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一説には江戸時代までさかのぼると言われる名古屋の喫茶文化。数ある名古屋の喫茶店の中で、創業50年(2021年時点)を迎える金山の老舗喫茶店「ブラジルコーヒー」は、今もなお進化し続けています。
街の雰囲気は変われども、お店は50年前とほぼ変わらず、今なお愛され続ける魅力に迫ってきました。
名古屋のターミナル駅のひとつ「金山駅」。多くの人が行き交う主要な駅ですが、金山駅3番出口から徒歩1分、大津通り沿いの角地という立地抜群の地にお店を構えるのが「ブラジルコーヒー」です。
創業は1971年。お店は雑居ビルの1階にあり、うっかりすると通りすぎてしまいそうなほど街に溶け込んでいます。
入ってすぐ左手には漫画がギッシリ!
右手にはいろんなお店のフライヤーやチラシなどが雑多に並べられています。
正面には職人さんにつくってもらったという、縁起のよいカラフルなデザインの大漁旗がお出迎え。
オープンと同時に次から次へと来客があり、ほぼ途絶えることがない店内。サラリーマンから年配、カップルから若い女性、常連さんまでと客層の幅広さに驚きます。
天井を見上げると懐かしのミラーボールが……。ディスコを謳歌した世代には、バブルの象徴でもあります(笑)
そのほか昭和を感じさせるレトロな看板もなぜか店内に……
ちなみに店名の由来をお聞きすると、「銀ブラ」ならぬ「金ブラ」を目指したのではないか……と話すのは店主の角田さん。「銀ブラ」と聞くと銀座をブラブラする……という認識ですが、本来は「銀座でブラジルコーヒーを飲む」というのがステイタスで、そこから生まれた言葉が語源のようです。
そのため、先代が銀座ではなく、ここ金山でブラジルコーヒーを飲む「金ブラ」目指したことから名前がついたとか……。カッコいいですよね!
1日楽しめる幅広いメニューと自家焙煎珈琲
定番モーニングに+300円でカレーも追加OK!
名古屋の喫茶店といえばモーニングは絶対外せないところ。ドリンクの値段にパンや卵がつくのが定番です。
ブラジルコーヒーのモーニングもドリンクの値段に厚切りトーストとゆで卵、サラダがつき、さらにトッピングにはジャムまたはあんこが選べます。(写真)
それでもお腹が満たない……という方は、+300円で茶碗サイズのカレーを追加することもできます。ほどよいスパイシーさがクセになり、さらに食欲が進みそう。これで1日を元気に迎えられそうですね!
ランチは選べる日替わり又は定番メニューから
続いてランチは、日替わりが2~3種類、もしくはそれ以外の定食メニューから選べます。
この日はCランチは終わってしまっていたので、Aランチを注文してみました。
喫茶店のランチというより、カフェランチのよう。一品ずつ盛られたプレートに、見た目の彩りも綺麗!中でもカニカマとコーンのクリームコロッケは、中のクリームも手づくりで美味しく、食べ応えも十分!和洋中と味付けもバランスよくて、女性には特にうれしいランチです。(ごはん大盛り自由)
ちなみにランチは通常の11時~14時と、夕方16時~21時30分も注文OK!
3代目が復活させた鉄板スパゲティ
名古屋メシのひとつに鉄板スパゲティがありますが、ブラジルコーヒーでは以前中止していた鉄板メニューを、3代目で店主である角田さんが復活させました。
中でもイチ押しは「鉄板インディアンスパゲティ(850円)」。インディアンとはカレーのことで、もちもちとした麺にほどよいスパイシーなカレーとの相性がやみつきになる美味しさです。
そのほか定番のナポリタンやミート、あんかけなどもありますよ。
自家焙煎珈琲ほか、喫茶店ならではのクリームソーダも
珈琲は、2018年から店主自らが焙煎して提供するようになりました。豆はコロンビア産を使用。季節や天気、気圧で焙煎時の熱の入り方が変わるので、調整をしながら焙煎されているそう。定期的に焙煎の勉強も続けていて、常に安定した味の提供ができるように心がけています。
豆の販売も。テイクアウトではコロンビアのほか、マンデリンもあります。(コロンビア100g/600円、マンデリン100g/700円)
そして喫茶店といえば「クリームソーダ(480円)」。この毒々しい鮮やかな色のソーダの上にこんもり盛られたバニラアイスの組み合わせに、思わず心トキメキます。
時代にあえて取り残されてみようと思う
現在3代目の角田(つのだ)さんにお話を伺いました。
– 角田さんはいつから3代目に?
角田さん:「お店を継いで13年になります。18歳のときからバイトで手伝ったりしていましたが、その後旅に出たり、他で仕事をしたりして戻ってきました。一時期は今池の
「TOKUZOー得三ー」というライブハウスでお世話になった経験をいかして、この店でも週末にはライブイベントを定期的に開催しています。
以前から来ている常連さんのほか、ライブイベントをするようになって、若い世代のお客さんも増えましたね」
– お店の経緯を教えてください
角田さん:「もともとは祖父が違う商売をしていましたが、喫茶のノウハウを知っている友人とはじめたのがきっかけです。かつてのお客さんも今では年をとって見ない人もいますね。
普段は厨房にいるのでお客さんと直接関わることは少ないですが、店内はチェックしてます(笑)。いろんな客層の人がいるので、そういった人たちが集うこの空間を目の当たりにするのが嬉しいですね」
– 50年も金山の一等地で続けられるってすごいですね。
角田さん:「家賃を払うのが大変です(笑)。時代とともに、周りや風景は変わっていくけど、あえてここは取り残されてみようかなと……。それが個性につながるんじゃないかと。
あと、とにかくやり続けることが大事かなと思っています。その中で少しずつ変わりながら、新しいものをまた生み出していければいいかなと。」
「あと5年は続けたいな……」と漏らす角田さん。
自然体で肩の力が抜けたスタイルだからこそ、お客さんも心地よく通え、どんな人もあたたかく受け入れてくれる魅力あるお店につながっているんだなと感じました。
ピアノや楽器、アンプなどが店内のあちこちに見受けられます。角田さん自身も音楽をされてて、ギターやボーカルを担当されているそう。
LPレコードも無造作に置かれています。探すとお宝ものがでてくるかも?気に入ったものがあれば購入も可能。
週末に定期的に開催されるライブイベントのフライヤーやチラシ。気になるものはチェックを!
<50周年記念イベント>
10月30日(土) 「サンキューバラカン!!」
出演:ピーターバラカン
OPEN 18時~ START19時~
チケット 当日3500円+1ドリンク(別途要)
お店にいると、タイムスリップしたような懐かしさと、スローな時間が流れるような不思議な感覚に。時代のスピードや変化は早いけれど、ちょっと疲れたり、立ち止まったりするときにやさしく迎えてくれる、そんなお店「ブラジルコーヒー」。今後もある意味取り残された独自のスタイルで、新たな時を刻んでいってほしいと願います。