曲線美で魅せる椅子、技継承を魅せる文化財復元。飛騨の家具メーカー「日進木工」が未来へつなげる匠の想い。
目次
受け継ぐものと生み出すもの、
すべては使う人のために
令和の幕開けとともに、日進木工の4代目代表取締役に就任した北村卓也さん。曽祖父の時代から受け継がれてきた想いを未来へとつなげます。
北村さん:「高山で家具づくりが始まったのが今から100年前。この辺りには森林が広がっていて、木材が豊富だったんです。日進木工は約75年前にスタートして、当時はスコップの柄やこたつの足などを細々とつくっていました。」
終戦後、間もなく到来した高度経済成長時代。日進木工は独自のシンプルデザインを考案し、脚もの家具の生産で一時代を築きました。
当時より、飛騨の家具の代名詞「曲げ木」の技術を取り入れ、変わらず美しいデザインを生み出し続けています。
北村さん:「硬い木を蒸して繊維をやわらかくすることで、木が曲がるんです。少しの変化でも割れてしまうので高度な技術が必要ですが、木材を削り出すよりも無駄がありません。曲げ木は環境負荷を減らす今の時代に合った製法ですね。」
また日進木工では、丸太からカットした木材を自社で乾燥させています。こうすることで商品に合わせてベストな木材が選別できるそう。
日進木工の椅子は、とにかく細身です。ショールームはメンズライクな設計になっていますが、家具のフォルムはどこか女性的。異なるイメージでも温かい雰囲気でまとまるのは、さすが日進木工のなせる技です。
北村さん:「椅子は毎日使うものですから扱いやすさが大切ですよね。日進木工には女性やお子さんでも片手で扱える3kg台の椅子もあります。北欧家具にならった”引き算のデザイン”を追求して、軽くてシンプルな商品を揃えています。」
もちろん厳しい強度試験もクリア。家具にはすべて10年保証がついているので、安心して購入することができそうです。
実際に椅子を製造する工程を見学させていただきました(一般見学についてはお問い合わせください)。
工場では、椅子1脚にとても多くの工程があることに驚かされました。こんなにたくさんの職人が携わって、手作業で椅子を仕上げているんですね。工場見学の前と後では、家具への見方が大きく変わるはずです。
名古屋城本丸御殿の建具の
復元工事を手掛けた現代の匠
日進木工を語る上で外せないのが「文化財の修復」です。平成30年、9年にもわたる名古屋城の本丸御殿の復元工事が終了。このとき、建具の復元工事を担当した会社こそが日進木工なのです。
実際の復元工事に携わった川上真吾さんにお話をお伺いしました。
川上さん:「歴史的価値のある建具を修復するには、文化財の保存修理という特別な技術が必要です。名古屋城本丸御殿の復元では、建具の担当として僕たちに声が掛かりました。」
例えばこれらは伝統技術の「組木(くみこ)」と呼ばれる技法で、いくつかのパーツを組み合わせて作られています。名古屋城本丸御殿では、文献や史料をもとに障子や欄間など数十種類の建具を納品したそうです。
組子細工のすべての部品は、釘や糊を使わずに組み立てられています。1/100ミリ単位で微調整され枠にはめこむ……気の遠くなる仕事です。
川上さん:「これは、とある貴重な蔵の扉です。大昔の職人がつくったものを僕が新しいものに作り替えているんですが、また未来の職人がこれを修復するかもしれないですよね。」
なんだかロマンのあるお話ですね。最近のニュースでこうした「伝統建築工匠の技」がユネスコの無形文化遺産に登録されると見たばかり。今後ますます注目される技術になりそうです!
北村さん:「飛騨の家具メーカーはたくさんありますが、木工連合会として横のつながりがあって仲が良いんですよ。若い木工職人も増えていますし、女性も多く活躍しています。これからも全世界に向けて、飛騨家具の素晴らしさを伝えていきたいですね。」
木工連合会では若手組の北村社長。創業70周年を機にリニューアルしたショールームをはじめ、ウェブ戦略やSNS発信に力を入れるなど、これまでにない情報発信を手掛けているそうです。