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みなさんは「庭」といえばどんなイメージを思い浮かべますか?案外お家づくりをする際も、お庭って後回しになりがちだったり、具体的なイメージが浮かばなかったりします。
でも、すてきなお庭、大好きなお庭があればお家はもっとすてきに輝き、暮らすことがもっと楽しくなるはずです。そんな、毎日の暮らしがワクワクするようなお庭づくりをされているのが、今回ご紹介する「平山庭店」です。
愛知県を中心に一般家庭の造園や剪定・維持管理、植物・石・土・コンクリなどを使った店舗の装飾など、さまざまな庭づくりを提案する『平山庭店』。今回は、平山庭店が一部造園を手がけている 体験ファーム&オーガニックカフェ『イニュニックビレッジ』で平山庭店のお庭づくりについてお話を伺ってきました。後半では、イニュニックビレッジについてもご紹介していきます。
イニュニックビレッジに到着すると、笑顔で出迎えてくれた平山さん。平山さんのユニークなTシャツが目に入り、思わず突っ込んでしまいました。
–そのTシャツ最高ですね笑
平山さん:「気づいてくれましたか?「オレは誰?」Tシャツです(笑)。 平山庭店のオリジナルTシャツとして販売もしてるんです。ボブマーリーの顔をトレースして何重にも重ねてるんですよ。」
いきなり、個性的なTシャツで心を鷲掴みにされたライフデザインズスタッフ。暑いので、かき氷を食べながらお話しましょうと提案していただき、おいしいかき氷を食べながらお話を伺いました。
イニュニックビレッジ自慢のふわふわかき氷。この日はみるく沖縄ぜんざいとブルーベリーをいただきました。
–平山さんはなぜ庭師を目指されたんですか?
平山さん:「最初は庭師になりたいとは思っていなかったんですよ。僕が通っていた高校は自転車で1時間くらいかかる場所にあって、その道中で庭師さんがふわふわと木に登ってる感じが楽しそうでいいな〜なんて思っていました。特別やりたいこともなかったので、当時のバイト先だった店長の知り合いで、稲沢にある造園屋を紹介してもらって入ったのが最初のきっかけですね。」
–独立されたきっかけはなんだったんですか?
平山さん:「同じ一宮で庭師をやってる会社があって、そこの親方にきっかけをつくっていただいたんです。それまでは公共工事やゼネコンから依頼される下請けをメインでやっている会社に勤めていたので、庭師と呼べるようなことはしていなかったんです。その人にあったときに庭師ですって自己紹介をされて、自分も庭師なのに、庭師ですって胸を張って言えなかったんですね。それが今でも大きなトラウマになってもいて、もっとエンドユーザーと関われる仕事がしたいなって思ったことがきっかけで独立をしました。」
代表の平山郁夫さん
–ご家族から反対はされなかったですか?
平山さん:「妻からはもちろん反対されました(笑)。独立したのが32歳のときで、結婚もして子供もいたので、家族にも辛い想いをさせましたね。独立前は給料も安定していましたし、家も建てていたので、なんとか家族を説得して後押しをしてもらいました。
最初はとにかく紹介をしてもらって仕事をつないでいました。他よりも安く請け負うことでなんとか仕事をとって。でもそうすることで、結果的に自分で自分の首を締めて、何やってるかわからない状態でしたね。だからこそ、そのときに助けてくれたお客さんは今でも大事にしています。」
–特に思い出に残ってるお客さんはいますか?
平山さん:「どのお客様も本当に思い出深い方ばかりですが、お庭の手入れの紹介で行かせていただいたあるお客様がいました。そこのお宅には90歳のおばあさんがいて、いきなりくる庭師に対してすごく警戒心を持っていたんす。作業中も僕の仕事ぶりを見ているんですよね。
それで、終わったのをみて、「あんたならこれからいいよ」って言ってくれたときはすごくうれしかったですね。岩間さんも次の年に行ったらおばあさんの制裁をうけてね(笑)。「素人連れてきたのか!」みたいな。」
図面担当の岩間苑香さん。名古屋と長野を行ったり来たりしながら、平山庭店を支える平山さんの右腕。
岩間さん:「最初は私も警戒されましたが、去年くらいからようやく、「ようなったな」って言われたときは、本当にうれしかったですね。」
平山さん:「そのおばあさんがあるとき、僕に子孫を残しなさいって言うんです。そのころは女の子しかいなくて、ちゃんと男の子を残しなさいと、あなたは子孫を残してこの仕事をやらなきゃいけないって言われたときはドキッとしましたね。
そのあと実際に息子が誕生したんです。そのときに僕は第三者に子孫を残せって言えるくらいのことをしたんだなって実感をしました。なかなか言えないですよね。おばあさんの心に僕らの仕事がちゃんと響いてくれたんだなって思えたエピソードです。」
–平山さんはお庭づくりをどのように行いますか?
平山さん:「まずは、お客様の要望をヒアリングします。でもそれだけをやってたら面白くはないですよね。ですので、そこからブラッシュアップして、うちに頼んでくれたからこそのものを5、6通りの案を出して厳選していきます。
なので、プレゼンの時間が長く、施工に至るまでの時間も長いんです。未だに何カ月とかつづいいてる方もいますね。一年前に連絡が来て、お客さんが忙しくてまだ保留になっている案件とか。でもそれでいいと思うんですよね。
施工しているうちに僕らは成長していますし、彼女も図面を書いてくたびに、いい図面がかけるようになっていて、どんどん成長しているのでよりいい施工ができるようになっています。」
ハウスBETWEENデッキの庭
平山さん:「以前は庭だけの施工例を載せていましたが、庭は人が利用して初めて庭になっていくと思っています。庭が完成して、枯れていく草や無造作に置かれていく遊具。それを含めて庭だなっておもうんです。ですので、最近は庭を見せるよりもパーゴラやウッドデッキを利用してる姿、庭で何かをしてる風景を載せるようにしてます。
最近だと、脱バリアフリーのお庭も提案しています。例えば心地良い段差だったり、障害物的なものをあえて設けて、そこに毎回つまづいたり、枝を毎回避けなきゃいけなくて、でも避けると家に帰ってきたなっていう不自由さをデザインしていきたいと思っています。不自由さが心地よくなる庭ですね。」
–図面は毎回書かれますか?
平山さん:「図面はかなり細かく書きます。でも現場に行くと絶対に上手くは行かないんです。だから図面なんて書いたって仕方ないよって書かない人もいるけど僕は図面を書いたからこそ、現場でのクオリティが上がると思っています。
壁にぶち当たって、どうしても動かせないものがあったりすると、図面があることで、いい方に転がります。図面を書いてるときにいろいろ考えてるからこそ、こっちのがいいなとか、結構アイディアも出てくるんです。」
施工事例「三本松でONな庭」
–ウェブサイトの施工例を見てるとおもしろい名前をよく付けれていますよね?
平山さん:「最近は減ってしまいましたが、僕は結構ダジャレが好きなので、施工例もダジャレで付けることが多いんです。実は日本ってダジャレ文化なんですよ。鬼門でも、京都御所行くと、鬼門の方角の角(かど)がないんですよね。ようは角(つの)をとるで、角を折るってことなんです。」
施工事例「三本松でONな庭」
平山さん:「例えばこちらのお宅は「三本松でONな庭」という名前をつけました。ここのお客さんは女系家族で、男の子が生まれなくて困っていたんです。そんなエピソードから黒松が男で赤松が女松なので女松である赤松を3本植えたんです。おばあちゃん、娘さん、お孫さんと女系なので、3本が絡むように植えています。そこに女のONとコンプレックの上ののONをかけてるんです(笑)手前味噌ですが、このコンセプトを聞いてお客様は感動してくれましたね。」
施工事例「こんなクリート」
施工事例「ジャンクとハードウッドの庭」
施工事例「芝・モリモリ」
他にも魅力的なお庭がウェブサイトにはたくさん載っているのでチェックしてみてくださいね。
–平山さんがこの仕事をしていてやりがいを感じるときはどんなときですか?
平山さん:「現実的ですが集金したときはうれしいですよ。なんだかんだみんな言いますが、やっぱり最終的に値切られると、値切られる理由が何かあるのかなって思うじゃないですか。でも最初に提示した金額の通りにすんなり終わっていくっていうのは自然なことですが、すごくうれしいですね。
というのも、昔は値切られることが多かったんです。一宮って地域は値切ることが当たり前の文化って聞いたことはあるんです。それでも値切られると自分たちに落ち度があるのかなって考えてしまうので、お客様が満足して、最初に提示した金額のままで終わることができるのが何よりうれしいですね。
それにお庭ってつくって終わりではないんです。必ず手入れをしていかなければいけないので、こうやってお庭づくりを通してイニュニックビレッジさんのように場所を貸してくれたり、いい関係を築くことができていますね。」
UNKNOWN ASIA ART EXCHANGE OSAKA 2016出展作品「ワレルユラレル」
–平山さんが今後挑戦していきたいことってありますか?
平山さん:「今もちょこちょこやってはいるのですが、お客様とか関係なしでアート作品をつくって評価してもらいたいですね。自分がつくったものを第三者からの批評を受けて、要望はなしでつくりたいものをつくる。これが僕の夢ですね。
以前大阪で開催されたUNKNOWN ASIAに出展した際は、栃木から一週間かけて、歩いたり電車にのったりして、一宮まで帰ってきた道のりをアート作品にしました。それを岩間さんに図面化してもらって、歩いたところを割ったんです。作品にはプラスチックも使っていて、プラスチックは石油が原料ですよね。石油は地球が分解できなかったゴミで、それを人間がすくい上げて、活用しています。地球が分解できなかった掃き溜めは自然素材じゃないんですか?っていう屁理屈みたいなものです(笑)。人間が必要として作り出したものも、ぼくは一つの自然素材だと思っていて、腐らないものもある。それも自然素材でしょってことをこの作品で表現しています。」
UNKNOWN ASIA ART EXCHANGE OSAKA 2016の動画
–最後の質問ですが平山さんが考える庭って何ですか?
平山さん:「車好きの人が、ガレージは俺の庭って、住み慣れた街のことをここは俺の庭っていうじゃないですか。ここの書斎はお父さんの庭だとか。庭ってそういう使い方のがしっくりくる気がしているんですよね。
木を植えたり、花を植えるものその中の一つ。ここでも、ウッドデッキやパーゴラをつくって庭になるじゃないですか、植物をあえてチョイスしなくても庭ってできるんですよね。
料理人が厨房は俺の庭だって胸を張って言えるように、その方が変につくり込んだ庭よりもかっこいいなって思うんです。」
平山さん:「だからこそ、庭ってなんだろう。これって僕らの永遠のテーマなんですよね。庭付きの建売買ったお客さんがうちにが庭あるんですけど、庭つくってください。って頼まれるんですよね。庭はあるんだけど、もさもさだからちゃんとした庭つくって欲しいとかね。
ちゃんとってなんだろうって、人によっては汚い庭でも、愛着を持っていたらそれでいいと思うんです。木が枯れたら終わりだってなっちゃう人もいますけど、木が枯れることよりもこの場所に飽きたとか興味がなくなることの方が怖いですね。何よりも庭って見放された時が終わりだなって思います。」
平山さん:「独立してからいろいろな庭師さんのとこへ行くようになると、案外地元のことって知らないことに気づいたんです。それがなんだか悲しくて、地元の一宮のことを調べたりして、博物館に足を運んでは聞いたことを追求したりしてくと結構おもしろいんです。
ブラタモリ的な感じなんですが、なんでここが斜めの道になって一方通行なの?ここ昔電車が通ってたんだよって。そこで庭をつくることになったら、昔電車通っていたってことを庭に仕込みませんかって。そこに家を建てて、これから住んでいくのに、そういうのを盛り込んでいけたら愛着がわくかな?とか。それができたりすると面白いなって思っています。庭って建築と違ってなんでもなんでもつくれるからこそ、自由な発想で楽しんでいただきたいですね。」
平山庭店が手がけたイニュニックビレッジ内の様子
岩間さんが書かれた完成図面
今回取材に伺って、平山さんのユニークで魅力的な人柄と平山庭店がつくりだすお庭の世界にすっかりと魅了されていました。平山庭店が手がけるお庭は見るたびに、ついニヤケてしまうような、なんだか人に自慢したくなる。そんな魅力が詰まっています。
すてきなお庭で、毎日の暮らしをもっとワクワクさせてみませんか?