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無表情だけど、なんだかクセになり、どこか愛らしさのある少女たちを描く、豊橋市在住のアーティスト「石松チ明(いしまつちあき)」さん。石松さんは、一般的に美しいとされない女性「不美人画」を描くことで、日本社会における、審美の多様性の重要さを表現されています。
2017年から本格的にアーティスト活動を開始し、2019年には歴史ある美術雑誌『月刊美術』主催の「美術新人賞デビュー2019」入選。
その後、「第10回アダチUKIYOE大賞 第10回記念特別賞」「ペーターズギャラリーコンペ2019大賞 (上田三根子賞・藤田知子賞)」など、2年間で9つもの賞を受賞するなど、アート関係者から高く評価されている新進画家です。
絵に励まされたことをきっかけに
今回石松さんへお会いすべくライフデザインズ編集部が訪れたのは「名古屋三越」。美術画廊にて、名古屋では初となる個展が開催されていました。
− 最初に画家になろうと思ったきっかけについて教えてください。
石松さん:「昔から絵を描くことは好きでしたが、検察官を目指して大学では法学部を選考していたんです。ところが、司法試験に向けて勉強している中で、次第に心のバランスが上手くとれなくなってしまったんですね。そんなときに、好きだった絵が自分を励ましてくれて、絵を描いてく中で次第に絵の道へ進みたいなって思うようになっていきました。
芸大を出たわけではないので、基本的には独学です。一時はイラストレーターとしてデザイン会社に勤務していましたが、2017年から本格的に活動をはじめました。」
世の中を少しでも優しい場所にしたい
−作品のテーマ、また不美人画を描かれたきっかけを教えてください。
石松さん:「昔から、“マゾヒズム”に強い興味がありました。かわいそうな人に惹かれたり、美しくて、毒があるものが好きだったり。なので、肉体的・精神的苦痛から満足感を得るマゾヒズムを作品を描く上での大きなテーマにしています。
不美人画を描くようになったきっかけは、世の中を少しでも優しい場所にしたいと思ったんです。あるとき、高校生くらいの男の子たちに、”可愛くない”って言われたことがあって、その言葉にすごく傷ついたし、かなり引きずったんですが同時に美しいってなんだろう?って感じたんです。」
石松さん:「この世は美形とブサイクだけで構成されてるわけじゃありません。社会における「美」の基準ってすごく狭い気がしていたんですね。世の中には私たちの知らない美しいものがたくさんあるのに、それに気づかず通り過ぎしてしまうことってたくさんあります。
だからこそ私は、外見も内面も美しくない「不美人画」を描くことで、世間が良しとしないもの。現実にはそこにあるのに、綺麗な世界において仲間はずれにされているものたちにきらめきを見出したいと思いました。作品を通して、少しでも世の中の意識を変えていければと思っています。」