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創業昭和5年、父子三代続く工務店「富田製材」。岐阜県美濃加茂を中心に、地域に愛され支えられ、本物の木の家をつくり続けています。どのような想いで家づくりをし、地域と向き合っているのか、代表取締役の酒向和幸さんにお話を伺いました。
父子三代続く、富田製材の家づくり
この日も午前中は現場に行かれていたという酒向社長
元宮大工の先代に続き、父子三代で家づくりに取り組んでいる富田製材。酒向社長は、建築の専門学校を卒業した後に、愛知県春日井市の工務店に3年ほど勤め、ご実家に戻って来られたそう。
酒向社長:「今の子供たちはキャリア体験や、インターンシップなどの職業体験など色々な職業を知れる機会が本当に多いですよね。しかし、僕たちの世代はそういうのはなく、身の回りの親や親戚の話を聞いて、そういう仕事があるんだと知るのがほとんどでした。今よりも世間が狭く、情報も限られていましたからね。私も小さい頃、夏休みや休日は、父親とよく一緒に現場に行ったりしていました。そういう経験もあって、自然と建築の道に進みました。小学校の頃の文集には、将来の夢は”大工さん”と書いていましたね。」
ご自身も富田製材で建築した家に住まわれているそう。奥様、21歳の息子さん、18歳の娘さんがいらっしゃり、息子さんは今は名古屋で建築の専門学校に通われているそうです。
先代から受け継がれる匠の技
図を書きながら、丁寧に教えてくれる酒向社長。
先代のお爺様、二代目のお父様と脈々と受け継がれてきた富田製材。家族で守り続けてきた家づくりの技術は、今でもしっかりと生かされています。
酒向社長:「例えば、通し柱の立て方。家というものは、基礎があって、その上に土台があって、その上に柱がのります。木というのは、上からの垂直荷重には強いんですよ。ただ繊維に対して横から荷重にはなかなか弱いんです。通し柱という1階〜2階までの長い柱を土台に載せると、長期間経つと、建物の荷重で下がってくるんです。そうすることによって、床が下がったり、建具が動かなくなったりします。私たちの通し柱というのは、基礎まで落とします。そうすることで、上からの荷重をダイレクトに基礎に伝えてあげる。こうした細かな技術が、長期間安心して暮らしていただける家づくりにつながっています。」
その証拠に最近担当したお家で、こんな嬉しいお声があったそうです。
酒向社長:「先日、約50年前に建てられたお家の建て替え新築を行いました。お話を聞くと、取り壊すお家はうちの先代がつくったものでした。50年前というと、初代と二代目である父が現役時代につくったものです。その時の解体屋さんがこういう風に話をしてくれたんです。『この家はいい家だね』と。何がいい家なのかと聞くと、『この家は建具が全部外れる。普通は50年も経つと、建物が下がったり、材料が伸び縮みして、建具が動かなくなったり、外れないことが多いけど、この家の建具は全て外れた』と言っていただきました。」
家づくりに真剣だからこそ、デメリットも伝える
ショールームの床材はスギ材です。
お話を聞きながら、酒向社長の家づくりに対する真剣な姿勢が強く伝わってきました。その真剣さ、真面目さはお客様に対しても変わりません。富田製材には標準仕様という考え方はありません。素材、仕様、一つ一つのメリットもデメリットも伝えているそう。
酒向社長:「断熱材、床板も種類によってメリット・デメリットがあります。うちでは、そのどちらもお伝えし、お客様に最終決断していただいてています。例えば、床材でも色々あります。足の裏はすごく敏感で、柔らかい材種だと、足から伝わってくる感覚も柔らかく、冷たさもを感じないんですよ。ただ、柔らかいので、傷つきやすいというデメリットがある。逆に硬い材種は、どうしてもひんやり感があリますが、傷は付きにくいです。色や風合いだけでなく、こうした木のそれぞれの特徴もお話させていただいています。」
1階は節のないもの、2階はコストを抑えて節のあるものにされる方が多いそう。
今回お話を伺ったショールームも木の香りがふわっとして、とても心地が良い空間でした。富田製材の床材は全て無垢を使用されているそう。
酒向社長:「合板は一切使わないです。コストが厳しいというお客様でも、床だけは1階、2階共に無垢にしませんか?とご提案しています。仕上げに関しては、ウレタン塗装、自然塗装、ワックスの三種類です。例えば、ウレタン塗装は、膜をつくるので、水が染み込みにくく、お手入れのしやすさとしてはおすすめです。しかし、膜をつくること=呼吸をしないことになるので、せっかくの無垢の良さが若干失われてしまいます。『お手入れ面を気にされる=ウレタン塗装をおすすめする』のではなく、こうした特色もしっかりお伝えさせていただき、お客様に選んでいただいています。」