世界に一つだけのインテリア「手織ラグの店 クラフトワーク」|覚王山
2019.1.30
覚王山日泰寺の参道沿いに店舗を構える「手織ラグの店 クラフトワーク」。店主の安藤ラミンさんが、現地で直接買い付けた美しいキリムやギャッベなどのペルシャ絨毯が並びます。
今回は「キリム・ギャッベ・ペルシャ絨毯の違いはなに?」「選び方のコツ」など、素朴な疑問から、ラグにまつわる深い話までお聞きしてきました。
お店があるのは、覚王山駅1番出口から徒歩5分ほどの場所。日泰寺の参道沿いにあります。
ペルシャ絨毯の世界に魅せられて
-イラン出身のラミンさん。なぜ、覚王山にお店をオープンすることになったのでしょうか?最初に、お店の経歴をお聞きしました。
ラミンさん:「私がギャッベに出会ったのは、日本のデパートで見たことがきっかけです。私はイラン出身ですが、自分の国の民族たちがギャッベをつくっていることを知らなかったんです。そこから、どんどんキリムやギャッベといったペルシャ絨毯の世界にのめりこんでいきました。
次第に、イランの伝統を日本人に少しでも知ってもらいたい!そんな想いから、妻とともに徐々に仕入れルートを開拓していくようになったんです。2003年にウェブショップとしてお店をオープンし、その後、縁があって2004年にこの場所で念願のお店をオープンすることになりました。」
ペルシャ絨毯・キリム・ギャッベとは?
-ペルシャ絨毯・キリム・ギャッベの違いってどんなところですか?
ラミンさん:「ペルシャ絨毯と一言にいってもさまざまな種類があり、キリム・ギャッベもペルシャ絨毯の一部になります。皆さんがよく思い浮かべるペルシャ絨毯はイランの各地の工房でつくっており、図面の通りに織り込んでいきます。各担当がいて、それぞれのプロフェッショナルたちによって一つの作品を作り上げていくのが一般的です。」
「一方、キリムやギャッベは図面がありません。ペルシャの遊牧民たちが半年ほどの時間をかけて織り上げていきます。大きな違いは、キリムには毛足がなく、厚さも4㎜~7㎜程と薄い点です。
ギャッベは15mm~25㎜程厚みがあり、ふかふかとしています。夏は蒸れるんじゃないの?ってよく聞かれるんですが、ウールは通気性が高いので、夏は涼しく、冬は暖かく過ごしていただけるんですよ。それに、羊毛は油分を含んでいるので、撥水性があり、多少水をこぼしても弾いてくれます。小さなお子さんがいる家庭にもおすすめです。」
-お手入れ方法はどうしたらいいですか?
ラミンさん:「よく汚れたらいけないと壁に掛けて飾る方もいるんですが、遊牧民が日常で使うものですからすごく丈夫なんです。どちらも50年は平気で保ちますよ。お手入れは、掃除機で十分。大きいものだと洗うのは大変ですが、キリム、ギャッベともに洗うことができます。踏み込んでいく度にツヤと光沢がでてくるので、経年変化が楽しめるのも大きな魅力です。」
詳しいお手入れ方法についてはこちらをご参照ください。
・ギャッベのお手入れ方法
https://www.craftworkjp.com/cg-oteirehouhou.htm
・キリムのお手入れ方法
https://www.craftworkjp.com/kilim-howtowash.htm
現地での様子
-買い付けには年に何回行かれるのですか?
ラミンさん:「買い付けには、年に2回行っています。遊牧民たちは、移動をしてしまうので、いつも同じ場所にいるわけではありません。ですので、毎回彼らたちがどこいるのかを探すことから買い付けがはじまります。
多くのお店では、手元に渡るまでに複数の業者を介すので、値段が倍以上になっていることもあります。しかし、クラフトワークでは、私が一点一点現地で厳選して織り手から買い付けをするので、確かな品質のものを、お値打ちな価格で提供することができています。」
-ラグを選ぶ際にコツがあれば教えてください。
ラミンさん:「皆さんお部屋のインテリアに合わせて選ばれるんですが、私がお客様によく言うのが「インテリアには合わせないでください」ということです。自分がいいと思ったもの。気にいったものを購入するのが大切です。ラグには、無地のようなシンプルなモノから、動物が描かれたものなど、さまざまタイプがあります。
どれも、遊牧民の女性たちが時間をかけて織り込んだものです。そこには彼女たちの夢や希望が詰まっています。同じような色味に見えるものでも、一つとして同じものはありません。ですので、自分の直感を信じで、これだ!って思えるお気に入りのものを選ぶことが、長く大切にしたいと思えるラグ選びのコツですね。」
お話を聞けば聞くほど、面白いペルシャの世界。ここからはキリムとギャッベ、それぞれの魅力やデザインについて詳しくご紹介していきます。
母から娘へ受け継がれていくキリム
キリムは、遊牧民の生活には欠かせないものです。古くから、生活の用具として各家庭で自分たちが使うために織られてきました。素材のウールは家畜の羊から、染料は周辺にある自然の恵みからつくる草木染によって手織りで織り上げていきます。キリムを織るのは女性の役割であり、母から娘へ受け継がれていくのです。
イランには、たくさんの部族がおり、部族によって柄が大きく違うのも大きな魅力です。
このキリムは、クルド族の女性が織ったもの。クルド族は遊牧騎馬民族で、気性が激しく戦闘的な民族です。そのため柄にも力強く、あり余るエネルギーの強さが表れています。
こちらは、カシュガイ族が織ったものです。カシュガイ族はギャッベを織る遊牧民の代表格として知られていますが、もちろんキリムも織り上げます。山や川、動物や花木など遊牧民の生活を子どもの絵のようなあどけないタッチで織り込めています。部族の生活スタイルによってこれだけ柄が異なるのはとても面白いです!
こちらもカシュガイ族が織ったもの。キリムには、女性たちの願望も込められています。このキリムにはイヤリングの環が織り込まれており、幸せな結婚への願望を象徴しているのだとか。
このキリムは、1960年代にガズビンの町で織られたものです。ピンクやオレンジ紫といった独特の色彩は、夕焼けの木や花々を表現しています。
周りには、狼の口をモチーフにした柄が織り込まれいます。このモチーフは家庭や家族を狼から守るために用いられるそうです。他にも、モチーフには、さまざまな思いが込められているので、お店に行った際はラミンさんに尋ねてみてくださいね!
織り手の想いをギャッベにのせて
ギャッベはイラン南西部のファルス地方で生活を営む遊牧民によって織り上げられているものです。素材はウールで、色は草木染。すべて自然の中で生み出された素材でつくられていきます。
キリムと同様に、ギャッベも下絵はありません。織り手の女性たちの思うがままに織り上げられていきます。ギャッベを織っている時間は、家事をこなす女性たちとって一番幸せな時間なのだそう。だからこそ、そのキャンバスには、広大な美しい自然、毎日の生活や身近に起こった出来事、夢や希望をキャンバスで絵を描くように表現していきます。
砂漠で暮らす遊牧民の生活に、窓は存在しません。そのため、 四角は「窓」を意味し、幸せを呼び込む入り口として「窓から幸せが入ってきますように」との願いが織り込まれいます。また、1匹のヤギは「子孫繁栄」と「豊かな生活」への願いが込められています。
左のカラフルなギャッベは遊牧民のテントを表して織り、人や動物、木などが織り込まれています。そこには、家族の幸せや未来への願いなどが込められています。
赤いギャッベは生命の色です。カシュガイ族が住んでいるイラン南西部のザクロス山脈では、日が落ちるころ夕日が当たると砂漠が真っ赤に燃えたぎったように染まります。そんな情景をギャッベで表現。他にも、緑のギャッベは春の砂漠、青は夜の砂漠を表しているのだとか。
「半年かけて織っていくと、気持ちの変化やその間に起こった出来事によって途中で柄が別物のように変わっていくこともあります。そんな、織り手の人となりが垣間見えるものギャッベの魅力です。」と語ってくださったラミンさん。今回お話を聞き、私自身もペルシャ絨毯の世界にすっかり魅了されてしまいました。
生涯に織ることができるラグの数は限られているからこそ、織り手は一つずつ丁寧に織り上げ、想いをそこにのせていきます。スマホやPCばかりをいじる私たちの現代生活からすると、彼女たちの手仕事はなんて素晴らしいのだろうと感動せずにはいられませんでした。
幸せを願いながら織り上げられていくラグは、見ているだけでも優しい気持ちになります。世界に一つだけのインテリアを探してみませんか?
【手織ラグの店 クラフトワーク】
住所 :愛知県名古屋市千種区山門町1-47-2 MAP
電話番号:052-763-2656
営業時間:11:00~18:00
定休日 :火曜日
https://www.craftworkjp.com/index.htm