静岡県浜松市・舘山寺温泉に佇む、星野リゾートの温泉旅館「界 遠州」。
浜名湖を望む穏やかなロケーションにありながら、館内に一歩足を踏み入れると、そこには“お茶”をテーマにした特別な滞在が広がっています。
中庭には、伝統工芸品の遠州綿紬をイメージした茶畑。そして滞在中には、手摘みや手揉み、製茶、試飲、合組体験など、静岡ならではのお茶文化にふれられる体験が用意されています。
今回は、そんな「界 遠州」に1泊2日で滞在。お茶を学び、味わい、癒やされる。五感で楽しむ旅をレポートします。
目次
浜名湖を望む、お茶づくしの温泉旅館


「界 遠州」があるのは、浜松市の舘山寺温泉エリア。JR浜松駅から車で約45分、浜名湖のほとりに位置しています。
館内に入ってまず印象的だったのは、大きな窓の向こうに広がる浜名湖の景色。ラウンジからは湖や周辺の緑を一望でき、旅の始まりからゆったりとした時間が流れます。


館内は、木の温もりを感じる落ち着いた空間。随所にお茶をテーマにした設えが取り入れられており、到着した瞬間から「ここでしか味わえない滞在が始まる」という期待感が高まります。


2022年2月にリニューアルされた「美茶楽ラウンジ」では、「ティーセラー」「ティースタンド」で気軽にお茶を楽しむことができます。
旅の始まりは、茶畑での手摘み体験から


まず向かったのは、お茶体験「五感で愉しむお茶作り」。
手摘み、手揉み、製茶体験。普段何気なく飲んでいるお茶がどのようにできているのかを、実際に手を動かしながら学べるプログラムです。
開催場所の「つむぎ茶畑」は、2018年に着工後、土壌改良や植え替えを重ね、2026年4月にはついに新茶摘みができるまでに成長しました。

茶畑に立つと、まず新芽の鮮やかな緑に目を奪われます。スタッフの方に教えていただきながら、やわらかな茶葉を一枚ずつ摘み取っていきます。
茶葉に触れてみると、想像以上にやわらかく、指先から青々とした香りがふわり。普段湯のみの中で出会っているお茶が、もとはこんなにも瑞々しい葉だったのだと改めて実感します。

ただ茶葉を摘むだけではなく、「どの部分を摘むのか」「なぜ新芽が大切なのか」といった説明を聞けるのも、この体験の面白いところ。知れば知るほど、一杯のお茶に込められた手間と時間が見えてきます。
手のひらで香りが変わる、手揉み・製茶体験

手摘みのあとは、摘んだ茶葉を使って手揉み・製茶体験へ。
茶葉を手のひらで優しく揉み込んでいくと、少しずつ水分が抜け、香りが変化していきます。最初は草のように青々としていた香りが、時間が経つにつれて、どこか甘みを帯びたお茶らしい香りへ。


スタッフの方に教わりながら、茶葉の状態を見て、手の感覚を頼りに進めていきます。
普段は完成した茶葉を見ているだけですが、実際に自分の手で揉んでみると、お茶づくりがいかに丁寧な作業の積み重ねであるかがよくわかります。
手のひらから立ち上る香りを感じながら過ごす時間は、まさに界 遠州ならではの体験。


プログラムの最後には、自分で製茶したお茶をいただきました。フレッシュな香りがふわっと広がり、癒しのひととき。
お茶を「飲む」だけでなく、「つくる」過程にふれることで、味わい方まで変わっていくようでした。(※こちらのプログラムは新茶の季節限定の開催です)
新客室で体験する
「一客一茶」のおもてなし


続いてはリニューアルオープンした新客室「茶ごもり特別室」へ。89平米もの広さを誇る、露天風呂付き客室です。
界 遠州らしい“お茶の滞在”をより深く楽しめる空間。畳敷きの落ち着いた室内に、木の温もりとやわらかな色彩が調和しています。


お茶を楽しめるよう、茶処カウンターを備えたリビングも備えつけられています。

ベッドルームには、ふわふわの雲の上で眠るような感覚を味わえると評判の、オリジナルマットレス「ふわくもスリープ」が3台並びます。
露天風呂付き客室で、何もしない贅沢を

新客室には、ゆったりと過ごせる半露天風呂付きのタイプも。
湯船のそばにはデイベッドが設けられ、外の緑を感じながら、好きなタイミングで湯浴みを楽しめます。


この客室の大きな魅力は、煎茶をより深く楽しむためのさまざまな仕掛けが用意されていること。なかでも注目したいのが、煎茶体験「一客一茶」です。
客室には10種類の茶葉と5種類の茶器が用意されており、その日の気分や体調に合わせて自由に組み合わせることができます。組み合わせはなんと50通り。まるでワインを選ぶような感覚で、自分だけの一杯を見つけることができるのです。

一客一茶の栞で味わいの好みをたどりながら、自分に合うお茶を選んでいく仕組みです。
「王道の味わい」「ほっとする味わい」「爽やかな香味」「余韻の深さ」など、言葉を手がかりにお茶を選ぶ体験は、自分の感覚と向き合うようでとても新鮮。

この茶葉を監修したのは、全国茶審査技術競技大会で優勝した茶師・和田夏樹氏。日本一の利き茶人とも称される和田氏と界 遠州のスタッフが、この客室のために厳選した煎茶が揃います。
今回は特別に和田夏樹氏による試飲体験もさせていただきました。
実際に茶葉を見比べてみると、その個性は驚くほどさまざま。花のような華やかな香りを楽しめるものや、奥深いうまみとコクを感じるもの、爽やかな余韻が印象的なものなど、一つひとつに異なる魅力があります。
お茶に精通したスタッフに相談しながら、自分好みの茶葉を選ぶ時間も、この客室ならではの楽しみのひとつ。どれを選ぼうか迷う時間さえも贅沢に感じられます。

客室でただお茶を飲むのではなく、自分のための一杯を選び、淹れ、味わう。その時間まで含めて、界 遠州のおもてなしなのだと感じました。
浜松らしさを味わう夕食


2025年6月に、名物会席「ふぐうな会席」がリニューアル。ふぐとうなぎを一度に味わえる贅沢なメニューです。

夕食は、浜松・遠州エリアの食材を取り入れた会席料理。器や盛り付けも美しく、一品目から旅気分を高めてくれます。

この日の料理で特に印象的だったのは、浜松らしいうなぎを使った一品。熱々の鍋で提供され、目の前でぐつぐつと煮立つ様子からも食欲をそそられます。
香ばしいうなぎの旨みと、出汁の風味が合わさり、思わず笑みがこぼれるおいしさ。温泉卵を絡めれば、まるですき焼きのようなまろやかな味わいに。

料理に合わせていただくお茶も、界 遠州ならではの楽しみ。食事中のお茶は、口の中をすっきりと整えてくれ、次の一品をよりおいしく味わわせてくれます。
お茶の香りに包まれる、
界 遠州ならではの湯浴み体験

夕食の前後には、ぜひ界 遠州自慢の温泉へ。
界 遠州の大浴場では、静岡ならではのお茶文化を感じられる「お茶玉美肌入浴」を楽しむことができます。

お茶玉とは、茶葉を詰めた籠を湯船に浮かべて楽しむ界 遠州ならではの演出。湯気とともにふわりと立ちのぼるお茶の香りに包まれながら湯に浸かっていると、心までゆっくりとほどけていくような感覚になります。
館内には趣の異なる2つの湯殿があり、それぞれ異なる雰囲気の中で湯浴みを楽しめるのも魅力。旅の途中で何度も足を運びたくなるような心地よさがありました。

さらに、滞在中にぜひ体験したいのが「お茶」の恵みを取り入れた、界遠州オリジナルの特別なトリートメント「グリーンティーオイルトリートメント」。
施術中はお茶の香りがやさしく漂い、深呼吸するたびに心までほぐれていくよう。強い香りではなく自然に寄り添うような香りなので、リラックスしながら受けることができました。
夜のお楽しみ「おちゃけ」の振る舞い


そして湯上がりには「おちゃけ」のサービスも。
「おちゃけ」とは、お茶とお酒を掛け合わせた界 遠州ならではの一杯。スタッフの方が目の前で丁寧に仕上げてくださいます。
鮮やかな緑色のおちゃけは、見た目にも美しく、グラスを近づけるとお茶の香りがふわり。口に含むと、お茶の爽やかさとお酒の余韻が重なり、食後にぴったりの軽やかな味わいです。
お茶は朝や昼に飲むもの、というイメージがありましたが、夜のお酒として楽しむことで、また違った魅力に出会うことができました。
翌朝は、茶畑での体操からスタート


翌朝は、茶畑での体操からスタート!
緑に囲まれた景色が気持ちよく、自然と目が覚めていきました。

茶畑の中で深呼吸をすると、身体の中まで新鮮な空気が入ってくるよう。旅先の朝に少し身体を動かすだけで、その日一日の過ごし方まで整っていく気がします。
朝食は、身体にやさしい和朝食


体操のあとは朝食タイム。朝食にもお茶が添えられ、前日に学んだお茶の味わいを思い出しながらいただくと、いつもの一杯とは少し違って感じられます。

印象的だったのは、茶箱に入ったお料理。蓋を開けるとふわっとお茶の香りが広がり、お料理からもほんのりとお茶の香りが。
旅の締めくくりは「新茶合組体験」

ご当地楽会場では、2026年5月16日~6月30日に「新茶合組体験」も開催。
合組とは、複数の茶葉を組み合わせて、味や香りのバランスを整えること。お茶づくりの中でも、繊細な感覚が求められる工程です。
目の前には、さまざまな茶葉が並びます。それぞれの香りや味わいを確認しながら、自分好みの配合を考えていきます。


茶葉を少し変えるだけで、味わいの印象が大きく変わるのが面白いところ。爽やかさを足すのか、旨みを強めるのか、余韻を深くするのか。自分の感覚を頼りに、理想の一杯をつくっていきます。

完成したお茶を和菓子と一緒にいただく時間は、旅の締めくくりにぴったり。残った茶葉は持ち帰れるため、旅の余韻を自宅でも楽しめるのも嬉しいポイントです。
お茶の魅力を再発見する、界 遠州の1泊2日

手摘みで茶葉にふれ、手揉みで香りの変化を感じ、試飲で味わいの違いを知る。客室では自分に合うお茶を選び、夕食後には「おちゃけ」としてお茶の新しい楽しみ方に出会う。そして最後には、自分だけの一杯をつくる。界 遠州では、滞在のあらゆる場面にお茶が寄り添っています。
お茶が好きな方はもちろん、普段はあまり意識してお茶を飲まないという方にもおすすめしたい宿です。一杯のお茶ができるまでの背景を知ることで、日常に戻ってからのお茶時間も少し豊かになるはず。
茶葉にふれ、香りに癒やされ、一杯のお茶と向き合う。界 遠州でしか味わえない“お茶づくしの温泉旅”へ出かけてみてはいかがでしょうか。






