【インタビュー】映画『よだかの片想い』。主演・松井玲奈さん自身も惚れ込んだ、女子大生の“遅い初恋”を描いた強くも儚い恋物語。

掲載日:2022.10.18
【インタビュー】映画『よだかの片想い』。主演・松井玲奈さん自身も惚れ込んだ、女子大生の“遅い初恋”を描いた強くも儚い恋物語。

直木賞作家・島本理生の恋愛小説『よだかの片想い』が、監督・安川有果×脚本・城定秀夫でついに映画化!顔の左側に大きな痣を持つ女性の“遅い初恋”を軸に、コンプレックスと正面から向き合っていく強さや葛藤を描いた今作。
主人公・アイコ役を、自身も原作に惚れ込んでいたという、松井玲奈さんが演じることも話題を集めています。今作ならではの役作りから作品を通して学んだこと、原作との楽しみ方など、主演・松井玲奈さんにインタビュー!

女子大生の前田アイコは、顔の左側に大きなアザがある。幼い頃から畏怖やからかいの対象にされてきた彼女は、恋や遊びはすっかり諦め、大学院でも研究ひと筋の毎日を送っていた。そんなある日、アイコが取材を受けたルポタージュ本の映画化を機に彼女を取り巻く環境は一変。監督の飛坂逢太と話をするうちに、飛坂への片思いを自覚したアイコは不器用に距離を縮めていく一方で、自身のコンプレックスとも向き合っていくが……。

– 主人公・前田アイコを演じる上で、大切にした部分などはありますか?

松井さん:「私は今作を、アイコという女性の恋物語だと思っています。なので、“アザのある女性を演じる”というよりも、“コンプレックスを持つ女性”が、どんな気持ちで日々物事と向き合っているのかを大切に表現したいと思いました。そういった思いもあり、役作りでは、アイコの人生経験を原作の中から読みとり、私自身の経験として落とし込んでいく作業を繰り返していました。原作を何度も読み込んで、この場面のアイコはどんな状態で、相手に対してどんな気持ちを抱いているのだろうか、と一つひとつ感情を確認して、「アイコの記憶」として、自分の中に落とし込んでいきました。」

– 原作とは違い、アイコの髪型がショートカットとなった経緯を教えてください。

松井さん:「撮影時期に私自身が髪を短くしていて、ちょうどアザが隠れそうで隠れない前髪の長さだったんです。エクステを付けて原作と同様にショートボブにすることも出来たけど、あえて短いショートカットのままでいることで、彼女の強さを髪型でも表したいと思いました。」

– 劇中での姿勢の美しさからも、“強さ”を感じました。

松井さん:「芯のある自立したアイコでありたいと思っていたので、自然と良い姿勢で立っていたのだと思います。彼女は顔にアザがあることを影として受け取っている部分はありますが、姿勢を崩すことでアザを隠すというより、しっかりと地に足を付けて立っているところを表現したいと思っていました。」

– “遅い初恋”を軸にさまざまな人の恋愛模様を描いた今作。松井さん自身、恋愛面でアイコに共感した部分や、“私だったらこうするのに!”と感じたことはありましたか?

松井さん:「「自分だったらこうしないのに」と感じる部分はいくつかありました(笑)一番印象に残っているのは、アイコが飛坂さんに告白するシーン。告白するような雰囲気ではないなかで、彼女が突然「好きです!」と想いを伝えてしまうんですよね。でも、感情の高ぶりのまま想いを伝えてしまう様子が、アイコらしくて可愛いなとも思いました。私は空気を読みながら、相手の心情を探るタイプなので。」

– アイコの感情や表情が豊かになっていく様子も印象的でした。

松井さん:「飛坂さんやゼミの人達と向き合うことで、アイコと周囲の人々との関係性がどんどん変化していくんですよね。その変化に応えていくことで、彼女のキャラクターが豊かになって、物語が進む毎に表情も柔らかさを持ち始めたのだと思います。」

– 今作を通して変化したことなどはありますか?

松井さん:「安川監督と話して、「分からないことを、分からないままやってみよう」という経験をしたんです。その時、台本にも書かれていない、自分でも想像していなかった感情がバーッと溢れ出してきたんです。その経験を経て、時には人に委ねたり、何かをきっちり決めずに、“分からないままやってみる”という柔軟性も必要なんだなと強く感じました。」

– 飛坂逢太役を演じた、中島歩さんの印象はいかがでしたか?

松井さん:「不思議な人ですね(笑)飛坂逢太のまんまなんです。オンとオフが無いというか、お芝居をしていても常に地続きの状態でいるんですよね。ふと冗談を言ってきたりする意外性もあって、人を惹きつける方だと思います。」

– 原作を含め、島本理生さんの作品を読み込んでいる松井さん。島本さんが描く作品の魅力を教えてください。

松井さん:「登場人物の感情、とくに主人公の感情の積み重ねがとても豊かなところです。一つひとつの感情を丁寧に描いているからこそ、物語の中で登場人物が大きな決断をするような場面でも、読み手もその決断を納得することができる。『よだかの片想い』でも、アイコはさまざまな決断をしていくけれど、彼女の決断に納得することができるし、共感や感情移入もできる。そういう部分が島本さんの作品は凄いと思います。映画版は、アイコ自身が「実は色んな人に助けてもらっていた」と気付く物語になっています。原作では、アイコの家族との関わりや飛坂さんのバックグラウンドやアイコに惹かれた理由なども描かれているので、ぜひ映画と一緒に読んでいただけたら、より今作を楽しんでいただけると思います。」

スポット詳細

【映画名】
よだかの片想い
https://notheroinemovies.com/yodaka/

©島本理生/集英社 ©2021映画「よだかの片想い」製作委員会

1989年生まれ。名古屋発女性情報誌の編集長を経て、フリーランスに転向。グルメを中心とした店舗取材をはじめ、沖縄やバリ島、ハワイなど国内外の旅ロケ、アーティスト・俳優のインタビューなど幅広い業務を経験。現在はファッションWEBマガジン・雑誌の編集ディレクターを務めるほか、ライターとしてWEBメディアで取材記事を作成、ライター講師などを担当。猫と旅とビールが好き。

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