【展覧会レポート】岐阜県現代陶芸美術館で開催中の「フィンランド陶芸展」

2019.2.12
ルート・ブリュック《陶板「聖体祭」》|1952 ‒1953 年|アラビア製陶所|コレクション・カッコネン| ©KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2018 C2428

2018年11月17日から岐阜県多治見市で開催されている「フィンランド陶芸展」。これまで日本では、食器をはじめとするプロダクト・デザインを中心に紹介されてきましたが、本展は日本で初めてフィンランド陶芸を体系的に紹介したものです。フィンランドの陶芸とはどのようなものなのでしょうか。

 

みどころをピックアップしてご紹介していきます!

 

岐阜県現代陶芸美術館

 

本展は、岐阜県多治見市にある「セラミックパークMINO」の中にある「岐阜県現代陶芸美術館」で開催されています。名古屋市内から車で約1時間。土日はJR「多治見」駅からコミュニティバスが運行しています。

 

フィンランド陶芸展


本展は、フィンランドと日本の外交関係樹立100周年を記念して開催されました。日本で初めてフィンランド陶芸を体系的に紹介している展示会です。黎明期(れいめい)期から最盛期ともいえる1950年代〜60年代までの名作が紹介されています。

 

「フィンランド陶芸の萌芽」「近隣諸国の影響を受けて」「フィンランド陶芸の確立」「フィンランド陶芸の展開」「プロダクト・デザイン」の5章によって構成しています。

 

フィンランド陶芸展


フィンランドの美術・工芸は、1900年のパリ万国博覧会で高く評価されました。当時フィンランドはロシアからの独立を目指していました。博覧会での成功は、そんなフィンランドの人たちに誇りを自信を懐かせ、建国の原動力となったのだといいます。そして、同時にフィンランドの美術・工芸の活性化も促しました。

 

陶磁器の発展の中心となったのは、美術工芸中央学校とアラビア製陶所。特に1932年に設立されたアラビア製陶所の美術部門では作家に自由な創作が許され、数々の傑作が生み出されていきました。

 

アルフレッド・ウィリアム・フィンチ《花瓶》|1897-1902 年|アイリス工房

 

《花瓶“カレヴァ”》1906 ‒1914年|アラビア製陶所|コレクション・カッコネン
《花瓶“カレヴァ”》1906 ‒1914年|アラビア製陶所|コレクション・カッコネン

 

本展のタイトルは「芸術家たちのユートピア」。国をあげて陶芸を盛り上げようとする取り組みは、まさにユートピアのようだったのだといいます。 大量生産品の製造に関与することなく、自由な作品制作が許されていました。釉薬(ゆうやく)などの材料や、窯も好きなだけ使うことができるという、まさに作家にとっては夢のような場所。

 

そんな環境のなか生み出された作品たちは、これまでにない自由な表現ばかり。20世紀中期には、世界的に影響を及ぼす存在にまで成長をとげました。日本の工芸界にも大きな影響を与えました。

 

フィンランド陶芸展


展覧会を見学する中で、女性作家が活躍していること、そして動物や植物といった自然をモチーフにしているものが多いという印象を受けました。またわずか半世紀という短い時間で、これだけフィンランド陶芸の文化が発達したのは、国をあげて工芸を豊かにしていこうという動きがあったからこそ。

 

ここからは、何名か作家をピックアップしてご紹介します。

 

 

ミハエル・シルキン(1900-1962)

 

ミハエル・シルキン 《彫像(梟)》1950 年代|アラビア製陶所|コレクション・カッコネン| ©KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo,2018 C2428
ミハエル・シルキン 《彫像(梟)》1950 年代|アラビア製陶所|コレクション・カッコネン| ©KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo,2018 C2428

 

こちらの表情豊かな動物の彫像は、1936年よりアラビア製陶所にて制作を手がけたミハエル・シルキンのもの。

 

土で形づくった動物や人物の彫刻が代表作。動物をモチーフにした作品が多いのも特徴です。愛らしく繊細な表現の作品に、多くの人が足を止めていました。ミハエルは陶磁器の専門的な訓練は受けていません。だからこその概念にとらわれず、ユーモアを交えた表現は、大変な人気となりました。

 

 

キュッリッキ・サルメンハーラ(1915-1981)

 

キュッリッキ・サルメンハーラ《壺》|1957 年|アラビア製陶所|コレクション・カッコネン
キュッリッキ・サルメンハーラ《壺》|1957 年|アラビア製陶所|コレクション・カッコネン


こちらは、キュッリッキ・サルメンハーラの作品です。

 

彼女の特徴は、轆轤(ろくろ)の技術の高さ。こちらの壺も極限まで追求された造形がとても美しい作品です。もうひとつは、土や釉薬(ゆうやく)をすべて自ら調合していたというところ。通常であれば、釉薬担当の職人がつくりますが、彼女はそうした材料にもこだわることで、ふさわしい質感や形態を探求し続けました。

 

残念ながら、不慮の事故によって陶芸家としてのキャリアはわずか十数年でした。しかし、その後も研究者や指導者として国内外で活躍し続けたのだといいます。

 

 

ビルゲル・カイピアイネン(1915-1988)

 

ビルゲル・カイピアイネン|《飾皿(テーブルのある部屋)》|1980 年代|アラビア製陶所|コレクション・カッコネン ©KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2018 C2428
ビルゲル・カイピアイネン|《飾皿(テーブルのある部屋)》|1980 年代|アラビア製陶所|コレクション・カッコネン ©KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2018 C2428


本展のメインビジュアルにもなっているビルゲル・カイピアイネンの作品。

 

日本では、アラビアの「パラティッシ」シリーズのデザインが知られていますが、生涯にわたり数多くの芸術作品もつくっています。幼少の頃の記憶をもとにしたデザインが多いのが特徴です。カイネピンは持病のため轆轤(ろくろ)がひけなかったのだそう。だからこそ、陶器製ビーズを使った立体作品など、彼独自の表現が生まれました。

 

 

ルート・ブリュック(1916-1999)

 

ルート・ブリュック《陶板「聖体祭」》|1952 ‒1953 年|アラビア製陶所|コレクション・カッコネン| ©KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2018 C2428ルート・ブリュック《陶板「聖体祭」》|1952 ‒1953 年|アラビア製陶所|コレクション・カッコネン| ©KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2018 C2428

 

ブリュックは、グラフィック・アートを専攻していました。グラフィックを学んだ彼女ならではの、趣のある線と釉による面的表現が特徴です。釉薬を何度も重ねる作風も、彼女ならでは。1951年のミラノ・トリエンナーレではグランプリを受賞。

 

現在でも彼女のファンは多く、日本でも個展が開かれるほどの人気です。

 

 

フィンランドのプロダクトデザイン

 

アルフレッド・ウィリアム・フィンチ《花瓶》|1897-1902 年|アイリス工房
プロダクトの一部は、岐阜県現代陶芸美術館内のミュージアムショップでも購入可能。

 

そして、アラビア製陶所では、芸術作品と並行してプロダクトデザインも製作されていました。特徴としては、シンプルで機能的ながらも温かみのあるデザイン。シンプルなフォルムに、花やフルーツのモチーフが華やかに描かれた「パラティッシ」、イッタラ社のティーマシリーズの原型になった「キルタ」などのシリーズは、日本でも有名ですよね。

 

フィンランド陶芸展

 

豊かな自然をモチーフにしたデザイン、半世紀という短い期間で急成長したからこその独創性。他の国にはない、フィンランドならではの魅力が詰まった展覧会でした。各作品や作家の紹介もしっかりと展示され、親しみやすいデザインも豊富なので、普段陶芸に触れる機会の少ない方も楽しめると思いますよ。

 

本展は、2019年2月24日まで開催されています。ぜひ足を運んでみてくださいね。

 

▼同時開催中の「マリメッコ・スピリッツ展」の記事はこちら
https://life-designs.jp/webmagazine/marimekko_spirit/

 

【展示会情報】

名  称:フィンランド陶芸 芸術家たちのユートピア
会  場:岐阜県現代陶芸美術館 ギャラリー I
会  期:2018 年 11 月 17 日(土)〜2019 年 2 月 24 日(日)
休 館 日:月曜日(月曜が休日の場合は翌平日)
開館時間:10:00〜18:00(入館は 17:30 まで)
観 覧 料:一般 1000 円(900 円)、大学生 800 円(700 円)、高校生以下無料
*「フィンランド陶芸展」「マリメッコ・スピリッツ展」共通チケット
*( )内は 20 名以上の団体料金
*障がい者手帳をお持ちの方および付き添いの方 1 名まで無料
主  催:岐阜県現代陶芸美術館
共  催:中日新聞社
特別協力:コレクション・カッコネン
協  力:有限会社スコープ、アラビア、イッタラ
協  賛:大日本印刷、フィンエアー、フィンエアーカーゴ
後  援:フィンランド大使館、フィンランドセンター
企画協力:S2株式会社
同時開催:「マリメッコ・スピリッツ フィンランド・ミーツ・ジャパン」

http://www.cpm-gifu.jp/museum/02.exhibition/02_1.exhibition.html