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2018年11月17日から岐阜県多治見市で開催されている「フィンランド陶芸展」。これまで日本では、食器をはじめとするプロダクト・デザインを中心に紹介されてきましたが、本展は日本で初めてフィンランド陶芸を体系的に紹介したものです。フィンランドの陶芸とはどのようなものなのでしょうか。
みどころをピックアップしてご紹介していきます!
本展は、岐阜県多治見市にある「セラミックパークMINO」の中にある「岐阜県現代陶芸美術館」で開催されています。名古屋市内から車で約1時間。土日はJR「多治見」駅からコミュニティバスが運行しています。
本展は、フィンランドと日本の外交関係樹立100周年を記念して開催されました。日本で初めてフィンランド陶芸を体系的に紹介している展示会です。黎明期(れいめい)期から最盛期ともいえる1950年代〜60年代までの名作が紹介されています。
「フィンランド陶芸の萌芽」「近隣諸国の影響を受けて」「フィンランド陶芸の確立」「フィンランド陶芸の展開」「プロダクト・デザイン」の5章によって構成しています。
フィンランドの美術・工芸は、1900年のパリ万国博覧会で高く評価されました。当時フィンランドはロシアからの独立を目指していました。博覧会での成功は、そんなフィンランドの人たちに誇りを自信を懐かせ、建国の原動力となったのだといいます。そして、同時にフィンランドの美術・工芸の活性化も促しました。
陶磁器の発展の中心となったのは、美術工芸中央学校とアラビア製陶所。特に1932年に設立されたアラビア製陶所の美術部門では作家に自由な創作が許され、数々の傑作が生み出されていきました。
アルフレッド・ウィリアム・フィンチ《花瓶》|1897-1902 年|アイリス工房
《花瓶“カレヴァ”》1906 ‒1914年|アラビア製陶所|コレクション・カッコネン
本展のタイトルは「芸術家たちのユートピア」。国をあげて陶芸を盛り上げようとする取り組みは、まさにユートピアのようだったのだといいます。 大量生産品の製造に関与することなく、自由な作品制作が許されていました。釉薬(ゆうやく)などの材料や、窯も好きなだけ使うことができるという、まさに作家にとっては夢のような場所。
そんな環境のなか生み出された作品たちは、これまでにない自由な表現ばかり。20世紀中期には、世界的に影響を及ぼす存在にまで成長をとげました。日本の工芸界にも大きな影響を与えました。
展覧会を見学する中で、女性作家が活躍していること、そして動物や植物といった自然をモチーフにしているものが多いという印象を受けました。またわずか半世紀という短い時間で、これだけフィンランド陶芸の文化が発達したのは、国をあげて工芸を豊かにしていこうという動きがあったからこそ。