国際芸術祭「あいち2022」へ行ってきました!(愛知芸術文化センター)

国際芸術祭「あいち2022」へ行ってきました!(愛知芸術文化センター)

今回はご紹介するのは、現在開催中の国際芸術祭「あいち2022」。32の国と地域から100組のアーティストが参加する国内最大規模の国際芸術祭です。

その中から今回は、メイン会場である愛知芸術文化センターへ行ってきましたので、現地の様子をお届けしていきます。

国際芸術祭「あいち2022」とは?

国際芸術祭「あいち2022」は、2022年に愛知県で開催されている都市型の国際芸術祭です。会場はメイン会場の愛知芸術文化センターのほか、一宮市・常滑市・有松地区の4会場。現代美術、パフォーミングアーツ、ラーニング・プログラムなど、ジャンルを横断した最先端の芸術を発信しています。

今年のテーマは「STILL ALIVE」。愛知県出身で世界的に評価されるコンセプチュアル・アーティスト河原温氏が、1970年代以降電報で自身の生存を発信し続けた《I Am Still Alive》シリーズに着想を得ており、「あいち2022」では、この「STILL ALIVE」を多角的に解釈し、過去、現在、未来という時間軸を往来しながら、現代美術の源流を再訪すると同時に、類型化されてきた領域の狭間にも注目しています。

芸術表現を通して不確かさや未知の世界、多様な価値観、圧倒的な美しさと出会い、そこからいかに理想的で持続可能な未来を共につくりあげられるのかを考える国際芸術祭です。

気になるチケット代は?

・フリーパス
一般 3000円
学生(高校生以上)2000円

・1DAYパス
一般 1800円
学生(高校生以上)1200円

複数日にわたって「あいち2022」をまるっと楽しむなら、フリーパスがおすすめ!

メイン会場 愛知芸術文化センター

愛知芸術文化センターでは、地下2階と8階・10階の3フロアで展示されています。メイン会場のため、42組のアーティストの作品に出会えます。

まずはメインフロアの10階から行ってみましょう。

10階

白い大理石が印象的な愛知県美術館のロビーにあるのが、名古屋を拠点に活動するアーティスト大泉和文氏の作品。「可動橋/BH 5.0」。

高さ約0.7mのステージと長さ4mの橋桁から成るこのミニマルで無機質な跳ね橋からは、一時間あたり6回、橋桁が降りてきます。

偶然その機会に居合わせ、高さに躊躇せず足を踏み出そうと心を決めた人だけが、橋を渡ることができる作品です。

愛知県出身のアーティスト横野明日香氏の作品。長らくアトリエを構えていた愛知県瀬戸市の街並みを描いた絵画です。

社会とアートと自分をつなぐプラクティス「勝手にラジオ」。展覧会やアート作品とその周りにある状況を見て、自分でやってみる10代から20代に向けたプロジェクトです。

マルセル・ブロータース氏の作品「政治的ユートピアの地図と小さな絵画1または0」。国際芸術祭「あいち2022」の現代美術展冒頭に展示される本作品は、この芸術祭全体に通底する姿勢の表明とも言えます。

国際的に広く知られるコンセプチュアル・アーティスト河原温氏の作品「I Am Still Alive」は、今回のメインテーマになっている作品です。

河原温氏は1969年12月に自殺をほのめかす3通の電報をパリの展覧会に送り、その1か月後に最初の《I Am Still Alive》がコレクターのヴォーゲル夫妻に送られています。これらを成立させているのは各地の電報や郵便制度ですが、これを30年間送り続けた行為そのものは彼の生存の証となりました。

国際芸術祭「あいち2022」のテーマ「STILL ALIVE」の着想のもとになった本シリーズは、時間や空間を超えて、生存の根源的な意味を考えさせる最もシンプルかつ深遠な作品です。

ローマン・オンダック氏の「イベント・ホライズン」。1本のオークの木の幹を100枚に切断し、その年輪に応じた1917年から2016年までの歴史的な出来事を刻印した作品です。

奥村 雄樹《7,502,733》 2021-2022

和合亮一氏《詩の礫 2022》

ミシェック・マサンヴ氏の作品。マサンヴ氏はこれらの絵画を世界的なロックダウンの最中に制作。作品には、移動できない状態を強いられた内なる葛藤が表現されています。

リタ・ポンセ・デ・レオン《魂は夢を見ている》(2022)

リタ・ポンセ・デ・レオン《人生よ、ここに来たれ》(2022)

こちらの作品では、音板に書かれた言葉を自由に入れ替えて詩が作れる打楽器と、ある人物の人生の節目が綴られた擬音楽器。どちらも実際に触れて音と言葉が楽しめます。

8階

続いては8階へ。ここでは身体性やジェンダーの再考、死生観をテーマに身体を主題にした作品やパフォーミングアーツなどの作品が並びます。

入ってすぐの場所にあるのは、ディムート・シュトレーベ氏の作品「エル・トゥルコ」。

手描きアニメーション風に描かれた二人のキャラクターが対話しており、右側の人物は古代ギリシャ以降の人間の知性と批判的思考を代表するソクラテス。左側はAIキャラクターのフォン・ケンペレン。AIと人間の知性の関係を入口に、知識、真実、意味の生成とは何かを問いかけています。

笹本晃氏の新作インスタレーション/パフォーマンス「リスの手法:境界線の幅」。建具でできた2つのセットについているのは、障子とシャッター。

よく見ると、二重の障子の間には疑似餌やスポンジなどが隠され、扉には必要以上に多くののぞき穴が付いています。

単純なセットを動かしてみると、どちらが内側で外側かわからなくなり、また無数にあいたのぞき穴によって少し恐怖を感じるような不思議な感覚になりました。

アフリカ系コロンビア人であるリリアナ・アングロ・コルテス氏の作品。今日までに構築されてきたアフロ・アイデンティティに関する記録やイメージ、ステレオタイプに対して疑問を投げかけています。

巨大な黒い黒板は、クラウディア・デル・リオ氏の「生きる工夫」。

チョークや水というすぐに消えてしまう儚い画材を用いることで、個人的な悩みや深い思索でさえも描くことができます。
参加者はだれでも好きなことを描くことができるので、ぜひ会場で描いてみてくださいね。

アーティストユニット、ミルク倉庫+ココナッツによるインスタレーション作品。愛知芸術文化センターの建物自体を呼吸器官に見立てた作品になっており、誰でも自由に「立体回廊」を歩くことができます。

荒川 修作+マドリン・ギンズ「問われているプロセス/天命反転の橋」。

この作品は、フランスのエピナール市を流れる河にかける橋として構想されていましたが、実現には至らなかったプロジェクトです。荒川修作+マドリン・ギンズの中心的コンセプト「天命反転」の礎となる作品であり、その核心は後の「養老天命反転地(1995)」や、「三鷹天命反転住宅(2005)」に引き継がれています。

橋は21の装置の連鎖からなり、それぞれ「光の身体的推量」、「共同体的凝視のプロセス」などと名付けられ、いずれも特定の身体的な行為を強いるような造作が仕組まれています。

バイロン・キム氏が2001年にはじめた連作「サンデー・ペインティング(日曜絵画)」シリーズ。会場では、2020年2月から2021年2月にかけて描かれた52点が展示されています。

毎週日曜日の空を描き、その日の気持ちを記した短いテキストを書き込んでいます。ちょうど新型コロナウィルスが世界中に蔓延し、先の見通しが全く立たない未曾有の時間に、キムが家族や友人、自身の制作などパーソナルな対象と、カリフォルニアの山火事、アメリカ大統領選、ワクチン接種など社会的な動向との間で翻弄され、葛藤しながらも誠実に時間を過ごしてきた様子を窺い知ることができます。

個人的にもとても心惹かれた作品でした。

母国のマリとキューバで絵画を学んだアブドゥライ・コナテ氏の作品。

先住民族セヌフォ族のミュージシャンの衣装に着想を得て、短冊状にしたマリ産の綿織物を重ねて作られた作品には、西アフリカのテキスタイルの伝統に根差しながら、パレットから絵具を選ぶ画家の意識が表れています。

渡辺 篤(アイムヒア プロジェクト)「同じ月を見た日」。コロナ禍に孤独感を抱く人々から月の写真を募り、メンバー制で進められてきた企画作品です。

地下2階

縄(愛知県芸チーム initiated by 奈良美智)の展示風景

最後は地下2階へ。ここでは、本芸術祭参加作家では最年少の小野澤峻のインスタレーションをはじめ、美術家の奈良美智氏が参加する縄(愛知県芸チーム initiated by 奈良美智)の作品が展示されています。

縄(愛知県芸チーム initiated by 奈良美智)は、奈良美智の頭に浮かんだ「三英傑」という言葉と、国際芸術祭「あいち2022」のテーマ「STILL ALIVE」に応答するかたちで、奈良の母校・愛知県立芸術大学にゆかりのある若手作家や学生たちが結成したコレクティブです。

展示室のなかに積み上げられている木製のクレートは、それぞれの武将にまつわる言い伝えやエピソードに着想を得たイメージを一時的に保存したコンテナ。
中をのぞいてみると、「現在」と「三英傑」とを結びつけたアーティストたちによる表現が残されていました。

また映像の展示では、三英傑とは異なる時代を生きる解釈者たちが、一定のルールに基づいてコンテナを積み替えるゲームに興じています。

今回は国際芸術祭の様子をご紹介しました!
愛知県内でこれだけ大規模な芸術祭が開催されるのも10月10日までです。
ぜひこの機会に足を運んでみてくださいね。

 

スポット詳細

【あいち2022】
https://aichitriennale.jp/

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