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岐阜県安八町在住のストリートアーティスト「RoamCouch(ロームカウチ)/ 小川亮」。2012年にノルウェーで開催されたストリートアート展を機に、各国で個展を開催されています。
また2014年からは故郷である岐阜県安八町を中心に、無償で壁画を描くプロジェクト「エモーショナル・ブリッジ・プロジェクト(Emotional Bridge Project)」を開始。小川さんが生み出すうつくしくロマンチックな作品たちは、新作を発表するたびに、国内外から高い評価を得ています。
Lifedesignsでは今回、小川さんが活動をはじめられたきっかけや想いなど、たっぷりとお話を伺ってきました。
▼後編はこちらから
【後編】岐阜県安八町を中心に、無償で壁画を描く「エモーショナル・ブリッジ・プロジェクト」。自転車でウォールアート巡りをしてきました!
病気をきっかけに
デザイナーからストリートアーティストへ
最初に経歴から伺いました。
小川さん:「僕は幼い頃から漫画の影響もあって、絵を描くことが好きだったんです。高校卒業後はデザイン会社に入社して、広告デザインの仕事をしていました。しかし、広告デザインの世界はクライアントの意向が第一です。プロとして理解をしつつも、これが本当にやりたいことなのかな?と理想と現実のギャップに悩んでいました。そんな中、体を壊し病気を患ってしまったんです。一時はまともに歩けないような状態でしたね。
そんなときに妻から「好きなことをやってみたらいいよ。」と言葉をかけてもらいました。自分の好きなことはなんだろう?と考えたときに、やはり絵を描くことが自分の原点であることに気付いたんです。」
小川さん:「最初は世間に注目してもらうため、SNS上でストリートアーティストたちの作品を模写した投稿やオリジナル作品の投稿をはじめました。少しずつ自分の絵が世間に認めてもらえるようになった頃、ノルウェーのストリートアート展へ出展する機会をいただいたんです。その展覧会をきっかけに、声をかけていただけることが増えていきました。」
浮世絵の技法を取り入れた「ステンシルアート」
−小川さんのアート手法「ステンシルアート」とはどういったものなのですか?
小川さん:「ステンシルアートはみなさんがよく知ってるところだと、イギリスを拠点とする匿名のストリートアーティスト「バンクシー」が有名だと思います。型紙をかぶせたキャンバスにスプレーを吹きかけて絵を描いていきます。ただ僕の技法は一般的な技法とは少し違って、浮世絵の技術を活かして、現代風にアレンジをしています。」
小川さん:「まずは、パソコンで下書きをすることからはじまります。そこから、色をつける場所ごとにステンシルをつくっていきます。ステンシルはすべて手切りでおこなっていくので、この作業が一番時間を要しますね。
以前は使用する色の数だけステンシルを起こしていましたが、最近では一枚で各色対応ができるようになりました。それでもキャンバスで20枚ほど、大きな壁画となれば100枚は超えます。だいたい、1カ月くらいで切り抜き作業をして、その後切り取った型紙を重ねていき、その上からスプレーで色付けをしていきます。
このとき型紙は設計図と同じ役目になるので、スプレーを吹きかけるときに失敗してしまうと、もう一度いちからやり直しが必要になってくるんです。すべての作業に集中力が必要になるので気が抜けません。」
小川さんが使用されているスペイン製のスプレー「montana94」。アトリエには300種類以上のスプレー缶が並びます。すべての色味を把握されているというのだから驚きです。
小川さん:「よく、どんなメッセージがあるんですか?と聞かれることが多いんですが、僕の作品にメッセージ性はないです。ただ純粋に楽しんでいただきたい、その想いで作品づくりをしています。老若男女問わず、絵を見た人が、なんかこの絵いいな、好きだなって。
見ている人が幸せな気持ちになったり、元気になってくれたりすることがうれしいんですよね。それだけで本当に十分です。だからこそ難しいものではなく、わかりやすく、親しみやすいものを目指して描いています。」