【展覧会レポート】三重県立美術館で開催された『デンマーク・デザイン展』へ行ってきました!
目次
第3章オーガニックモダニズムーデンマーク・デザインの国際化
1950年代、デンマーク・デザインは他の北欧諸国とともに黄金期を迎えます。中でも、アルネ・ヤコブセン、ハンス・J・ウェグナー、フィン・ユールらの「オーガニック・モダニズム」と呼ばれたデザインは、手仕事の良さと量産性のバランスを兼ね備え、遊び心や温かみに溢れていました。
第3章では、誰もが一度は目にしたことがあるデンマークを代表する巨匠らが手掛けた家具をはじめとする、デンマーク・デザインの数々を紹介しています。
展示コーナーでは、実際に使われている写真を背景に、それぞれの巨匠たちの家具やインテリア雑貨を見ることができます。
オーガニックモダニズムを代表するデザイナーの一人である、フィン・ユールが手がけた家具。彼は、他のデザイナーたちとは一線を画し、芸術品として家具を捉えていました。どの家具も彫刻のように滑らかな曲線、どこから見てもうつくしいフォルムが大きな特徴です。
彼が初期にデザインした「No.45 イージーチェア(写真右)」は「世界で最も美しいアームを持つチェア」と評されています。また、写真左のチーフテンチェア(酋長の椅子)は、彼の代表作。デンマーク国王が腰掛けたことでも知られています。 どこから見てもうつくしく、ディテール・シルエット・繊細かつダイナミックなデザインは”家具の彫刻家”と言われるフィン・ユールならではのデザインです。
その他にも、ハンスJ.ウェグナーが手がけた「Yチェア」や「ザチェア」、アルネ・ヤコブセン、バアウ・モーウンスンの家具など、デンマーク・デザインに欠かせない巨匠たちの作品が勢ぞろい。
アルネ・ヤコブセンが、家具や照明、カーペットやドアノブ、カトラリーにいたるまですべてのデザインを手がけた「SASロイヤルホテル」で使われていたものも展示されていました。
「エッグチェア」や「スワンチェア」も、このホテルのためにつくられたのだとか。カトラリーまでデザインしてしまうのは、とても驚きました。
近代照明の父と呼ばれるポールへニングセンの照明。中でも、名作照明としてのデザイン・アイコンの地位を確立した、PHアーティチョークは圧巻でした。微妙にカーブした72枚の羽根を持っており、100種類以上のパーツで構成されています。一台を生産するのに合計25人の熟練工の手が必要とされるのだそう。
展示されているものの中で、一際目を引いたのが、革新的なデザインと近未来をイメージさせる空間デザインで名を馳せた、ヴェルナー・パントン。1960年〜70年代におけるポップカルチャーの美学を表す存在とされています。
ポストモダニズムと現代のデンマーク・デザイン
デンマーク・デザインの名作とその美点は20世紀以来、さらに洗練されていきます。現在のデザイナーたちもまた、伝統を受け継ぎながら新しい製品をデザインしています。最終章では、世界で活躍するデザイナーたちによる、デンマーク・デザインの今を紹介しまています。
展覧会では、実際の名作椅子に座れるコーナーもありました。なかなか座る機会のない、椅子に座れるとあって、みなさん嬉しそうに体験されている姿が印象的でした。
近年人気を集める北欧デザインですが、近代から現代までのデンマーク・デザインが見られる機会はなかなかないので、大変貴重な展覧会でした。デンマーク・デザイン展は終わってしまいましたが、三重県立美術館では、さまざまな企画展を開催していますので、ぜひ行ってみてくださいね。