャガリー」という砂糖を使用しているのがポイント。
飲んだ瞬間、爽やかなスパイスの香りがして、口の中がさっぱりしてカレーにも合います!実は、コーラは苦手だった筆者ですが、チェケレのコーラはとてもおいしく、飲み干してしまいました。
中島さん:「ある程度リーズナブルな価格でメニューを多く用意して、お客様に選ぶ楽しさを提供したいと思っています。コアなインド料理好きの方はもちろん、あまりインド料理になじみのない方など、より多くの人に南インド料理を楽しんでほしいです。」
ご夫婦のこだわりがいっぱいつまった温かいお店、チェケレ。ぜひ足を運んでみてくださいね。