飛騨家具のパイオニア、そしてリーディングカンパニー。「飛騨産業」の100年を歩むショールーム

高山市
掲載日:2020.12.24
飛騨家具のパイオニア、そしてリーディングカンパニー。「飛騨産業」の100年を歩むショールーム

飛騨高山と言えば、古い町並や高山祭といった観光地のイメージ、また春慶塗りや飛騨の匠といった伝統工芸のイメージ。そして意外と知られていないのが、日本を代表する脚物家具(椅子)の産地であるということ。

飛騨の椅子づくりの歴史は、今から100年前の1920年にさかのぼります。そして長い時代を経た2020年、創立100周年を迎えた飛騨の家具メーカーがあります。

飛騨産業

今回は、飛騨家具の歴史とともに歩む「飛騨産業」をご紹介。開拓ストーリーから話題の椅子、そして最大展示数を誇る本社ショールーム「飛騨の家具館 高山」についてレポートいたします!

材料・人材・技術が集結し、
飛騨の家具が生まれた

飛騨産業

飛騨産業は東京・大阪・名古屋などにも直営ショップやショールーム「飛騨の家具館」を展開しています。「キツツキマーク」がついた看板や商品を目にしたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。

同社は飛騨家具メーカーを引率する企業としても知られており、大規模なショールームや有名デザイナーとのコラボ、メディアへの出演などの実績も多数。とは言え、「いい家具で当たり前」というイメージや期待を裏切らず、実現し続けるのは決してたやすいことではありません。

今回は、飛騨産業株式会社取締役、営業企画室室長である森野敦さんにインタビュー。ブレないものづくりの精神と、創立100年に至るまでの歩みについてお伺いしました。

森野さん:「かつての飛騨エリアには、あちこちにブナの木が群生していました。当時、ブナ材は”無用”と言われるほど使い道がありませんでしたが、旦那衆(飛騨の豪商)がお金を出し合って、木工技術者たちよるブナ材活用への模索がはじまりました。」

それは第一次世界大戦が終わった直後の1920(大正9)年。日本の景気は悪化して家具業界も縮小していた頃でした。

森野さん:「ちょうど大阪の曲木(まげき)工場に勤務していた職人が飛騨に帰ってきて、技術を売り込んだんです。そうして曲木技術が伝わり、椅子づくりへと生かされました。」

曲木は、飛騨の家具を象徴する技術。ドイツの産業革命時代に生まれ、明治時代に日本へと伝わりました。硬い木に熱や水分を加えることで繊維がやわらかくなり、ぐにゃーっとカーブするさまは圧巻です。

森野さん:「会社をおこしたものの最初はうまくいかず、資本切れによって3年で解散してしまいました。そして新たな資本を募り、再び集結したところで関東大震災が発生したんです。」

復興のための需要が発生し、地道な営業活動もあって会社は軌道に乗りはじめました。

飛騨産業

当時つくられていた「第壱號(だいいちごう)曲木椅子」

森野さん:「便乗値上げを考える商売人もいるなか、当時の社長は復興のためにと値段を下げて販売したと聞いています。都会ではすでに西洋の生活様式を取り入れており、また昭和天皇即位の礼などの集会も増え、折りたたみできる木の椅子なども全国的に売れていきました。」

そしてアメリカへの輸出事業が成功した矢先、第二次世界大戦が勃発。軍事工場として接収されるなど紆余曲折の沿革を辿ります。

飛騨産業

飛騨産業

ショールームでは、こうした椅子づくりの歴史も見られる

戦後は、アメリカ軍兵士への住宅やアメリカへの輸出で経営も安定。高度経済成長期やバブル期に向けて順調に業績を伸ばしていきました。

森野さん:「一番の転機は、NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」のモデルとなった”暮しの手帖”創刊者の大橋鎭子さんと初代編集長の花森安治さんです。1963年には誌面のなかで高山の暮らしを紹介し、74年には飛騨の家具を大々的に取り上げてくださいました。それだけでなく、本人たちが実際に愛用してくださったことで爆発的に広まりました。」

飛騨産業

「穂高/だんだんふやしていく椅子」花森氏による直筆メッセージも

その頃には、他の飛騨家具メーカーも独自の商品を販売しはじめ、「飛騨の家具®️」というブランドの認知度も高まっていきました。

100年を振り返り、新たに生み出したもの

飛騨産業

2020年8月10日、飛騨産業は創立100周年を迎えました。新型コロナウイルスの影響で大きなイベントは延期となりましたが、歴史を紐解き、いま一度ものづくりを考えるブランディングプロジェクトを実行。

そして行き着いた4つのテーマと、それぞれを体現した記念商品を発表しています。

SEOTO-EX100

座りごこちを追求するテーマ「人を想う」では、デザイナー川上元美氏とのコラボとして「SEOTO-EX100」を発表。

第七號椅子

伝統を継承するテーマ「時を継ぐ」では、創業当時のデザインをリファインした「第七號椅子」を復刻。個性的なファブリックは、日本を代表する染色家の柚木沙弥郎氏によるものです。

クマヒダ

また、技術の向上をテーマとした「技を磨く」では、建築家・隈研吾氏とのコラボ「クマヒダ」で大きな話題に。そして、自然と向き合うテーマ「森と歩む」の記念作品は、コロナの影響で来年以降に延期となっています。

森野さん:「これまでやってきたことが4つのテーマに集約されたことで、僕たちも腹落ちしてよりお客様に伝えやすくなりました。本社ショールームやWEBサイトでもテーマ別に商品をご覧いただけますよ。」

スポット詳細

【飛騨の家具館 高山(飛騨産業本社ショールーム)】
住所   :岐阜県高山市名田町1-82-1
電話番号 :0120-606-655、0577-36-1110
営業時間 :9:30~18:00
定休日  :水曜・年末年始
駐車場  :あり

https://kitutuki.co.jp/

「夢はママライター」を叶えるため、某出版社で毎日泣きながらの飛び込み営業、テレビ会社で単純作業を繰り返す営業事務、広告代理店で”売るためのチラシ制作”などを経て2007年に独立。

するどい感性と庶民感覚を武器に雑誌から企業広告までを引き受け、セミナー講師や集客アドバイザーの一面も。

https://mamhive.com/

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