世界最高峰の天然繊維で人生を豊かに。日本が世界に誇るテキスタイルメーカー「三星毛糸」の製造現場へ行ってきました!
目次
三星毛糸の歴史を辿るミュージアム
岩田さん:「先代が三星の『ミュージアムをつくろう!』という言葉がきっかけで誕生したのが三星のアーカイブです。まずここには、今までに手掛けた素材の特徴と生地のサンプルをまとめた資料が並んでいます。
ここに展示されている以外にもまだまだ膨大な資料があります。」
応接スペースのテーブルは過去の生地の中から岩田さんがセレクトして作ったもの。ソファも自社の生地が使われていました。
メリノ種がどんな羊で、カシミヤがどんな姿をしているのかを知ることができるように、さまざまな動物の写真が展示されています。
たしかに、こうして見るまでカシミヤがどんな姿をしているのか考えもしていませんでした。
続いて生地のサンプルが収められている部屋へ。ここでは、今までに三星毛糸がコレクションや展示会で使用した生地のサンプルが大量に保管されています。
岩田さん:「これは、1967年につくった生地のスワッチブックです。当時からかなりデザインにも力をいれていたようなんです。手間も費用もかかるので今では、つくれないスワッチブックですね。」
– 毎年どれくらいの生地をつくられるんですか?
岩田さん:「コレクション用や展示会用、お客様からオーダーがあったものなど平均して100種類くらいはつくっています。
これは、昨年ジャパン・テキスタイル・コンテストで受賞した『ヌメロ・ラーナ(ぬめりの ある新しいウール)』生地です。ウール100%ですが、ぬめりのある独自の風合いが評価されました。一枚仕立てのコートやジャケットにぴったりな生地です。」
岩田さん:「世界的に持続可能性への関心が高まっていることから、色染するにも環境負荷がかかるという面があると言われています。そこでこの生地では一切染色せず、羊の自然な毛色を生かして作りました。編み方・織り方・素材の組み合わせ方・整理加工の仕方・洗いの強さによってもパターンを作れます。生地のデザインは本当に無限なんです。」
デザイナーさんにとってはまさに夢のような空間です。一日中いる方も多いのだとか。
最上級ウールを作るタスマニア・ウィントン牧場
岩田さん:「これを見てください!なんだと思います?
実はこれ、メリノ羊がスペインで生まれてから、現在に至るまでの系譜なんです。スペイン王家が海外王家に贈る以外は門外不出とされましたが、戦乱などを経てドイツやフランスへ広がり、現在はオーストラリアなどで多く飼育されています。
そんな、由緒正しいメリノ羊のウールを生む牧場の一つ、タスマニア・ウィントン牧場のウールを『MITSUBOSHI 1887』では使用しています。」
岩田さん:「2017年には、実際に牧場を訪問しました。そのときにジョン・テイラー7世からこう言われたんです「『牧場の柵はなんのためにあるかわかるかい?羊が逃げないように しているんじゃない。他の羊が入って来ないようにしているんだ。』って、それくらい彼らは純血種への誇りを大切にしているんです。羊飼いとしての矜持を感じましたね。」
ウィントン牧場ではメリノ羊に、蛆虫の寄生を防ぐため、子羊の臀部の皮膚と肉を切り取る『ミュールジング』をしていません。牧場の環境つくりにも取り組んでおり、羊にも地球にもやさしいウールをつくられています。