ウェディングデザインのプロから学ぶ、自分らしい家づくりのヒント。(中家 拓郎さん)
目次
誰かにとって意味をもつ空間
結婚式をはじめ、フィールドを問わず、これまで100件以上の空間デザインプロデュースを手がけて来た中家さん。空間デザインに対しての考え方を教えていただきました。
中家さん: 「空間や装飾をつくるときには、全部に意味を持たせるようにしています。一応嫌いな色とかは聞きますが、お客さんの言葉をそんなに信じてはいないんです。好きな色とか、アイテムで空間をつくるんじゃな くて、もっと本質的な部分を考えます。
例えば、ここに麻のコースターがあります。麻って高くまっすぐ育つので、中国に伝わることわざには蓬のように曲がりやすいものでも、まっすぐな性質の麻の中に入って育てば曲がらずに伸びる(人は善良な人と交われば自然に感化を受け、だれでも善人になるというたとえ)ということわざ があります。また、人類が栽培してきた最も古い植物のひとつとして1万年を超えるつきあいがあります。そう した歴史や背景を読み取ると誰かにとっての特別なアイテムになる可能性があります。どんなものでも、その文脈を読み取ることは何より大切です。
ただおしゃれに、インスタ映えする空間なら簡単です。でも僕は、それだけじゃ決めれられないんです。椅子、テーブル、お花、すべてに、自分がこういう理由で、こういう想いで、こうしましたって説明できる空間しかつくりません。たとえそれがおしゃれでなくても、誰かによって意味のある空間なら、それが良い空間だと思うか らです。名古屋テレビ塔の中にあるレストランで行ったMonocromeという事例では、結婚式では一般的にはNGな黒を使ったプロデュースをしました。ご親族や職場上司への配慮などが必要なケースもありますが、基本的にはそこに意味があれば、常識にとらわれなくて良いと思っています。
僕たちの仕事は、お客さんに言われたものを用意することではありません。空間とか、世界観をイメージするのって難しいんです。建築でも、平面の間取りで迷っていても、よくよく話を聞くと大切にしたいことは別にあったりします。お客さんの気持ちにとことん寄り添った上で、その想像を超えるものを提案していけるのが、デザイナーの本当の職能です。そして、デザインしつくった空間が自分の手を離れ、お客さんのものになったとわかることがあります。それが何より嬉しい瞬間です。」
壁の色を選ぶとき、家具を選ぶとき、好きな色、流行りのデザインだけで決めていませんか?「全部に意味を持たせる」という考え方は住まいにおいてもとても重要なポイントだと思います。どういう理由で、どういう想いで、それが良いのか、考えることも大切ですね。