名古屋市西区、住宅街近くの並木通り添いに店舗を構える「choco rico(チョコリコ) – Bean to Bar Chocolate Lab.-」。
カカオ豆からチョコレートになるまでの製造工程を自社工房で一貫して行う「Bean to Bar(ビーントゥバー)」という製造方法でチョコレートづくりを行い販売をしている、東海エリアでも数少ないクラフトチョコレートが味わえるお店です。
目次
カカオ豆の輸入・選別・焙煎・粉砕・配合・成形まで、すべてを一貫して行っているchoco rico。
そのチョコレートは、カンボジア産のオーガニックカカオ豆と天然パームシュガー以外は何も使っていないというから驚きです。口に含むとカカオ豆本来のフルーティーさや香ばしさ、奥深さが味わえ、ひと口がとても贅沢に感じられます。
香料や植物性油脂なども一切使っていない、天然由来成分100%の安心の美味しさです。余分な雑味のない豊かな香りと風味に、何度も通うファンの方も多いそう。
カカオ豆もパームシュガーも、カンボジアの農園で作られた農薬や化学肥料を使わないオーガニックな素材です。中間業者に一切頼らないダイレクトトレード(農園からの直接仕入れ)を実践しており、輸入もすべて自らの手で行っています。
カンボジアに1ヵ所しかないカカオ農園から直接オーガニックカカオ豆を輸入し、天然のパームシュガーを作っている村から直接パームシュガーを輸入。すべて生産者だけでなく運んでくれる方の顔もわかる素材です。
店舗併設の工房でつくった
チョコレートがずらり
店舗に入るとたくさんの商品が並びます。
工房内で作ったチョコレートやオリジナルのグラノーラなど豊富な商品ラインナップ。カカオニブやパームシュガーなどの原材料も購入できます。
商品の一部をご紹介。
1本5gのBarタイプのものやタブレット(板チョコ)、ボンボンショコラや生チョコ、マンディアンやコーティング系など、豊富なアイテムが揃っており、訪れる度に様々なビーントゥバーチョコレートを楽しむことができます。
Barタイプには、カカオ100%、86%、72%、ビターミルク、カフィアライム、ジンジャーの6種類があり、それぞれの配合でのチョコレートの美味しさをダイレクトに味わえるのが魅力。
アマンドショコラはキャラメリゼしたオーガニックアーモンドにミルクチョコレートを何層もコーティングした人気の品(780円)。
ボンボンショコラは、カカオの味わいをストレートに感じられるビターとミルクに加え、チョコレートとのハーモニーが美味しいコーヒー、ラムレーズン、グランマニエ、黒ごまの全6種類(350円〜)。
ZAKU80は、カカオニブ(ローストしたカカオ豆の実の部分だけを細かく砕いたチョコレートの原材料)がザクッとアクセントになった、カカオ豆のストレートな味わいと食感を楽しめる品。パッケージには点字新聞をアップサイクルして使用しており、岐阜市の視覚障害者の方たちが製作しています。
他にもジェラートやグラノーラなど様々なアイテムがあり、その場でも、持ち帰っても色々楽しみたくなるラインナップに心が踊ります。
ジェラートのビターチョコレートフレーバー。ジェラートは、愛知県東郷町の人気イタリアンジェラート専門店「RONO」に製造を依託しています。無料でカカオニブのトッピングができるので、ぜひ試してみては。
はじまりはカンボジア。
チョコレートでみんなを笑顔に。
カカオで世界を幸せに。
ご夫婦二人三脚で営まれているchoco ricoの構想がはじまったのは2018年。2014年にご主人の千晃さんがカンボジアへ訪れたことがきっかけです。
かねてから途上国支援活動に関わってきた千晃さんはカンボジアの方々と直接触れ合う中で、貧困地域には経済的な理由から学校に通えない子どもたちがたくさんいることを知ります。
千晃さん:「何か自分にできることはないか……と考える日々の中で、カンボジアの気候や土地がカカオ栽培に適していることが分かったんです。カンボジアで自社農園をつくりカカオ豆を栽培すれば、そこに雇用が生まれる。親が経済的に自立できれば子どもたちが学校に通えるようになる。その仕組みをつくるのであれば、日本でチョコレートを作れるようになっておくことが、きっと大きなアドバンテージになると考えたんです。」
2018年にカカオ豆で事業をはじめることを決めた千晃さん。そして、2019年にはカンボジア国内で唯一のカカオ農園を経営している方と出会い、「チョコリコ農園」をはじめるための苗を確保できることに。その後すぐに奥様の由利子さんに言ったのが「ショコラティエになってくれない?」
由利子さんはふたつ返事で了承。まるでプロポーズのようなやりとりですね。「面白い!と思って♡」とその時の気持ちを語る由利子さん。すぐに仕事を辞め、チョコレートづくりを学びはじめます。
約2年の歳月、トライ&エラーを繰り返し
たどり着いた美味しいチョコレート
約1年をかけ、ショコラティエやチョコレートマイスターの資格を取得した由利子さん。
その後オープンまでの1年間、納得のいくBean to Barチョコレートを作り上げるために工房にこもり、昼も夜もチョコレート作りに明け暮れる日々。
由利子さん:「カカオ豆の焙煎の方法から、練り上げ、熟成など、どこかでちょっと時間や方法が変わるだけで味が変わります。昼夜を問わずチョコレートと本気で向き合い、時に心が折れかけながら、チョコレート作りに没頭しました。」
千晃さん:「オープンまでに当初の予定よりもかなり多くの時間を費やしましたが、今では誰にでも自信を持っておすすめできるチョコレートがご提供できると自負しています。美味しさは人の味覚次第ですが、少なくとも僕たち夫婦とスタッフはチョコリコのチョコレートが世界一美味しいと思っています。」
手間暇を惜しまず手をかける。
1つの工房でチョコレート作りのすべての工程を行うBean to Barでは、その日の気温や湿度、1つの工程にかける時間やカカオ豆の状態など、さまざまな条件や要因がチョコレートの完成度に大きく影響を及ぼします。
そのため、由利子さんは毎日定休日も工房に入り、いつでもクオリティを一定にするため気温や湿度の変化に合わせて少しづつ調整しています。
また、カカオ豆の選別、洗浄も手作業。カカオ豆の粉砕も、カカオニブ(細かく砕いたカカオ豆)とハスク(外皮)、ファイン(内皮)に分離する工程を4回ほど繰り返した後、さらに目視で丁寧に胚芽まで取り除きます。
もうひとつ、チョコレートの材料に欠かせないのが砂糖。choco ricoでは一般的な白砂糖は一切使わずカンボジア産の天然パームシュガーのみを使用しています。カンボジアの農村に直接製造を依頼し、カカオ豆同様ダイレクトトレードで直接輸入しています。
日本ではあまり馴染みのないお砂糖ですが栄養価もとても高く、まろやかな味わいに千晃さんが一発で惚れ込みました。しかしチョコレートに使用するには溶けづらく、試行錯誤の末たどり着いたのは1時間ほどかけてゆっくりと手作業で入れ続ける方法。
5台ある攪拌機は交代で毎日稼働し、パームシュガーも都度一時間かけて手作業で投入しています。
「チョコリコ農園」のオーガニックカカオ豆で
チョコレートづくりを。
今後チョコリコ農園で栽培するカカオ豆は全て、千晃さんが2019年に現地に植えた最初の苗を育てた「マザーツリー」から収穫したカカオの種で作った苗のみを植えて育てていくそう。
千晃さん:「カンボジアの現地の人たちには、もうちょっと待ってね、って話しているところ。地雷被害者や貧困層を直接雇用して、その家庭の子どもたちが学校に通えるような仕組みを作るから待っててね、って。いつかチョコリコ農園でたくさんのカカオ豆を生産できるようになって、1人でも多くの人を雇用し、1人でも多くの子どもが学校に通えるようになれば。
そして、choco ricoで使うカカオ豆を全てまかなうのはもちろんのこと、チョコリコ農園のカカオ豆を世界に流通させていき、choco ricoのチョコレートづくりも一緒に世界に伝えていけたらいいな。」
チョコレートの製造販売を一貫して行うだけでなく、カカオ豆の栽培・収穫・加工・輸出まで手がける準備も着々と進んでいるchoco rico。
名古屋のchoco ricoから世界で愛されるchoco ricoになるのもすぐかもしれません。