まずは一度食べて欲しい。味の保証はあたりまえ、プラスアルファの驚きで豊かな時間を。サクっとした食感のコルネ専門店「cornerco」
目次
持続可能な個人店
パティシエとして経験を積まれた山下さん。コルネ専門店をオープンするに至った経緯をお伺いしました。
– お店を出すきっかけになったでき事を教えてください。
山下さん:「サラリーマンとして働く自分はしっくりきませんでした。一番興味のあることを自由にやりたかった。実家が商売をしているのですが、母の影響もあり、食べるものをつくることに興味をもちました。」
-お母様からはどのような影響を受けられたのですか?
山下さん:「実家は住居兼店舗で、ずっと母が家にいる環境でした。4人兄弟ということもあってか、お金を使わず、安心して食べられるよう、お菓子も手づくりで。
母は料理やお菓子づくりが好きなんです。マドレーヌや、誕生日の日のケーキなんかもつくってくれていました。外で買ってきて食べた記憶は一度もないですね。
はじめは母がキッチンに立って調理する様子を見るだけだったのですが、だんだん手伝うようになって。そのせいか、自分もつくることに興味を持ちはじめました。
なにより、当時から「お店を出す時はここがいい」とか、「どのエリアにはどういう嗜好の人が住んでいる」など、母から聞いていました。そういう商売目線のようなものも、母から影響を受けているのかもしれません。」
-どのようにコルネ専門店というコンセプトができたのですか?
山下さん:「10年間務める間、色々と見てきました。ケーキ屋で修業をすると、その後はケーキ屋で開業するのが一般的ですが、ケーキ屋というビジネスモデルには疑問がありました。
開業した先輩に話を聞いた中で、従業員を雇うことは特に大変だという話が印象に残っていて。
ケーキ屋のショーケースいっぱいに商品を並べるには一人でやるには大変。人を雇うと、給料を払う必要があるということ。
また、雇った人は、自分の技術を高めたいという意欲がある。ステップアップするために、慣れたころ違うお店へ巣立っていく。従業員に教える時間は必要だけど、教えた技術を活かしながら自分のお店で働き続けてもらうことは難しい。
そういった面で、わたしが思い描いていた、自由度が高い個人店を開業するためには、一貫して一人でできる何かを考える必要があると思いました。目先を変える必要があると。」
山下さん:「商品については、馴染みのあるものがいいなと思っていました。でも、馴染みがあっても、シュークリームや、ロールケーキ、チーズケーキ、タルトは珍しさがない。でも、めずらしくても伝わりにくい商品だと難しいんです。
人と同じことをするのが好きじゃないので、なにか違うことをしたいなと言うのもありました。」
-ロジカルな視点もお持ちなんですね。
山下さん:「商売に対してシビアなんです。売り上げがないと食べていけませんから。
修業時代、静岡にある個人店で1年間働いたことがありました。東京から地元に戻ってきたパティシエの方が新規でオープンされた店舗です。小ぶりで、こだわりが強いケーキを販売していました。
既存の地元店の売り上げを超えると、意気込んではじめましたが、なかなか地元の人に浸透しない。
その時に、こだわりが強くても、お客さんに味わって喜んでもらえなければ商売をする意味がない、成り立たないと、強く実感しました。」
-実際にオープンされて、生活はいかがですか?
山下さん:「開業当初は、開店前や閉店後を使って仕込みなどの作業をしていました。お店が開いている時間は、お客さんの為に最大限使いたかった。
でも、それだと、自分の時間がない。明け方に出勤して、閉店後2-3時間して帰宅する日が続きました。体力的についていけなくなります。
やはり、個人店なので頼れるのは自分だけ。長く一人で続けられるスタイルを見つけられるよう、店舗のオペレーションを何度も試行錯誤しました。今は、10時のオープン前に出勤して、18時に閉店した後はちょっとして帰宅しています。今の方が集中して仕事できているかな。
人生は仕事だけじゃない。仕事だけになりたくないんです。自由に、仕事以外も楽しめる生活が一番ですね。」
今後について
-今後、どのようにしていきたいですか?
山下さん:「今のスタイルを維持していきたいと思います。一人でやっていると、自由もあるけど、限界もある。その限界を覚悟してはじめた仕事です。
おかげさまで、開業3周年を迎えることができ、お客さんにコルネを伝えられてきたのかなと感じる部分もあります。これからも商品のクオリティーを保ち、安心して食べてもらいたいなと思います。
駐車場がなくて不便だな、と言う率直な想いですが、覚王山の駅を利用する際や、お店の近くに来る機会があれば、「cornerco」に立ち寄って欲しいです。一度は、食べて欲しい。
スイーツはあくまで嗜好品、毎日食べる人は限られています。でも、ちょっとした時間を豊かに過ごすことができる、そんなお菓子を届けていきたいです。」