【名作家具シリーズ】計算されつくした『MRチェア』|ミース・ファン・デル・ローエ

2019.4.28

世界にはさまざまな名作と言われる椅子が存在します。インテリアショップやカフェなど、私たちの身近な生活の中でも、デザイナーズチェアと呼ばれる椅子たちは日常的に使われています。

 

よく見かける椅子も、実は有名なデザイナーがつくったものかもしれません。そんな知っていて損はない名作椅子をライフデザインズでは改めてご紹介していきます。

 

今回ご紹介するのは、ル・コルビジェ、フランクロイドライトなどと並び、近代建築の20世紀3大巨匠のひとりである、ミース・ファン・デル・ローエの「MRチェア」です。冷たく固いイメージのあるスチールパイプを曲線をつけることで見ごとにうつくしい家具へと変貌させたことで大きな功績を残しました。

 

20世紀3大巨匠の一人、ミース・ファン・デル・ローエ

 

 

ル・コルビジェ、フランクロイドライトなどと並び、近代建築の20世紀3大巨匠のひとりである、ミース・ファン・デル・ローエ。1886年にドイツで石工職人の息子として生まれたミースは、ベルリン工芸学校を卒業後、家具デザイナーのブルーノパウルや建築家ベーレンスのもとで設計を学びます。

 

その後1921年に独立し、翌年には市高層建築家協会が募集した高層オフィス・ビルのコンペに、「鉄とガラスのスカイスクレイパー案」を提出。1929年のバルセロナ万博では、ドイツ・パビリオンの設計を担当します。このときに、スペイン国王夫妻の王座としてデザインされたのがバルセロナ・チェアです。

 

1930年には、バウハウス校長として教鞭(きょうべん)をとりますが、ナチスの激しい攻撃により1932年には閉鎖されてしまいます。1938年にアメリカに亡命後は、1969年に亡くなるまでアメリカにおいて「シーグラムビル」や「レイクショアドライブ・アパートメント」などを設計。数々のモダニズムの名建築を残しています。

 

 

スチール・パイプ家具の常識を変えた「MRチェア」

 

 

1926年、とあるパーティで、マルト・スタムが友人にカンチレバーチェアの構造を紙に書いて説明したことがありました。そのパーティにはミースも出席していました。そのスケッチの内容がどのようにミースに知られたかは謎ですが、彼はその後すぐ独自のカンティレバー構造の椅子づくりをはじめました。これがMRチェアのスタートです。

 

※カンティレバー
片側だけで荷重を支える建築構造のこと。

 

MRチェアは、1927年のドイツ・シュトゥットガルトのワイゼンホフ展覧会において発表されることになります。このワイゼンホフ展覧会は、世界的な建築展で国内外の建築家が参加する大規模な展覧会であり、ミースがメインとなって計画。新しい建築様式の発表をする中で、家具も含めて新しい試みが発表されました。

 

このときに発表されたMRチェアも新しい試みの一つです。スチールパイプといえば、冷たく固いイメージがあります。そこに、曲線をつけることで見ごとにうつくしい家具へと変貌させたのです。

 

また、この椅子には、片側だけで荷重を支える建築構造カンティレバーを取り入れています。前脚にアーチ状の曲線を施すことで優雅な印象を与え、しなやかな弾力性を持っています。

 

 


牛革タイプが一般的に知られていますが、ランタン張りのタイプも。伝統的な藤張りとスチールパイプの組み合わせは、和モダンテイストな空間にもぴったりです。


MRチェアをおけば、お部屋の印象もモダンな雰囲気に変わります。

 

 

Less is more. (レス・イズ・モア)の精神が息づく家具たち

 


ミースが残した有名な言葉に「レス・イズ・モア」より少ないことは、より豊かなことという言葉があります。その言葉の意味するところは、シンプルにすることがより良いデザインにつながる、ある物に追加要素を付け加えたり、個性を出すために装飾品を飾り立てるのではなく、不必要な要素を差し引いていくことで、生活をシンプルにしていくという考え方です。

 

簡潔なものの中にはうつくしさと豊かな空間が生まれるということを表しており、MRチェアだけでなく、ミースが生み出したものには、「レス・イズ・モア」の精神が息づいています。

 

バルセロナチェア

 

バルセロナチェアは、モダンデザインの傑作として、デザインされてから約90年ほどたった今でも世界中で愛されています。 ミースの作品の中でも特に人気のあるのが「バルセロナチェア」です。このバルセロナチェアは、1929年に開催されたバルセロナ万国博覧会で、ミースが手がけたドイツ館に設置する椅子として合わせてつくられました。


そのデザインの最大の特徴は、ゆったりとした佇まいでありながら、優雅にクロスした脚。シンプルな造形美を備えており、インテリアにモダンな雰囲気を与えてくれます。

 


ブルーノチェア

 

ミースの代表作であるブルーノチェアも、人気のある椅子の一つです。欠点のない室内装飾品”と呼ばれた名作チェアです。ダイニングチェアとしてつくられたこの椅子は、ダイニングチェアとしてはもちろんのこと、オフィスのミーティングルーム用としても絶大な支持を得ています。

 

「片持ち梁」と呼ばれるこの構造で設計されており、ひじ掛けがそのまま脚となっている不思議な形をしています。

 

 

プロダクトにおいて、シンプルでありながら誰もが理解しやすく扱いやすいものをつくるということは容易いことではありません。シンプルさと利便性のバランスを取ることは、大変難しいですが、ミースのつくるものは、シンプルの先にある洗練されたうつくしいものばかりです。


改めて名作家具の背景を知ることは、家具を選ぶ際のヒントや生活をより豊かにするきっかけとなるはずです。長く愛され続けているものには必ず理由があります。今後も定期的に、デザイナーズチェアの魅力についてご紹介していきますので、次回もお楽しみに。