目次
名鉄「栄生」駅南口から徒歩1分の場所にあるパン屋「le supreme(ル・シュプレーム)」。伝統的かつ個性豊かなパンを生み出し、食べログの「パン百名店」に3年連続選出。メディアにも取り上げられるなど、そのおいしさは多くの人に知られています。
オーナーシェフの渡辺和宏さんは東京のホテルやベーカリーでの修業を経て、2007年地元名古屋に戻りお店をオープンしました。今回は、パンづくりの魅力や想いを伺いました。
コンセプトは「ヨーロッパのブーランジェリー」
名古屋駅から名鉄本線でひと駅の栄生駅から徒歩1分ほど。ヨーロッパの街角に佇むブーランジェリーのような外観が印象的です。
店内に入ると、香ばしい香りとともに丁寧につくられたパンの数々。1日に約80種類ほどのパンを店内奥の厨房で焼き上げています。
「ヨーロッパのブーランジェリー」をコンセプトにした店内は、木のカウンターとオレンジの灯りがあたたかみのある雰囲気。フランスパンやドイツパンをはじめ、お子さんが喜びそうなクリームパンから、お酒に合いそうな惣菜パンまで多種多様なパンに出会えます。
冷蔵ケースには、スイーツや具沢山のサンドイッチも。
朝8時の開店から、続々と焼き立てパンが並べられ、お昼の時間帯に一番多くそろいます。売切れにならないよう、夕方まで補充を繰り返していますが、お目当てのパンはお電話で予約することもできますよ。
パンづくりに魅了され、
2007年ル・シュプレームをオープン
名古屋中村区で祖父の代から続く和菓子屋を営む両親のもと、長男として生まれた渡辺さん。当時は洋菓子やパンも取り揃えていたこともあり、ご自身もケーキ職人を目指し、大阪の製菓専門学校へ。卒業後は品川プリンスホテルへ就職し、パティシエ部門に配属されました。
– どのようなきっかけでお菓子からパンの道に進まれたのですか?
渡辺さん:「第二次ベビーブーム世代の私が就職したころは、パティシエを目指す人が多く、一年目の私は希望の職種につけず、パンの手伝いをしていました。最初は、パンもお菓子も両方修行したいと思い、2~3年パンを一通り覚えたら、お菓子に戻るつもりが、やってみると意外にパンが難しくて……。こだわり性なのか、思い通りにできない悔しさから、本格的にパンに興味を持ってしまいました。」
– パンづくりの魅力を教えてください。
渡辺さん:「パンの発酵とは、イーストという生きものを扱うということ。答えがないから、毎日思考錯誤の連続です。発酵前と後では、全くその物性が違うので、そこを想像して仮説をたててつくります。少しずれると同じものができないし、イメージ通りになったときの面白さがあります。」
パンの世界に魅了されて、都内のホテルやベーカリー・製菓専門学校勤務で15年間経験と知識を培いました。2007年35歳のとき名古屋に戻り、先代が和菓子屋を営んでいた場所でル・シュプレームをオープンすることに。店名のシュプレームはフランス語で「極上」「最高」という意味。日々頑張れるよう、極上を目指す目標への決意が込められています。
店内に飾られたメダルや表彰盾。お店をオープンしてからもコンテストに挑戦し続け、数々の受賞歴をお持ちの実力者です。2014年には高島屋に2店舗目を出店し、名実ともに人気を誇りますが「いまだに達成感がない、まだまだ納得できない。」と渡辺さんは話します。
ひとつひとつのパンに込めたこだわり
渡辺さんにパンづくりのこだわりを伺うと笑っておられましが……。
渡辺さん:「すべて国産小麦・自家培養発酵種にこだわると、おいしいものができないので、素材にこだわりを持ちません。国産小麦・自家培養発酵種も使っていますが、外国産小麦も使います。そのパンにとって、一番必要なものを使い、必要なことをするのがこだわり。例えば、あんぱんを自家培養発酵種でつくるとおいしいと思わないから、おいしくつくることを一番にしています。」
※自家培養発酵種とは、果実や穀物に付着する酵母や微生物からつくる発酵種のことで、一般的には「天然酵母」と認知されています。
– ル・シュプレームの「あんぱん」は絶品ですね!コロンとした見た目もかわいいです。
渡辺さん:「当店の前身は和菓子屋なので、自家製餡子を使っています。小豆の風味を引き立つよう砂糖を極限まで減らし、塩をアクセントにきかせて。餡子は甘くないので、生地の中にたくさん入れて、餡子の周りにパン生地がついた仕上がりに。だからあのような山型になっているんです。」
ひとつの商品に、どうしたら形がおもしろくなるか、どうしたらおいしく出来るか。ひとつひとつ考えて生み出す、とパンづくりのこだわりを熱く語ってくださいました。
ル・シュプレームのおすすめパン
そんなこだわりが詰まったル・シュプレームのパンたち。幅広いラインナップの中でおすすめパンをご紹介します!
看板商品は「自家製あんぱん」
やはり一番人気は、看板商品でもある「自家製あんぱん」。やさしい甘さの粒餡がたっぷり入って、ほんのり塩気も感じます。手のひらサイズで、おやつに最適ですよ。
くせになる辛さ「青唐辛子のフーガス」
葉のようなユニークな形の「青唐辛子のフーガス」。青唐辛子であるハラペーニョとゴーダチーズの相性抜群です。
ピリリと辛いけどくせになるおいしさ。ビールはもちろん、あらゆるお酒に合いそうです。
けしの実ペーストとくるみの「モーンプルンダー」
切り株をイメージした形の「モーンプルンダー」。デニッシュ生地の外側はさくっと、中はしっとり。ほどよい甘さの中に香ばしさと、くるみの食感がアクセントになっています。
オリーブの香りが広がる「オリベール」
オリーブのペーストと実がまるっと入っています。口に入れるとカリッとした食感が楽しめ、オリーブの香りが広がり、噛むほどに味わいが深くなります。
チョコの絶妙なハーモニー「カカオポッド」
濃厚なコーヒーチョコとキャラメルクリームがとろけます。ほろ苦さがあり、少しビターな味わい。コーヒーのお供にぴったりですよ。
取材の翌日、ゆっくりとパンを味わいました。朝昼・コーヒータイム・夜の晩酌、あらゆるシーンで食卓を彩り、幸せな気持ちにさせてくれました。
現在3店舗目の出店を計画中で 多忙を極める渡辺さんですが、後進の育成にも注力されています。専門学校の非常勤講師を務めるほか、ル・シュプレームには多数のスタッフが独立を目指し、渡辺さんの指導のもと技術を磨いています。名古屋のパン業界がますます盛り上がりそうですね。
今年で15年目を迎えるル・シュプレーム。渡辺さんの飽くなき探究心とこだわりから生まれるパンをぜひ味わってください。