尾張徳川家に代々伝わる家宝を、約1万件あまり所蔵する「徳川美術館」。
大名や武家をはじめ、関わりのある人たちが愛用した品々を中心に、国宝や重要文化財など貴重なコレクションがズラリ!当時の生活が感じられるような展示空間の工夫もされていて、臨場感あふれます。
どんな名品・お宝に出会えるか、早速みていきましょう!
※情報は取材時のものです。
ご利用の際には、各施設・各店舗の最新情報をご確認ください。
目次
徳川美術館とは
徳川美術館は、19代当主の徳川義親(よしちか)が、大名文化を後世に残すことを目的に、財団を設立して私財を寄付し、昭和10年に開館。国宝や重要文化財なども含め、約1万件あまりを所有する、大名道具のコレクションとしては国内でも最大規模の美術館です。
その収蔵品は徳川家康の遺品をはじめ、尾張徳川家の歴代の当主やその家族の愛用品、そして貴重な文献なども数多く残されています。
また、鑑賞用だけでなく、実際に当時の生活で使われていたという「大名道具」や空間が再現され、臨場感を感じられる形で展示されている点も魅力のひとつです。
展示品は美術館の名が示すとおり、徳川家に伝えられた刀剣や茶道具・武具・香道具など、多くのコレクションが並びます。
信長や家康が実際にもっていた刀剣などを間近で見ると、一気に親近感がわきますね!
名品コレクション展示室(第1~5展示室)の「新館」
美術館は「新館」→「蓬左文庫」→「本館」を順番に巡れるようになっています。美術館の入口でまず入るのは、名古屋城の不明門を模した新館のエントランス。
新館は「名品コレクション展示室」と名づけられ、展示品は季節やイベントを考慮しながら基本3ヶ月に1度(染織品や絵画はデリケートなので約1〜2ヶ月ごと)に変えているそう。
第1展示室〜第5展示室から構成され、それぞれテーマが決まっています。
第1〜4展示室はおもに公的な場で用いられる「表道具」の展示、第5展示室は私的な場で用いられる「奥道具」を中心に紹介しています。
では早速入ってみましょう!
第1展示室「武家のシンボル ~武具・刀剣~」
入口からすぐの第1展示室には「武家のシンボル(武具・刀剣)」をテーマにした展示品が並びます。
尾張徳川家初代義直が特に愛用していたという実際の武具(写真)や、戦時中の目印として使われた馬標(うまじるし)をはじめ、特集展示として国宝や重要文化財の刀剣も展示。
第2展示室「大名の数寄 ~茶の湯~」
第2展示室の「御数寄屋(おんすきや)」は、戦国武将の間で流行ったという茶の湯を、名古屋城二之丸御殿にあった「猿面茶室」で再現しています。主に武家の行事や接待につかわれていたそう。
茶の湯道具は、当時の大名にとっては威厳や格式を示す道具でもあったようです。
第3展示室「大名の室礼 ~書院飾り~」
かつて名古屋城二之丸御殿にあったという大名の公式行事につかわれていた「広間」と大名のくつろぎの場「鎖の間」を再現。
当時の調度品を想像を膨らませながらとりあわせていくという、美術品と空間との一体的な体系展示によって、まるで自分も当時の空間にいるような感覚に……。日本の伝統的な「構成の美」「とりあわせの美」を存分に感じられる工夫も徳川美術館ならでは。
第4展示室「武家の式楽 ~能~」
大名たちの公式行事でもあった「能」。徳川幕府が武家の式楽(公式の場での音楽)と定めたことで、大名の御殿や前庭には必ず能舞台が設けられ、慶事や公式行事には必ず能が演じられたそう。
第5展示室「大名の雅 ~奥道具 ~」
第5展示室では、大名家に嫁いだ際の嫁入り道具など、プライベートの品が多数展示されています。
中でもひときわ繊細な美しさを放っているのが、国宝「初音蒔絵料紙箱(はつねまきえりょうしばこ)」。こちらも3代将軍徳川家光の長女・千代姫の嫁入り道具のひとつです。
初音の由来は、54帖(じょう)ある『源氏物語』の1帖「初音」の中にある歌をモチーフにしてつくられたもの。木をベースに、漆や金・銀などで文様を描いたり埋め込んだりと繊細につくられた、当時では最高の技術だという蒔絵の料紙箱。さすが国宝の名にふさわしい美しさです。
世界的にも貴重!現存最古の源氏絵
国宝『源氏物語絵巻』
そのほか、世界的にも有名で圧倒的な人気を誇るのが、第6展示室で紹介されている国宝の『源氏物語』の絵巻。現存する最古の源氏絵で、原本の絵巻は大変貴重なため、保護の観点からもごく限られた期間でしか展示されておらず、普段はレプリカとパネル、そして映像での解説となっています。
とても優美で華やかに描かれた絵に囲まれ、平安時代にタイプスリップしたような気分になりますね!
第6展示室「王朝の華 ~源氏物語絵巻 ~」
特別展・企画展示の
「名古屋市蓬左文庫」と「本館」
名古屋市蓬左文庫(なごやしほうさぶんこ)
常設展示の新館をぬけて、そのまま次は蓬左文庫に進みます。
蓬左文庫は尾張徳川家の旧蔵書を所蔵する文庫で、その蔵書数は約12万点にのぼります。
こちらは名古屋市が管理しており、企画展が定期的に開催されます。
取材時は「名物」という企画で、さまざまな名物と認定された品が展示されていました。
中でもみどころは、尾張徳川家で一番大切な家宝の刀剣をはじめ、信長が持っていたという刀も。また珍しいものとして、当時の名物がいくらほどの価値であったかの折紙(現代でいう鑑定書)なども残っています。
こちらは「物吉貞宗(ものよしさだむね)」という脇指(わきざし)。
尾張徳川家で一番大切だという刀剣で、家宝の中でも筆頭にくるものだとか。家康が戦いに出る際、この刀をもつと必ず勝利したとされています。その後尾張徳川家初代義直に受け継がれました。
こちらは「津田遠江長光(つだとおとうみながみつ)」。信長が持っていたという刀で、本能寺の変後、明智光秀が安土城より持ちだし、家臣の津田遠江重久(つだとうみしげひさ)に与え、その後巡り巡って尾張家に……。
どういう想いでそれぞれの人の手に渡っていったのか、なぜ最終的に徳川家に伝わったのか……など、実際の刀を前にいろんな想像が巡るかもしれませんね。
当時の品がいくらほどの価値になるかの鑑定書など、珍しいものも……。
本館(第7~9展示室)
蓬左文庫をぬけると次は本館展示室に進みます。蓬左文庫や本館の展示室は年に10件ほど特別展や企画展を開催しています。
昭和10年に建てられた本館は、城郭を想わせるような帝冠様式の建築で、白亜の高い天井は開放感があり、歴史を感じさせる建物です。
蓬左文庫は刀剣がメインでしたが、本館では名物の茶の湯道具を展示。写真は、信長に献上されたという「唐物茶壺(からものちゃつぼ)」。手前の茶壺には封がされ、実際に中に茶葉が入ってるそうです。
そのほか貴重な名物が多数展示されていて、当時のこうした生活に密着した名物をながめていると、どういった想いでこれらの品々をつかっていたのかなど、想いを巡らせるのも美術鑑賞の醍醐味かもしれませんね。
人気の刀剣をモチーフにした
限定スイーツも楽しめるカフェ
たっぷり鑑賞したあとは、ひと息つけるカフェも併設。こちらでは通常のカフェメニューのほか、楽しい企画のスイーツもたくさん!
刀剣の名前に見立てた限定スイーツも!(写真のスイーツは現在は終了)※特別展や企画展にあわせた内容となります。詳細はお問合せください。
左の「本作長義(ほんさくちょうぎ)」と右の「鯰尾藤四郎(なまずおとうしろう)」にドリンクがセットになった、その名も「ちょぎずおワクワクセット(1,400円〜)」。
よく見るとフォークではなく、刀の形をした菓子切りでいただけるような演出も!
刀剣ワールドにたっぷり浸れそうですね。
ミュージアムショップは
刀剣好き必見の限定品も!
最後にご紹介するのは「ミュージアムショップ」です。新館入口の横に併設されています。
カフェのスイーツにも添えられていた「菓子切り」。刀剣の形をしていて刀剣好きにはたまらない品ですね。お土産にも喜ばれそう!
「蛇腹(じゃばら)便せんレターセット」も人気だとか……。
オリジナルのお香も豊富なラインナップ。
三河葵の紋をあしらった最中もお手軽でお土産にも喜ばれそう。
今回は刀剣や茶の湯道具など、武家に伝わる「名物」の品を中心にたとえば「刀剣」というと武器のイメージが強いですが、献上品やお嫁入り道具としての権力や財産としての意味もあったことがわかりました。
そしてこれだけの名品であるお宝の数々にも感動しますが、これらを陰で支え、大切に守り続けてきた人たちの想いと努力にも拍手を送りたい気持ちになりました。展示品の保存状況の良さがその証です。
そのほか美術館では、各種講座やこども教室なども開催。隣接する徳川園やカフェなどもあわせて、ぜひ楽しんでみてくださいね。
※企画展や展示品は季節ごとに変更します。詳細はWEBページでご確認ください。