【展覧会レポート】岐阜県現代陶芸美術館で開催中の「フィンランド陶芸展」
目次
作家をピックアップしてご紹介
ここからは、何名か作家をピックアップしてご紹介します。
ミハエル・シルキン(1900-1962)
ミハエル・シルキン 《彫像(梟)》1950 年代|アラビア製陶所|コレクション・カッコネン| ©KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo,2018 C2428
こちらの表情豊かな動物の彫像は、1936年よりアラビア製陶所にて制作を手がけたミハエル・シルキンのもの。
土で形づくった動物や人物の彫刻が代表作。動物をモチーフにした作品が多いのも特徴です。愛らしく繊細な表現の作品に、多くの人が足を止めていました。ミハエルは陶磁器の専門的な訓練は受けていません。だからこその概念にとらわれず、ユーモアを交えた表現は、大変な人気となりました。
キュッリッキ・サルメンハーラ(1915-1981)
キュッリッキ・サルメンハーラ《壺》|1957 年|アラビア製陶所|コレクション・カッコネン
こちらは、キュッリッキ・サルメンハーラの作品です。
彼女の特徴は、轆轤(ろくろ)の技術の高さ。こちらの壺も極限まで追求された造形がとても美しい作品です。もうひとつは、土や釉薬(ゆうやく)をすべて自ら調合していたというところ。通常であれば、釉薬担当の職人がつくりますが、彼女はそうした材料にもこだわることで、ふさわしい質感や形態を探求し続けました。
残念ながら、不慮の事故によって陶芸家としてのキャリアはわずか十数年でした。しかし、その後も研究者や指導者として国内外で活躍し続けたのだといいます。
ビルゲル・カイピアイネン(1915-1988)
ビルゲル・カイピアイネン|《飾皿(テーブルのある部屋)》|1980 年代|アラビア製陶所|コレクション・カッコネン ©KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2018 C2428
本展のメインビジュアルにもなっているビルゲル・カイピアイネンの作品。
日本では、アラビアの「パラティッシ」シリーズのデザインが知られていますが、生涯にわたり数多くの芸術作品もつくっています。幼少の頃の記憶をもとにしたデザインが多いのが特徴です。カイネピンは持病のため轆轤(ろくろ)がひけなかったのだそう。だからこそ、陶器製ビーズを使った立体作品など、彼独自の表現が生まれました。
ルート・ブリュック(1916-1999)
ルート・ブリュック《陶板「聖体祭」》|1952 ‒1953 年|アラビア製陶所|コレクション・カッコネン| ©KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2018 C2428
ブリュックは、グラフィック・アートを専攻していました。グラフィックを学んだ彼女ならではの、趣のある線と釉による面的表現が特徴です。釉薬を何度も重ねる作風も、彼女ならでは。1951年のミラノ・トリエンナーレではグランプリを受賞。
現在でも彼女のファンは多く、日本でも個展が開かれるほどの人気です。
フィンランドのプロダクトデザイン
プロダクトの一部は、岐阜県現代陶芸美術館内のミュージアムショップでも購入可能。
そして、アラビア製陶所では、芸術作品と並行してプロダクトデザインも製作されていました。特徴としては、シンプルで機能的ながらも温かみのあるデザイン。シンプルなフォルムに、花やフルーツのモチーフが華やかに描かれた「パラティッシ」、イッタラ社のティーマシリーズの原型になった「キルタ」などのシリーズは、日本でも有名ですよね。
豊かな自然をモチーフにしたデザイン、半世紀という短い期間で急成長したからこその独創性。他の国にはない、フィンランドならではの魅力が詰まった展覧会でした。各作品や作家の紹介もしっかりと展示され、親しみやすいデザインも豊富なので、普段陶芸に触れる機会の少ない方も楽しめると思いますよ。
本展は、2019年2月24日まで開催されています。ぜひ足を運んでみてくださいね。
▼同時開催中の「マリメッコ・スピリッツ展」の記事はこちら
https://life-designs.jp/webmagazine/marimekko_spirit/