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愛知県に70ほどあるという銭湯。そのなかでも名古屋市東区の19号線沿いにある「平田温泉(へいでんおんせん)」は、アーティストやコレクターによる展示や絵本とのコラボ企画などイベントを随時開催しており、入浴以外にも楽しみがいっぱいです。
また、「井戸水の水風呂がとにかく気持ちいい!」とサウナ愛好家からも熱視線が。これは調査せずにはいられません!
熱帯の植物が生い茂る浴室内の庭にびっくり!
まずはフロント式の番台でお金を支払います。
入浴料は440円。手軽な料金も町の銭湯の魅力ですね。サウナを利用する場合+100円。サウナ利用者には黄色いタオルが貸し出されます。サウナ室に入室する際はこのタオルを必ず持参しましょう。
老舗の銭湯だけあり建物自体は古いのですが清掃が行き届いており、脱衣場もとても清潔感があります。
浴場に入って最初に目に入るのは、熱帯を想わせる植物たちと迫力満点の岩!
近づいて見てみるとレモンが実っていました。「銭湯に来たはずが、植物園に来た!?」と思わず目を疑ってしまいます。
ちなみに、バナナやパイナップル、ミラクルフルーツも育てており、一部のフルーツはときどきお客さんに振る舞うこともあるのだとか。温度や湿度が高い浴室内の環境が、南国のフルーツの栽培にも適しているなんてなんだかおもしろいです。写真のバナナは2020年5月に収穫されたもの。※写真提供・女将さん
浴槽の種類も豊富で、日替わり湯も楽しめます。撮影当日は「ローズ&サンダルウッドの香り」でした。入浴剤だけではなく本物のコーヒーを使った「コーヒー風呂」など、ちょっと奇抜な日替り湯が用意されることもあるそう。
ちなみに、サウナの上に掲げられている浮世絵のどこかに、「へいでん」の文字が隠されているのですが、どこに隠されているかわかりますか?(写真は男湯)
女湯の方には「平田温泉」という漢字が浮世絵の中に隠されています(左上の「平田温泉」の表記とは別にあります)。実際に現地に赴き探してみましょう!
水質のよさ抜群の水風呂を体感
サウナも体験してみます。2段になっており、最大4人が入れる程度。
温度は100℃を超えていますが、適度に湿度もありコンディションは抜群です。女湯はやや低めの90℃に設定しているとのこと。窓の外には、熱帯植物が生い茂る庭の緑がかすかに見えます。
サウナから徒歩1歩のところに水風呂が!動線が抜群によいです。
地下80mから湧き出る水は、やわらかい水質が特徴。冷却装置はつけておらず温度は変化するそうですが、おおよそ18~20℃とほどよい水温です。
「水質のいい水風呂があると聞けば遠方でも行く!」というサウナーも多いかと思います。しかし、名古屋市在住者としては「名古屋のど真ん中にこんな素晴らしい水風呂が!」と驚きを隠せません。灯台下暗しとはまさにこのこと。完全に盲点でした。
いわゆる「ととのいチェア」はありませんが、ほかのお客さんのお邪魔にならぬようちょっと腰掛けて休憩。こんな風景を眺めながらのととのいタイムを過ごせます。
ロビーではビールやソフトドリンクも販売されており、湯上がりの一杯も実に楽しみです。
「銭湯をもっと身近なものに」と奮闘する
八木さんご夫妻
あまりの気持ちよさに心が弾みつつ、ご主人の八木宏庸さんと佳子さん夫妻にお話をうかがいました。
宏庸さん:「もともとは『東雲(しののめ)湯』という屋号で、現在東区にあるNHK名古屋放送センタービルの近くで営業していました。創業は明治43年という風に聞いています。僕が継いだのは1994年で、そのとき銭湯は東区に9軒あったかな。現在ではうちも含めたったの4軒になっちゃいました。」
と、平田温泉の歴史と銭湯業界の現状を教えてくれました。しかし、平田温泉が地域の人に愛され続け、現在でも多くの入浴客が訪れている要因とはなんなのでしょうか。
佳子さん:「SNSで人脈が広がって、ほかの地域の銭湯と『横のつながり』をもてたのがとても大きかったんです。」
例えば京都の「むらさき湯」、大阪の「湯処あべの橋」、そして「平田温泉」の女将がユニット「CATCH♡湯~ANGELS」を結成!共同でイベントを行うなど、精力的な取り組みを見せています。
人気の絵本「パンダ銭湯」とのコラボ企画はその好例。
浴室には「パンダ銭湯」にちなんだ装飾が全面に施され、ロビーにはフォトスポットも用意。「リアルパンダ銭湯」に子どもたちも大よろこびです!ちなみにこの日は「パンダ以外入浴お断り」だったのだとか。
ロビーでは不定期でアーティストやコレクターによる展示会を実施。ビールの空き缶の展示など、ちょっとマニアックながらもついつい見入ってしまうものが多いです。
「銭湯って『常連さんばっかりなんじゃないの?』とか『どうやって入るかわからない』など、普段入られない方にとっては案外敷居が高い存在だと思うんです」と佳子さん。
銭湯をもっとオープンなものにするべく、はじめたのが「へいでん和の市」というイベント。脱衣場ではマルシェ、浴室では音響を生かした音楽ライブなどが催され女将も出演!普段利用しない人も、内部の様子を知ることでより銭湯に対する親しみが湧きます。
コロナウイルス感染症拡大の影響で中止せざるをえない時期もあったそうですが、原則として10月と3月に開催されます。(イベントの開催については要問合せ)
そのほかイラストレーター22℃さんとのコラボタオル(1枚280円)や、銭湯ハンコ作家・としぞーさんのレトロなデザインがかわいい缶バッチ(1個300円)など、オリジナル商品が豊富!平田温泉を応援している作家さんが快くデザインを引き受けてくれるのも、愛されている証なのだと感じます。
清潔で広々とした浴槽、コンディション抜群のサウナ&水風呂、そして楽しいお話で心身ともにリフレッシュできました。これこそ「町の銭湯」の最大の魅力です。
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