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日本の6大家具産地をご存知ですか?北海道旭川市・静岡県静岡市・広島県府中市・徳島県徳島市・福岡県大川市、そして岐阜県高山市。高山市は日本を代表する「脚物家具」つまり椅子の生産地なのです。
今回は、そんな岐阜県高山市にある老舗家具メーカー「柏木工株式会社」へ。2015年にリニューアルしたショールーム「柏館」を見学しながら、職人の想いや歴史、人気アイテムについてご紹介します。
アクセス良好な観光産業のシンボル
高山の観光地から159号線沿いに車で10分ほど。大きな椅子とKASHIWAの看板が目標の「柏館」に到着です。
ショールームに足を踏み入れると、真ん中に太くて大きな柱がお出迎え。これは樹齢100年以上の飛騨のヒノキだそう。まるでショールーム全体が1本のヒノキの下にあるような、とてもダイナミックな空間演出です。
ショールーム1階はぐるっと一周して見学ができます。奥行きにも開放感があるので、一度に多くの家具を見渡して比較できるのがいいですね。
まずは飛騨家具の代名詞とも言えるダイニングチェア&テーブルコーナー。同じデザインでもカラーやファブリックで印象が全く違います。
柏木工が創業したのは1943年。当時の日本はまだまだ畳生活が主流で、家具づくりと言えば婚礼ダンスという時代です。実は飛騨の家具は、アメリカ人向けの椅子づくりからスタートしているんです。
日本の家具業界ではじめて
「トヨタ生産方式」を実装
昭和60年、当時の社長が木材の買い付けにアメリカへ。そこで目にしたのは、客のオーダーを受けてから製造する「受注生産」でした。
必要なものを、必要なときに、必要な分だけ。現在多くの企業で採用されている「トヨタ生産方式」を日本ではじめて取り入れた家具メーカーは、柏木工だと言われているんですよ。
広いショールームで見ることができるこれらの家具は、すべて効率的な生産手法で在庫ゼロを実現しています。
デザインではなく、椅子を売る
柏木工のこだわりのひとつが「100%インハウスデザイン」です。年2回行われるデザインコンペでは、工場での製造を経験した社員たちがプレゼンに参加しています。
「物をつくる限りは使い勝手が良いのは当たり前。さらにお客様の手が届く金額で実現する」という想いが、すべての椅子に込められています。
椅子のクオリティは、乾燥工程で8割が決まるそう。木と長く暮らしてきた飛騨の職人は、本質的に木を見る目が培われています。料理人が素材にこだわるように木にこだわり、木と木を組み合わせたり曲げたりして、日本国土にあった加工技術が確立されています。
つくり手の想いについてお話を伺ってみました。
「古いものには味はあるけど、時代に合わせて最新のものに変化していくことも必要。柏木工では、熟練職人の勘や価値観、伝統技術までを数値化することで、クオリティを保ったまま後世に伝えることができるんです」
「材料を入れたら出口から出てくるような作り方ではありません。頭と手を使いながら、もっといいルールがないか?と自主的に考えて、昨日までと違う方法を模索しています」
工場スタッフの半数以上は県外から。家具をつくりたい・学びたいとモチベーションが高い人材が集まっているのがわかります。
金額だけ見れば、決して安いとは言えない飛騨の家具。しかし、工場見学に参加した方がショールームに戻ってくると、もう値段のことは一切口にしなくなるそうです。お時間のある方は、ぜひ工場見学に参加してみてくださいね(ご希望の方は電話にて要予約)。