世界に一つだけのインテリア「手織ラグの店 クラフトワーク」
目次
母から娘へ受け継がれていくキリム
キリムは、遊牧民の生活には欠かせないものです。古くから、生活の用具として各家庭で自分たちが使うために織られてきました。素材のウールは家畜の羊から、染料は周辺にある自然の恵みからつくる草木染によって手織りで織り上げていきます。キリムを織るのは女性の役割であり、母から娘へ受け継がれていくのです。
クルド族の薄手絨毯
イランには、たくさんの部族がおり、部族によって柄が大きく違うのも大きな魅力です。
このキリムは、クルド族の女性が織ったもの。クルド族は遊牧騎馬民族で、気性が激しく戦闘的な民族です。そのため柄にも力強く、あり余るエネルギーの強さが表れています。
こちらは、カシュガイ族が織ったものです。カシュガイ族はギャッベを織る遊牧民の代表格として知られていますが、もちろんキリムも織り上げます。山や川、動物や花木など遊牧民の生活を子どもの絵のようなあどけないタッチで織り込めています。部族の生活スタイルによってこれだけ柄が異なるのはとても面白いです!
こちらもカシュガイ族が織ったもの。キリムには、女性たちの願望も込められています。このキリムにはイヤリングの環が織り込まれており、幸せな結婚への願望を象徴しているのだとか。
このキリムは、1960年代にガズビンの町で織られたものです。ピンクやオレンジ紫といった独特の色彩は、夕焼けの木や花々を表現しています。
周りには、狼の口をモチーフにした柄が織り込まれいます。このモチーフは家庭や家族を狼から守るために用いられるそうです。他にも、モチーフには、さまざまな思いが込められているので、お店に行った際はラミンさんに尋ねてみてくださいね!
織り手の想いをギャッベにのせて
ギャッベはイラン南西部のファルス地方で生活を営む遊牧民によって織り上げられているものです。素材はウールで、色は草木染。すべて自然の中で生み出された素材でつくられていきます。
キリムと同様に、ギャッベも下絵はありません。織り手の女性たちの思うがままに織り上げられていきます。ギャッベを織っている時間は、家事をこなす女性たちとって一番幸せな時間なのだそう。だからこそ、そのキャンバスには、広大な美しい自然、毎日の生活や身近に起こった出来事、夢や希望をキャンバスで絵を描くように表現していきます。
砂漠で暮らす遊牧民の生活に、窓は存在しません。そのため、 四角は「窓」を意味し、幸せを呼び込む入り口として「窓から幸せが入ってきますように」との願いが織り込まれいます。また、1匹のヤギは「子孫繁栄」と「豊かな生活」への願いが込められています。
左のカラフルなギャッベは遊牧民のテントを表して織り、人や動物、木などが織り込まれています。そこには、家族の幸せや未来への願いなどが込められています。
赤いギャッベは生命の色です。カシュガイ族が住んでいるイラン南西部のザクロス山脈では、日が落ちるころ夕日が当たると砂漠が真っ赤に燃えたぎったように染まります。そんな情景をギャッベで表現。他にも、緑のギャッベは春の砂漠、青は夜の砂漠を表しているのだとか。
白のギャッベは、染色をしていないそのままのものです。
「半年かけて織っていくと、気持ちの変化やその間に起こった出来事によって途中で柄が別物のように変わっていくこともあります。そんな、織り手の人となりが垣間見えるものギャッベの魅力です。」と語ってくださったラミンさん。今回お話を聞き、私自身もペルシャ絨毯の世界にすっかり魅了されてしまいました。
店主の安藤ラミンさん
生涯に織ることができるラグの数は限られているからこそ、織り手は一つずつ丁寧に織り上げ、想いをそこにのせていきます。スマホやPCばかりをいじる私たちの現代生活からすると、彼女たちの手仕事はなんて素晴らしいのだろうと感動せずにはいられませんでした。
幸せを願いながら織り上げられていくラグは、見ているだけでも優しい気持ちになります。世界に一つだけのインテリアを探してみませんか?